長女だけど甘えたい
名前を借りました
フィクションです
長女だから、しっかりしないと、とがんばってきた侯爵令嬢クーロン嬢。
この国の第2王子ヘンリーの婚約者だが、ヘンリー王子は浮気をしている。
王弟である私ラジアンが甥ヘンリーの婚約者クーロン嬢に声を掛ける。
私は、オジサンと呼ばれてもおかしくないくらい、彼女よりも10歳も上だ。
誰にも甘えられないクーロン嬢。
無表情だから、冷たいとヘンリーに言われたらしい。
心労の為か、クーロン嬢が疲れた顔をしているのがヘンリーには分からないらしい。
ヘンリーの尻拭いと、学園の勉強と王子妃教育で、クーロン嬢は忙しいのだ。
私はずっと彼女を見守ってきた。
「浮気王子と、このまま婚約していて良いのか?」
ずっと、言いたかったのだ。
彼女を大切にしない男が、婚約者でいる事に我慢ならなかった。
甥が婚約して、可愛い姪ができたと思った。
努力家で、一生懸命で、笑顔が可愛い少女。
甥が大切にするなら良かったのに。
発情した動物のような甥は、ダイナマイトボディの男爵令嬢ファラドに夢中だ。学園で、常に一緒にいるらしい。
授業中は、クラスの違うファラドを自分の隣の席に座らせ、ヒソヒソ話をしている。
教師が注意すると「王家に歯向かうのか!?」と言う。
という、王家の密偵からの報告を受け、私も兄上である国王も、頭を抱えた。
クーロン嬢を無視して、遊び呆けているヘンリー。
そのくせ、学園の課題をクーロン嬢に押し付けた。
私は学園長に、課題を出してもクーロン嬢に押し付けるから、甥には出さないようにと伝えた。甥の成績は下がる一方だった。
ヘンリーが、王子としての執務をクーロン嬢に押し付けようとした時は
「執務をクーロン嬢に押し付けるくらいなら、執務はしなくて良い」
と言ったら甥は喜んだ。
…バカなのか。執務をしないと言う事は、王子としての責任を放棄するという事だ。
兄上…つまり国王…に、執務放棄の話をしたら、甥と、将来生まれるかもしれない子の王位継承権を剥奪した。
名ばかり王子ヘンリーは、国王と王妃の子ではあるが、王位継承権の無い、ただの男になった。
成人しても、国の為にならない。
だが、将来の争いの種になる可能性もある為、放置はできない。
学園を卒業したら、離宮に幽閉すると決定された。
王太子は、第2王子がなれるように調整されるだろう。
甥は、何も知らず、相変わらず男爵令嬢と遊び呆けている。
甥が幽閉される未来を教え、婚約を白紙にする提案をクーロン嬢にすることにした。
「浮気王子と、このまま婚約していて良いのか?」
「え?」
クーロン嬢はきょとんとした。年頃の令嬢に成長したが、まだ幼さが残っていて好ましい。
「ヘンリーの事が好きか?」
私は不安を隠して言った。
「政略結婚ですので…」
クーロン嬢が言った。
政略結婚だから、好きとか愛とかは無いのだろか?
「それなら、婚約を白紙にしないか?」
私は提案した。婚約は白紙にしてくれ。
「え…?」
「ヘンリーは、学園を卒業したら離宮に幽閉だ。王子としての責任を放棄したのだからな」
「はい」
「婚約を白紙にしないか?」
焦ってはいけない。冷静に話さないと。
「…はい」
「では、手続きを進めよう。…せっかく王子妃教育を受けていたのだから、私と結婚しないか?」
さり気なく、自分の願いを滑り込ませる。
「え!?」
驚いているクーロン嬢。
「よし、兄上に報告に行こう」
有無を言わせずクーロン嬢を連れていき、兄上に
「クーロン嬢とヘンリーの婚約を白紙にして、私とクーロン嬢の婚約を認めてください!」
と宣言した。
兄上は呆れた顔をしたが
「それで良いのか?」
とクーロン嬢に聞いた。
「はい」
クーロン嬢が言うと、兄上が許可してくれた。
良かった…
…これからは、私が大切にし、甘やかそう。
正式にクーロン嬢と婚約し、お茶会をした。
誰にも遠慮なく2人で過ごせる。幸せだ。
可愛い姪だと思っていたが、女性として見ていた事に気付いた。
甥が婚約者との交流のお茶会をすっぽかした時は、いつも私が代わりに参加していた。
最近は、毎回だったが…
陰に日向に、守ってきたのは、人として好きだったからか…
…大切な女の子。
目の前でお茶を飲んでいる。
これからは、ずっと一緒にいられる。
私の瞳の色の宝石のついたネックレスを送った。
嬉しそうに微笑んだクーロン嬢はとても可愛かった。
毎日着けてくれている。嬉しい。
1年後。
「お前とは婚約破棄だ!」
甥がやらかした。学園の卒業パーティーで。
浮気相手の男爵令嬢ファラドをエスコートして、偉そうにしている。
巻き込まれた他の生徒には申し訳ない。
「何を言っているのだ」
私が言うと
「クーロンは、ファラドをいじめたんです!」
ヘンリーが叫んだ。
「いつどこでどうやって?」
「学園で毎日、嫌がらせを…」
「もう学園は卒業したが」
ヘンリーの言葉の途中で、私は冷たく言った。
「は!?」
「飛び級って知ってるか?」
「え?」
「昨年卒業して学園にいないのに、どうやって嫌がらせをするんだろうな?誰か見た者はいるか?」
誰も返事をしない。誰もクーロン嬢の姿を見ていないのだから。
そもそも学園を卒業したクーロン嬢が、毎日学園をウロウロしていたら、おかしいのだ。
「お前とクーロン嬢は既に1年前に婚約白紙にしてある。婚約もしてないのに、どうやって婚約破棄するんだろうな?」
「え!?」
「あと、クーロン嬢は私と婚約している。無礼だぞお前ら」
「え!?」
「卒業おめでとう。お前は王子としての責任を放棄した事により既に王位継承権を剥奪され、ただ今より離宮に幽閉となる」
「は!?」
「ヘンリーを唆したファラドは修道院での奉仕を命ずる」
「そんな…!」
呆然とした2人は騎士達に連れて行かれた。
「皆の者、卒業おめでとう!パーティーを楽しんでくれ」
私とクーロン嬢は、甥に幽閉の宣言をする為に卒業パーティーに来たのだ。
役目が終わり、パーティーから帰った。
爽やかな風が吹き抜けていき、全て終わったのだと実感した。
元々、卒業したら結婚する予定だったが、クーロン嬢は飛び級して1年早く卒業した。
この1年は、残りの王子妃教育をしたり、私の領地の勉強をしたりしていた。
結婚式は来月挙げる。
10歳も上のオジサンだが、慕ってくれている…と思うのは、自惚れだろうか?
私と同じ王弟になる予定だったのに、王太子となった第2王子。
私が代行していた王太子の執務を教えている。
それから自分の執務を終え、愛しい婚約者のもとへ急ぐ。
満面の笑みで迎えてくれるクーロン嬢と共にいると本当に幸せだ。
「大切にするよ」
私が言うと、頬を赤らめたクーロン嬢はとても可愛かった。
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