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ゴーレムとじろさん

〈弱き日に明日を思ふ不思議かな 涙次〉



【ⅰ】


(前回參照。)


金尾重悟が魔道に墜ちたのは、これで三度めである。しよつぱなは彼のティーネイジャー時代、二度めはカンテラ一味が「ゲーマー【魔】」と熾烈な爭ひをしてゐた最中。今回は金尾、憑依される事なく、自らの身一つを持つての魔道墜ちである。カンテラへの怒り- を忘れないやうにと、カンテラの斬つた通りに、首が胴體を離れた儘の姿で、彼は魔界の住民となつた。彼の新規加入に依り魔界(潰滅寸前であつた)は俄かに活氣付いた。謂はゞ、金尾は新生魔界のキイ・パーソンだつたのである。



【ⅱ】


金尾はゴーレムに變身する能力を、蘇生した「ゲーマー【魔】」に授かり、復活させた。彼は、『イナズマン』ではないが・笑、「二段變身」する- 即ち、泥となり、そしてゴーレムと化す。これは彼がカンテラ一味に處屬してゐた頃と變はらないが、一つ違つてゐたのは、泥→ゴーレムの過程が夜限りのものであつた弱點は克服され、晝の日中から變身出來るやうになつた。これは彼に取つては大きな前進の一歩であつた。ゴーレム- 東歐ユダヤ傳承の魔物。その巨軀は現代の空想上の巨大ロボットに似たものだ。昔の人の方が、宗教的抑圧などの軛に依り、想像力が逞しかつた。「現代の架空」は焼き直しに過ぎないのである。そこら邊は余談だが、金尾がゴーレムに變身出來るのでは、折角のカンテラの奮闘は水泡と帰したも同然である。また、嘗ては彼の敵であつた「ゲーマー【魔】」と仲間として馴染んでゐたり、彼はカンテラ一味のアンチな存在としてはホープと云へた。



【ⅲ】


ルシフェルは、彼の墓の副葬品、愛用の水晶玉でその有り様をとくと見た(水晶玉の魔術は、カンテラと彼では、ルシフェルの方に「一日の長」があつた)。そしてカンテラに、忠告と云ふ形でその事を告げた。「やつぱりな」-カンテラ。それはカンテラに豫想出來た事の内で、最惡の事態だつた。一味の最強の敵は、嘗ての仲間より産み出されたのである。内情を知られ過ぎてゐると云ふ弱みもあつた。「あの時(『ゲーマー【魔】』との血戰の最終ポイント)、金尾を斬つて置けば...」この事態は未然に防げた筈だつた。だが、幾らカンテラがその事を強く悔やんでも、全ては「後の祭り」である。



※※※※


〈英米もザ・クリーム以前ロックなしさう云ふレコード店主の獨断 平手みき〉



【ⅳ】


ゴーレムは、カンテラが* 白虎と合力したとて到底敵はぬ怪力の持ち主である。力ではない何か- が、對ゴーレムの闘ひには必要とされた。ゴーレムをカンテラが以前斃した決め技は、この魔物の額にある「マーク」emeth(ヘブライ語で「眞理」を意味する)の最初の「e」を削つて、meth(死)に變へた、と云ふものであつたが、もしかすればその弱點でさへ、「ゲーマー【魔】」に依り帳消しにされてゐるかも知れない-「ゲーマー【魔】」にとり、カンテラに** 右腕を斬り取られた屈辱は、忘れ難いものだつたに違ひない。同じやうに首を斬り落とされた金尾は、彼の「同志」であつた。「血は海水より濃し、だがその血よりも濃い何物かゞ存在する。」贋ラ=ロシュフウコオ。



* 當該シリーズ第6話參照。

** 前シリーズ第115話參照。



【ⅴ】


カンテラには分かつた。「最終決戰」は刻一刻と近付いてゐる事が。そして焦つてゐた。こゝで手痛い一敗をしてしまふと、今迄の努力が永遠に報はれなくなる。そんな氣がした。だが、こゝに(カンテラサイドにも)思はぬ伏兵がゐる事を、カンテラは豫期してゐなかつた。伏兵とは、じろさんである。對・怪力と云ふ點で、じろさんの「古式拳法」は利に叶つたものだつた。「古式拳法」は、合氣柔術の影響を色濃く受けてゐる(相手の「氣」を返し、攻撃力に變へるのだ)。一の力を倍にして返すには、「古式拳法」ほど確かなものはない。じろさん「こゝは俺に任せてくれよ、カンさん」。髙見の見物みたいでカンテラは尻がむづ痒いのであるが、じろさんの申し出を無碍に跳ね付ける譯には行かない。



【ⅵ】


豫想通り、ゴーレムは白晝堂々攻撃を仕掛けて來た。幾ら中野が都會でも、正月三が日は人通りが尠ないものなのだ。金尾にとつても、「ゲーマー【魔】」にとつても、「伏兵」じろさんが出て來たのは驚くべき事だつた。ゴーレムは、この素手の戰士、初老の小柄な男に、カンテラ一味の秘策があるとは、信じられなかつた。「此井め、捻り潰してやるわ」ゴーレムは足を振り上げ、じろさんを踏み潰さうとした。「此井秘術・倍返し!!」じろさんがゴーレムの足の裏を突くと、たちまちの内に形勢逆轉、ゴーレムは己れの力を以てして、倍返しの怖さを知らねばならなかつた。ゴーレムは轉倒した。轉倒したゴーレム程あしらひ易い「カモ」はゐなかつた。余りの巨體に自分の力で起き上がれないのである。その隙を見てカンテラ、「ゲーマー【魔】」を斬つた。「しええええええいつ!!」ゴーレムは時同じくして元の金尾の姿に戻つた。金尾、慌てゝ姿を消した。魔界に逃げ込んだのである。



【ⅶ】


「この場合、深追ひは得策とは云へないだらう」じろさんが主張、今度ばかりはカンテラ、じろさんにまさに「一本取られた」。結果として骰の目はカンテラサイドの圧勝と出た。「いや、俺は特に何もしてゐないよ」-じろさん。カンテラの豫想を上回るじろさんの底力。感服せざるを得なかつた。お仕舞ひ。



※※※※


〈初珈琲初戀の味なんて噓 涙次〉


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