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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
シャープ しょうりへ
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びじゅつ

「貴重な名画を取り揃えた。感謝している皆に、安く売りだそうと思う」


 目的が読み取れないような無表情で、色彩は淡々と告げた。


「金は取るんだね。まあ、これほどまでの名画なら当然か」


 色彩が取り出した絵に見入り、シャープはそう言った。


 しかし、誰もがそんな感想を抱いている訳ではない。

 ここに集まった少年少女たちは、教科代表になるほどの天才なのである。


「こんな絵が名画なのか? 良さがわかんね」


 短距離走はその素直に少年らしい感想を。

 数名は名画を称え、見惚れているなどしていた。


 残りの数名はその絵が偽物であることを見抜き、色彩の絵に見惚れていた。


「素晴らしい絵です。私みたいな研究バカでも知っている絵なのですから、余程有名で貴重なものなのでしょう」


 本当にわかっていなくて、かあさんは絵を褒めていた。

 本当はわかっていないのに。


 本当に偽物であることがわかっていなかった。

 本当は絵の魅力だってわかっていなかった。


 かあさんの研究バカと言うのは、自他共に認める事実であったから。


 賢いが、他の教科は優れていると言うほどでもない。

 一般レベルだから、絵の知識だって絵を見る目だって一般レベルだから。


「そんな駄作に興味はないわ。自分の落書きを名画だなんて、笑わせないで頂戴」


 騙されている人を見て、一通り嗤った。


 そしてそれにも飽きたので、墾田ちゃんはそう言った。


「さすがだね。他にも気付いている人はいるでしょ? 気付いてて言わないなんて性格悪いな。誰が気付いていたの? 挙手」


 勿論色彩だって、騙し切れるとは思っていなかった。


 以前一度披露したこともあるし、全員を騙すつもりはなかった。

 誰がこの詐欺に引っかかるか見たかっただけ。


 挙手と言われ手を挙げたのは三人であった。


 倒置、パイ、墾田ちゃんである。


「素敵だと思いますよ、本物ではないとすぐに気づきましたが」


 絵を嗜み解析や解説の文を添える。倒置はそんなことを趣味で行っていた。

 だから絵に魅力を感じてはいたが、色彩が描いたということには気付いたのだ。


「正直絵の魅力はあんまわかんない。でも本物を一回見たことあるから、これは違うなって思って」


 パイは正真正銘数学代表の天才。それを思い知ることになるであろう。


 彼が偽物を見抜いた理由は、色彩の絵の僅かなずれである。

 比率や角度、長さなどで彼は絵を見る。絵を図形として見ているのだ。


 数学的考えに変換さえ出来れば、彼にミスはなかった。


「駄作よ。同じく駄作な人間擬きならば、まんまと騙されて高額で買い取ってくれるんじゃないかしら」


 社会代表として、歴史作品を貶された気がしていたのだ。


 勿論彼女だって、色彩の絵を上手いとは思っている。

 ただ、真似するような絵を描かないで欲しいと思っていた。


 色彩に可能性を感じ、駄作と口にしたところもある。


「ありがとう。あなたのその評価、とても嬉しい」


 褒め言葉を流し続けていた色彩だが、墾田ちゃんにだけそう返した。


「みんな、これからもわたしと……」

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