すーがく
「凡人共の人気なんて興味ないね。それよりも、最後に行われる投票だよ」
完全に凡人を敵に回すような言葉を、パイは平気で言った。
なぜなら彼は、凡人からの酷評には慣れていたから。
だから彼は、それよりも優秀な人の評価を求めている。
「ずっと上位、嬉しい。それでも、最後に最下位。終わり」
最終投票は、それまでの投票とは比べ物にならないほど重要であった。
そのことを考えたら、一位や二位だからって安心出来はしない。
愚者を騙したからって、賢者を騙せはしない。
だから色彩も心配していた。
このまま上位を維持出来るかと、心配していた。
「それじゃあ、皆で媚を売ってみようよ。どうかな」
訳のわからない提案を、真面目な顔でシャープはした。
優秀さや魅力と言うならば理解出来る。
しかし彼女は、媚びを売るなどという提案をした。
「つまり、どゆこと? ぶりっ子臭い行動をすればいいのかしら」
墾田ちゃんの解釈も多少間違っていたが、シャープは首を縦に振る。
「ぼくもやるんですか? それ」
呆れた様子で倒置は問い掛ける。
ヤル気満々と言った感じの人もいる。
それでも大体は呆れているような表情を見せていた。
「当然! むしろ、お前がやらなきゃ誰がやる!!」
大声で怒鳴り付けるように言い、シャープは倒置の胸座を掴み上げた。
そんなことをされて、倒置は苦しそうにもがく。
なんとか抜け出そうと努力するも、彼の力でシャープの手はビクともしない。
「そう、そうゆうことよ。うるうるとしたその瞳、狙っているのよね? まさか、素でやっているとは言わせないよ」
倒置はわざとではなくても、可愛らしい行動が出来ることをシャープは知っている。
だから気にする必要はないよ、ということを伝えたくての行動であったのである。
「いいのですか、その為に暴力を振るっても」
解放されて服を整えながら、不満そうに倒置は問い掛けた。
その表情はいつもよりも子供らしくて、素直な様子。
このままだと狂ってしまいそうなので、慌ててシャープは目を逸らす。
それがシャープだけではないことを、パイはわかっていた。
一瞬だけだが、倒置にきゅんとした可哀想な人を見る。
そして笑顔で言った。
「さすがだね」