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破滅エンド確定の聖女様に転生したけど、メインキャラたちも転生者っぽいんだが?  作者: ねくしあ


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23/25

幕間:Reverse

「うぐっ——」


 黄昏時。

 男が一人、痛みに呻きながら倒れた。


 気を失った彼は、黒いローブに身を隠した怪しげな男に引きずられ、暗い部屋へと運び込まれた。


 中にいたローブの男の仲間たちは、素早く縄で椅子に縛り付ける。

 彼らもフードを被っており、その顔を見ることはできない。


「これで3人、か」

「まさかこんなにいるとはね……」

「驚きもありますが、しかし納得もできます。それだけ注目を集めているというわけですから」


 各々が違う反応を見せる中、白いローブに身を包んだ一人の少女が、誰よりも怒気を孕んだ声で冷酷に告げた。


「さっさと始めてしまいましょう。早くやるに越したことはありません」

「勿論だ。貴女の好きなようにすればいい。僕がそれを許そう」

 

 仲間の一人——赤いフードを被っている——は鷹揚に頷き、少女は縛られている男に近づいた。

 そして手をかざし、世界で唯一の呪文を詠唱する。


「祝福よ」


 失神した原因となった怪我は全て治り、男はゆっくりと目を覚ます。


「ここは……」

「はじめまして、監視者。あなたの名前をお教えいただけますか?」

「監視者……? 何のことだ。早くっ、解放しろ!」


 冷たくはあったが優しさもあったその言葉に対し、監視者と呼ばれた男は怒声で返した。

 同時に縄を解こうともがいているが、少女たちは哀れな目で見つめるのみ。


 少女はため息をつき、人差し指の先を男の左目に向けた。


「微光よ」

「ああああああっ!!!!!!」


 光を浴びた左目は一瞬にして消え去り、血がダラダラと流れ出す。

 その痛みにのたうち回ろうとするも、椅子の拘束が固く、まともに動くことすらできない。

 

 それもそのはず。

 椅子の足は氷で完全に固定されており、炎で溶かさない限りは永遠に動くこと許さない。


 彼は、痛みを発散することすら出来ないのだ。


「うぐっ……!」


 狭くなった視界で、男は目の前の白い悪魔を睨みつける。


 ニタリと笑う彼女の口元が、微かな明かりに照らされた。

 それが余計に悪魔に見え、男は恐怖の鎖で縛り付けられる、


「答えてください。あなたは今日、何をしていましたか?」

「絶対にっ……答えるものか……!」


 未だ反抗的な男に、少女は指を向けた。

 それは残った右目を指している——そう気づいた男はすぐに閉口し、抵抗を諦めた。


「分かった。全て話す。だからこれ以上は……!」

「ふふっ。よろしいです。神も少しばかりは慈悲をくださるでしょう」


 少女の笑い声は可憐で、清楚で、美しかった。


 誰もを魅了する声に、縋りたいと思ってしまった。

 

(目の前にいるのは白い悪魔ではない。天の使いに連なる存在なのだ)


 意識の外で、彼は少女の全てを受け入れた。


 その様子に満足した少女は、質問を投げかける。


「あなたの所属と目的。それと今日していたことを話してください」

「俺は王家直属の暗部に所属する斥候だ。目的は、聖女アトラ・ルミディーナの監視と護衛。今日も聖女アトラの監視をしていた」

「その他には?」

「いや、何もしていない。暗部の仲間も手を出すような真似はしないはずだ。俺以外の斥候も来ていない」


 その時、赤いフードの男が口を開いた。


「それは、誰の命令だ?」

「お前には言わない」

「なっ……」


 少女は苦笑し、同じ質問を繰り返した。


「誰の命令ですか?」

「国王陛下による王命だ。最優先目標というご指示もある」


 赤いフードの男は、その答えに驚きを隠せなかった。


「そうか、陛下はそこまで……」

「だからこそ逆にシロ、とも言えますね」


 少女はそこで言葉を切り、後ろにいた仲間の方へと向き直った。


「そろそろ私は次に移りたいと思うのですが、どうでしょう?」

「問題ないでしょう」

「同感だ」

「そう、だね」


 最後の置き土産と言わんばかりに「祝福よ」と呟き、少女は二人目の元へと向かった。


 復活した視界の中、男は白いフードから溢れた金色の髪を見た。見てしまった。


 暗部として培った経験は、思考を一気に加速させる。


(あの髪……今まで何度も見ている。間違いない。あれは——聖女アトラだ)


 ◇


「ボクに何の用だ、聖女」

「あら、既に起きている上に私の正体も分かってるんですね。ではあなたがクロですか?」

「違う。ボクはお前を見ていただけだ。それ以上も以下もない」


 椅子に縛られているのに余裕そうな態度で喋る少年は、先ほどの男よりも話が通じなさそうだな——と、社会人としての経験でアトラは理解した。


「にしてもおかしくないかい? あの黒髪の男、ボクでさえ気づかないくらいに気配を消せるんだ。もはやこの世界のモノじゃないって」

「私はあなたと雑談をしに来たわけありません。人の正体を勘繰るより先にあなたの正体について吐いてください」


 アトラが叱るような口調で言うと、少年は黙り始めた。


 うんともすんとも言わないのを見かねて魔法を詠唱しようとした瞬間、侵入者が現れた。


「ごめんなさいね、聖女ちゃん。その子を解放してあげて」

「ルクレア……学院長」


 妖艶な雰囲気を漂わせ、金髪のエルフ——ルクレアはアトラの前に立った。

 しかし、そこにいつもの余裕さはなく、どこか焦りを感じているように見えた。


「その子はお姉さんの使役する使い魔よ。何も悪いことはしてないわ」

「そうですか。学院長が保証するならこれ以上追及はしません。では」


 足早に立ち去ろうとするアトラの手を掴み、ルクレアは言う。


「悪いことをしたのは貴女の方でしょう? 何も言わずに隠れて外出するだなんて。この子がバッチリ見てたわよ……。今のあなたにはあらゆる方面からの監視がついてるのだから、迂闊な行動は厳禁よ?」

「うっ、バレちゃってたか……すみません」


 耳が痛い話だ、とアトラは思った。

 正直、王国からの監視は想定していたが、学院長も別口で用意していることまでは想定外だったのだ。


 だが、それ以上にひっかかることもあった。


「学院長。監視しているのはあらゆる方面と仰いましたね。どこの勢力が監視しているのかご存知なのですか?」

「当然よ。このお姉さんの管理する学院に忍び込んでいるんだもの、それくらい知っていなきゃ困るわ」

「では、なぜ追い払わないんですか?」

「報復が怖いからよ。多少妨害はしてるけど、撃退すると敵対行為と認識されて国際問題になりかねないわ」


 そう言われては、アトラは何も言い返せない。

 逆に妨害をしてくれたことに感謝せねばならないくらいだ。


「では、どこの国が監視を?」

「アラヴァルナくんが捕まえたもう一人の監視者は、帝国の諜報部よ。残念だけど、公国の監視——恐らく忍者はもう逃げちゃってるわ」

「忍者……」


 公国の忍者と言えば、最強の隠密集団。

 かくれんぼでもしようものなら、一ヶ月かかっても見つけることは出来ず、また隠れた側も一ヶ月そこで生活できるほどに高い能力を持っている。


(公国と王国は海を隔てているから地理的にも遠い。なのにそんな戦力をわざわざ派遣してくるほど、公国は本気で俺に興味を持っているのか)


 考えるべきことが増え、アトラは頭を抱えたくなった。


 だが、今はやるべきことがある。

 目的を思い出したアトラは、最後の部屋に向かって歩き出した。


 ◇


「私は王国の暗部だ。聖女アトラを守るために派遣されている」

「本当か? もう一人王国暗部を捕縛しているんだが」

「あぁ。きっとそいつは私の仲間だ」


 アトラが部屋に入ると、既にバーレイグやノルナが尋問をしていた。


 傷がなく、悠然と会話しているのを見るに、敵意がないのが分かる。

 もし反抗的ならば、彼らはきっと爪を剥がすくらいはしているはずだからだ。


 この場にいないアラヴァルナは、一人目の王国暗部の処理を行っている。


「お二人とも。騙されないでください。彼女は帝国諜報部の者です」

「その情報はどこから?」

「狐、ですよ」


 それだけで、二人は完全に理解した。

 なぜ知っているのかは気にしてはいけない、というところまで察することができたのは、ルクレアが狡猾な性格だと二人がよく知っているからだ。


「さて、帝国のワンちゃん。貴女の知っている情報について、全て吐いてください」


 ありったけの魔力を放出し、精神を侵食していく。


 それは場が真っ白に染め上げられるほどで、暗い部屋が一気に神聖なものへと早変わりした。


 影響は凄まじく、アトラに心酔しているはずの二人でさえも惚れ直すほどだった。


 つまりは、敵対する人間がどうなるか——


「勿論ですっ♡ まずは何から話せばいいですかっ♡」


 真っ白になった部屋で、成人した女性が目を♡にし、犬のように舌を出して服従のポーズをする。


 そんな光景を、魔力の放出だけで生み出したのだ。


 世界が、そうあるべきと認識したのだ。


「今日のことについて、お願いします。ここに至るまでの全てを」


 そして、彼女は本当に全てを話し始めた。


 遍く機密情報すら、平然と。


「そうした後、六空法(ヘキサ=エフェリオン)の一角であるロザルク・ガルドレオン閣下のご指示の通りにしていたのです♡」


 刹那、緊張が走った。

 六空法(ヘキサ=エフェリオン)という大物の名前が出てしまっては、話が変わってきてしまう。


「炎の覇者——あの最強と名高い剣士が、か」


 とばいえ、アトラはその名を知らない。


 ゲームにいなかったのだ。


 六空法(ヘキサ=エフェリオン)のうち、登場していたのは雷と地、水のみ。他は存在が示唆されるのみで登場はしていない。


「なぜ、そんな方が聖女を殺そうと?」

「私にも分からないんですけどっ、でも閣下は『そうなる運命だから』って言ってました♡ 正しいハッピーエンドの為に、聖女アトラは必要ないんですって♡ 」


 ハッピーエンド。

 そんな作り物めいたワードを聞いて、何も連想しない訳がない。

 ましてやゲーマーが聞けば、無数の記憶が連鎖して思い起こされる。


「ハッピー、エンド」

「この世界のハッピーエンドって……」

「何なのでしょうか……」


 直接口に出さずとも、皆はわかっていた。

 

 アトラが死ぬべきハッピーエンドなんてない。

 そう思っていても、理解できてしまう。


 ——ロザルク・ガルドレオンは、ゲームのストーリーに修正しようとする強制力だ。


「ロザルク・ガルドレオン……覚えたぞ。必ずや、この私が——聖女アトラ・ルミディーナがレキの仇を取ってやる」

「僕も協力するよ」

「私もだ。国を守る者として、許してたまるか」


 白く塗りつぶされた世界の中。

 数奇な運命に導かれた者たちが、数奇な運命を歩むため、ここに集い、団結した。

 

 真っ白な誓いは、きっと何もかもを乗り越える。


 そして——ハッピーエンドを、自らの手で掴み取る。

 


 =====


 ……分かってます

 ♡を押してくださる読者様が激減したの、ちゃんと更新しなかったからですよね

 

 色々と申し訳ないです……

 皆様のお名前をぜひ覚えさせてください!

 

 ↓↓↓↓↓


「面白い!」「続きが読みたい!」

など思っていただけましたら、

画面下より《5つ星》をお願いします!


この作品はカクヨムにもあるので、そちらでもぜひ!

https://kakuyomu.jp/users/Xenosx2

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