第9話:初めての授業!~with銀髪美少女~
「むにゃむにゃ……」
「アトラちゃーん! おっはよ~~~!!!」
「ひゃぁ!?」
「う゛わ゛ぁ゛!?」
元気ハツラツな声と共に、バン! と轟音が鳴り響き、微睡んでいた意識が一瞬で覚醒した。
慌てて布団から飛び起き、音のした方向を見る。
そこには、快活な笑顔を向けてくる銀髪ツインテールの少女がいた。
「……!?」
太陽の光に反射して、彼女の銀髪は宝石のような煌めきを放っている。
だが、つむじの辺りからアホ毛がぴょんと立ち上がっているのを見るに、しっかりとヘアセットをしている訳ではなさそうだ。
そんな彼女は既に制服に着替えており、身長は俺よりわずかに大きいように見える。
胸は……完全に、俺より、大きい。
シャツを押し上げて主張しているとは……とんでもない。
——というか、あまりに唐突でつい叫んでしまったが……なんで驚かせた側まで驚いてるんだよ?
「も〜、びっくりさせないでよぉ。早く着替えて学校行くよっ!」
「それは私のセリフ……ううん、なんでもない」
寝起きで掠れた声は予想より小さく、ほとんど響かない。
だから俺の返答が聞こえなかったのか、そのまま銀髪少女は続けた。
「そ・れ・と・も、このレキちゃんが着替えさせちゃおっかな?」
レキ。
聞き覚えのある名前に、ビクッと身体が反応する。
確か、レキとは主人公たちの行く手を阻むボスの一人だ。
学院が破壊され、居場所を失った彼女は、魔の力に魅入られたことで堕落し、邪悪な存在となる。
しかし、主人公たちは正義を代行する存在が故に敵対し、倒されるのだ。
どれも、今の姿からは想像できない。
……いや、行動は今も同じっぽいな。
ともかく、学院がまだある以上はそれほど心配せずとも良いだろう。
「……む? アトラちゃん、どーしたの?」
「えっと、なんでもないよ。その……着替えさせてくれるって言ってたよね。レキちゃん、お願い」
「へっ!? ちょ、ちょっとやだなぁ冗談だよ——え、本気?」
ぐへへ、美少女に着替えさせてもらうとか最高だろ!
レキも顔真っ赤で眼福だぁ!
「う、うぅ……そんな笑顔で見つめないでよぉ……! 何か言ってって……! わ、分かった! 分かったから! ほら、脱がすから腕上げてっ!」
◇
銀髪ツインテのレキちゃんにいっぱいお世話してもらった俺は、二人で仲良く廊下を歩いていた。
完全に陽キャなレキはリーダーシップがあるのか、グイグイ引っ張ってくれるので簡単に打ち解けることができた。
もっとも、彼女にとってアトラは昔からの親友だったのだが……商談をする時にも使ってた話術で、なんとか俺が何も知らないことを隠すことに成功した。
共通する知識は引き出せたし、しばらくは困らないはず。
「うぅ、もっとリンゴとか食べておけば良かったよぉ~。フルーツ全種類制覇しとけば良かったよぉ~!」
そのついでと言えば何だが、二人で食堂に行って朝食も食べた。
そこで俺は、レキに髪型をハーフアップにしてもらっている。
曰く、「レキがもっと可愛くしてあげる♡」とのことで、鏡で見た俺が数倍可愛くなっていてビビったのは生涯忘れないに違いない。
「ふふっ。レキちゃん、さっきからそればっかだよ?」
「だってぇ~!」
そう言って、俺の隣を歩くレキが抱きついてくる。
くぅ~、この柔らかい感触がたまんねぇ……!
しかもいい匂いするし!
あぁ、これは心の中のウサギがぴょんぴょんするわぁ~。
「レキちゃん……!?」
「はぁ~、アトラちゃんの匂い好きだなぁ。お日様が服に住み着いてるみたいにポカポカでぇ——」
俺の制服に顔を埋め、レキが上目遣いで見上げてくる。
その可愛さに脳が焼き切れそうになりながらも、なんとか耐えてツッコミに専念する。
「ごめん、何言ってるかわかんない……」
「あっ、着いた」
くっ——そんなことを言っているうちに教室に到着してしまった。
やっぱりツッコミしなくてよかったかもしれない。
「ここがレキとアトラちゃんの教室だねっ」
教室は段構造になっていて、大学のような見た目だ。
既にクラスメイトであろう生徒たちが何人かおり、俺に気づいてか可愛らしい笑顔を向けてくれる。それ以外も、好意的な顔色でこちらを見ている者が大半だ。
「……うげっ」
可愛らしい、と言った通り、生徒は女子ばかり。
その中で目立つのが、見覚えのある男——自称「エイカム伯爵子息」だった。
俺の存在には気づいているようで、忌々しげな視線をじっと寄越してくる。ウザったいったらありゃしない。
聖女ビームでぶっ飛ばしてやろうか。あ゛ぁ゛ん゛?
「アトラちゃん……? なんか顔怖いよ……?」
「なんでもないっ。大丈夫だよ。あ、席座ろ?」
「じゃあ、レキあそこがいい!」
元気にレキが指さした場所は、子息くんのちょうど後方だった。
左、真ん中、右と列があるうち、彼は最前列に座っていて、俺らはその5列後ろ。申し分ない距離と言える。グッジョブだぞ、レキ。
「聖女アトラ……」
「おや、これはこれは。学院事変ぶりですね、エイカム伯爵家のご子息さま。ご無事で何よりです」
しかし、横を通り過ぎなければならなかった。
そこで俺を仇敵みたいな雰囲気を出すものだから、つい口が動いてしまったのだ。
俺の声は教室中に響き、視線が一気に集中する。
聖女が話しかけた存在——それだけで、皆の興味を引くのは造作もない。
「くっ……聖女様、お久しぶりですねッ。あの時は本当にお世話になりました……!」
節々に怒りがにじみ出たような口調で、子息くんはなんとか答えた。
感情を抑えるのに必死なのがよく分かる。みっともない。
「そういえば、お名前を伺っていませんでしたね。私はアトラ・ルミディーナと申します。そちらは?」
「ライナルト・エイカムだ」
社交辞令としても「お見知り置きを」くらいは言うはずだが、それも無し。
相当こいつは俺が嫌いなんだな。別にいいけど。
「ライナルトさま……覚えておきますね。では、ごきげんよう」
「あ、レキはレキだよ! みんなもよろしくね~!」
ピリピリとした雰囲気をぶち壊すようにレキが教室中に叫び、そそくさと席に座った。
まるでエネルギーが爆発したかと思うほどの素早さと声量。皆も面食らっているが、笑っているからたぶん問題ない。
——と、そこで、一人の大人が教室に入ってきた。
「皆さん、着席していますね。では、授業を始めますよ」
茶髪でボブカットと、清楚な雰囲気の女性教師が言った刹那、チャイムが遠くから鳴り響く。
まさに、ぴったりのタイミングだ。
「まず、このクラスの概要について説明します。ここに集まっている皆さんは、襲撃事件——通称『学院事変』で生き残り、かつ精神的な療養を必要としていない生徒たちです。以降、ここは臨時クラスとなり、しばらくは一緒に授業を受けてもらいます」
なるほど、ある種“強者”ばかりのクラスというわけか。
人数で言えば10人前後。
数百人がいるはずの学院でそれだけしか集まらないのは、それだけ学院事変が凄惨なことだったのが伺い知れる。
そして、その上で出席出来るということは……推して知るべしだろう。
「……人数は欠けていませんね。では、先生は少し荷物を取ってきますから、待っていてください。それと——《《何があっても、臨機応変に対応すること》》」
仄暗い笑顔を浮かべ、先生は教室を出る。
それにどこか違和感を覚えていると、教室の外から魔力の波動を感じた。
明らかに、友好的な存在のそれではない。
虎視眈々とタイミングを伺うような、不気味な静けさだ。
「襲撃かもしれません。皆さん、戦闘体勢を整えてください」
俺の言葉に周囲がざわつき始める。
やる気満々な者や、怯える者、あるいは静観する者など、いくつかのタイプに別れた。
「アトラちゃん……?」
「きっと大丈夫。私もみんなも強いんだから」
俺が手を出さずとも、ここにいるならそこそこやれるはずだ。
まずは静観し、実力の程を見るとしよう。
もしも苦戦するようなら——その時は、俺が全て蹴散らしてやる。
「面白い!」「続きが読みたい!」
など思っていただけましたら、
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