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破滅エンド確定の聖女様に転生したけど、メインキャラたちも転生者っぽいんだが?  作者: ねくしあ


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第6話:社畜聖女が起床

「ふわぁ……」


 むぅ、妙に身体が重い。

 鳥の鳴き声で目が覚めたが、それにしては不快な目覚めだ。


 簡単に言えば、すごく気怠い。


「てか、ここどこだ?」


 白いベッドに、少し開かれた大きな窓。その他にはほとんどなにもない。

 どこか、病室を彷彿とさせる光景だった。


 ……いや、普通に病室だな。

 ベッドの横に椅子があるし、近くにフルーツとかも置いてある。


 うん。まんま病室だわ。


「ともかく……着替えないと」


 今の俺の服装は制服ではなく、ゆったりとして締め付けのないものだった。


 失神した記憶がある以上、やはり病人のように扱われていたんだと思う。


 だが、もう大丈夫だ。

 体調的にも、もう出社——じゃなくて登校できるようになったからな。


 窓から見える太陽の位置からして、おそらくまだ朝。

 時計はないから正確には分からないが、遅刻くらいで済むだろう。


「あ、ハンガーに制服かけてあったのか。よしよし」


 服を脱ぐと、ついこの前見た双丘が姿を現した。

 なぜかそれが数年前のことに思えるのは……ある意味当然だな。


 そして同じように手が伸び——すんでのところで意志の力を働かせる。それはもう、鉄の塊をも動かすようなほどの力だ。


「夜まで我慢っ……! さっさと着替える!」


 あの戦いで随分と汚れたと思うのだが、制服はしっかり綺麗になっていた。


 ということは、何から何まで誰かがやってくれたはず。

 そんな経験、果たして何年ぶりか……感謝しなければいけないな。お礼も言わないと気が済まん。


「んじゃ、行くか」


 部屋を出ると、横に長い木造の廊下が続いていた。

 向かい側にも扉があることから、同じような部屋が並んでいるのだと思う。


 とりあえず行く宛もないので、直感に従い右を選んだ。


 柔らかい日差しが差し込む廊下は、一人なのに寂しさを感じさせない。

 足音は微かに反響し、耳に吸い込まれるように返ってくる。


 すると、曲がり角があることに気がつく。

 好奇心のままに動いていた俺は、探検気分で方向を変えた。


 そして——


「うわぁっ……!?」


 視界は一瞬で変化し、いつの間にか天井を見上げていた。

 それだけではない。


 身体は何にも触れていない。つまり……落下している。


 ——ドンッ!


 数分間に思えた空中の旅は、時間にすればたぶん数秒。


 別に天空から落ちたわけでもない。二階から落ちただけだ。


 ただ、それにしては全然痛くなかった。

 3メートルの高さから、しかも背中から落ちたとは思えない。なかなかどうして痛みに強い身体をしているな、俺。


 とはいえ、一つ文句を言いたい。


 まさか、曲がり角の先が崩壊しているとは誰が予想できるのだろうか。


 流石に「かもしれない」でどうにかなるレベルじゃねぇぞおい!


「……うん、良い朝だなぁ」

「えっと、何を言ってるんですか……?」

「ひゃんっ!?」


 バカバカしい独り言を言っていると、突然横から声がかかる。

 それに驚き、自分でもびっくりするくらい可愛い声で反応してしまった。


「の、ノルナさん……」

「驚かせてしまいましたか。申し訳ありません」


 未だ仰向けに倒れる俺に膝をつき、顔を下げるノルナ。


 その服装はかなりラフで、へそ出しルックと呼ばれるそれに近い。

 ついでに言えば、胸もそこそこある。服装のせいでより強調されていて扇情的に映る。


 ……俺は、敗北を喫した。


「いえ、私の方こそ注意が散漫でした。ごめんなさい」

「それにしても、アトラ様は大丈夫なのですか? 長く気を失っていたのですが……」

「丸一日は確かに長いですよね。ご迷惑をおかけしました」


 そう言うと、ノルナはきょとんとした表情になる。

 何か変なことでも言ったかと考えていると、彼女は衝撃的なことを口走った。


「アトラ様……あなたは3日も失神していましたよ?」

「——へ?」


 思わず、気の抜けた声が漏れ出た。


 3日? 嘘だろ? 俺の一ヶ月の睡眠時間と同じくらいじゃないか!

 信じられん。とんでもない時間だ……


「その間、学院の復興に向けて騎士団が尽力していました。瓦礫はあらかた片付けましたが、まだこういった場所は点在しています。構造的に全体が脆くなっているので、新たに崩れる場所もあるかもしれない、と専門家の方は仰っていました」


 ……なんだそれ、学院全体が危険度マシマシ違法建築になってんじゃねぇか。もしくは、世界観に合わせてダンジョンと呼んだほうが良いかな?


 少なくとも、安心できる学び舎ではない。


「……少々喋りすぎてしまいましたね。アトラ様は何をしていたんですか?」

「せっかく朝に目が覚めたので、登校しようかと想いまして」


 優しい笑顔で返すと、ノルナは理解できないという顔——前世の友達と仕事の話をした時と同じ——になった。


 まるで、イカれた人間でも見るように。


「あの、気絶していた人間が目覚めてすぐにやることは、登校ではなく安静にしていることだと思うのですが……?」

「あー、そ、そういうことになってるんでしたね。すみません」


 いっけね。意図せず社畜精神が出てしまった。

 上司に「気絶しても起きたら出社。これは常識だぞ」なんて言われた事があるものだから、つい。


「そういえば、ノルナさんは何をしていらしたのですか?」

 

 彼女の額や腕に浮かぶ汗が、先程まで運動していたことを示している。

 けれど、他には何も持っていない。だから少しばかり気になってしまったのだ。


「剣の素振り(すぶり)ですよ。そこに木刀が置いてあります」

「さすがは騎士団長さまですっ。鍛錬は欠かしていないのですね」

「えぇ。ここ数日も継続しています」

「でしたら、剣を使うコツなどについて——」

 

 それからしばし、互いに微笑みながら会話をした。


 かたや青髪騎士団長、かたや金髪ロリ聖女。

 きっと素晴らしい景色だったに違いない。


 騎士の方は際どい格好、聖女の方はさっき落下事故を経験しているというところに目をつぶれば、完璧だ。


「……おっと、話し込んでしまいましたね。アトラ様、この後少しよろしいですか?」

「えぇ。学校がないとなると、やることがないですから」


 本当は魔物討伐とか冒険に繰り出したいのだが、情報収集をしていないので流石に躊躇(ちゅうちょ)している。それにこの感じ、外出を許してくれるとは思えないし。


「では、こちらへ」


 ◇


 ノルナと共にデンジャラス建築を歩くこと数分。


 損傷の酷かった箇所には復興作業をしている人が数十人ほどいたが、そこを通り過ぎると奇妙なくらい静謐な空間に到着した。


 場所的には、学院の中でも最奥と呼べる。


「ここです。扉の先に、用のある人物がいますよ」

「どなたなのでしょうか……ともかく、開けないことには始まらないですね」


 ノルナの顔を見つめても、不敵な笑みが返ってくるだけで、それ以上の言葉は得られそうになかった。


 コン、コン、コン——俺の感じる緊張感を表すようなリズムで、ノックをする。


 すると、部屋の奥から「どうぞ」という声がした。

 聞いた感覚で言えば女性に感じたが、果たしてどうか。


 慎重にドアノブを掴み、回し、開ける。


「やぁ。待っていたわ、聖女アトラ」


 その先には、応接間のような部屋が広がっていた。


 広々とした木の机に、黒い革の椅子が数個。


 俺から見て左にはバーレイグと、その横に見覚えのない男が腰掛けている。

 右には、見覚えはあるが面識のない男が腕を組んでこちらを見ていた。


 そして、声の主——部屋の一番奥に座す人物は、忘れられるはずもないほど印象深い存在だった。


「ドミナエル学院長——!?」

「うふふっ。こうやって話すのは久しぶりね?」


 ゲームキャラの一人にして、設定上においては最強格と名高い金髪のエルフ——ルクレア・ドミナエル学院長が、蠱惑(こわく)的な笑みを浮かべていたのだ。



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