ぎじゅつかていか
「お菓子を作ったわ。食べてみてはくれないかしら」
優しく微笑んで、玉結びはクッキーの入った缶を取り出した。
お菓子、その響きに喜びを覚えている時点で子供であろう。
大人ぶる子供たちを、可哀想にと玉結びは嗤っていた。
まんまと騙される子供たちを、哀れだと嗤っていた。
「なんだこれ。おぇえ」
クッキーを食べた人たちが、一斉に気分が悪いと訴える。
勿論、玉結びは失敗などしていない。わざとである。
体調は一応すぐに戻る。
だから玉結びは急いだ。
元気を取り戻す前に、クッキーを食べた人たちを縛り付ける。用意してあった紐で、手際良く縛り付ける。
それは、人によっては楽に解ける縛り方であった。
しかし解き方を知らなければ、解くことは出来ないであろう縛り方であった。
そして解き方を知るものはごく少数。
「あんたのことは嫌い。だから縛られたくない」
ベーっと舌を出し、墾田ちゃんは解いてしまう。
「マゾ」
その様子を見て、パイは小さく呟く。
聞こえていたが、誰もが聞こえない振りをした。
「この子たちを解放して欲しければ、ここに跪きなさい」
捕まっているのは、短距離走とシャープとミスターである。
迷わずに、色彩はそこで跪いた。
それによって、一人解放することが出来ると言う。
躊躇う必要などなかった。
ミスターは救出される。
しかし残り二人のことは、誰も助けに行かなかった。
何も起こらずに、時間だけが進んでいく。
そして遂に、かんなが諦めてしまう。
「皆、これからもおいらと……」