えーご
「皆さんが言い返せないような、天才的な持論を述べます。ミーの力を思い知らせてやるのデス」
そう言ったミスターは、予想通り英語で述べ出した。
何を言っているかわからない以上、言い返すことは出来ない。
だからミスターは、わざと難しい言葉ばかり使った。
普通に英語力がある人でもわからないような言葉ばかり使った。
知らなくても会話に支障のないような言葉ばかりを選んで使った。
実際のところ、色彩だけは何を言っているか理解していた。
しかしミスターを傷付けるようなことをしたくないと思った。
その上彼女に、言い返すほどの英語力はなかった。
「どうですか? 何も言えないでしょう? つまりミーが一番勝者に相応しいということデス」
なんとか言い返したいと思った。
だけど、何を言っていたかわからない以上言いようがなかった。
何を言えばいいかわからないので、適当なことを言った。
「そんなことないわ! 一番勝者に相応しいのはあたしよ」
戸惑っていたら、ミスターの勝利ということで終わってしまう。
それを防ぐ為、時間稼ぎの意味も込めて墾田ちゃんはそう言った。
言い合っている間に、もっといい反論法を誰かが思い付くと思ったのだ。
「どうしてですか? それならば、ミーの言葉の何が間違っていたか教えて下さい。それで納得させてくれれば、ミーも認めるのです」
反論なんて出来ないことがわかっていた。
意味を理解せずにはなった言葉だということがわかっていた。
なぜなら、英語の意味がわかっていればもっと簡単に反論出来るからだ。
正直ミスターの言葉を日本語で聞けば、皆ふざけているかと思うであろう。
それほどまでに、ふざけ過ぎているような言葉であったのだ。
「全てだよ。君の存在が間違っている、ねえ気付かないの? 君の存在が過ちであり、人類最高の間違いなんだ。君はそれを否定出来るのかな」
パイは何も聞き取れなかったが、そんな鬼いことを言った。
何を言ったかなんてわからなくていい。
本人の心を折ればいい、そう考えたのだ。
それに気付いて、これ以上は言われたくないとミスターは逃亡した。
「皆さん、これからもミーと……」