72 まだ若かった頃の、可愛らしさがあったヘルシ
久しぶりに帰ってきたフープと一緒にヘルシの元へ。これで昔のパーティーの主要なメンバーが集まることになる。主要なメンバーというのは、たまに合流する人たちが他にもいるから。
懐かしい話に花が咲きそうな空気感もあったが、どちらかというと前回の魔王を討伐した伝説の三人が集まっていることによる緊張感が城内には広がっていた。
「今日はいつもよりも賑やかじゃな」
「お前たちが来るからだな」
「別にワシはいつもここに来ておるじゃろ」
「この三人が揃うとダメらしいな。二十年前だからまだまだここにはその時の記憶がある奴も多い。それもあって、俺たち三人が揃うとピりつくみたいだ」
ワシの方がスゴいじゃん……
ワシの場合は一人で魔王討伐したわけじゃし。
でも、みんなそんなに緊張してなかったじゃん……
まあ、世界を救ってすぐでみんなお祝いムードじゃったからな。別にワシが大したことないヤツとかそういうアレではないよな?
「久しぶり……ヘルシ国王様」
「ほら。ポロックもフープを見習え。国王様と付けろ」
「フープよ。そんなことをする必要は全くないんじゃぞ?コヤツは形だけじゃからな。魔王の復活の事を知らずに兵士を弱くさせていたせいでこんな面倒な事になっとるんじゃからな?」
そもそもなにが国王じゃ。
まあ、確かにちゃんとやっている部分はあるみたいじゃが。
でも、結局はワシ頼み……
でもないか。ちゃんと募兵もやっておったしな。もはやワシの方がなんもしとらんかもしれん。よくよく考えたら色々やっておったかもしれん。
……別にそんなことはいいんじゃよ!
普通に考えてヘルシが国王なんておかしい!
ワシがヘルシのことを「国王様」なんて呼ぶのもおかしい!
そんなことはワシらの関係性を考えると不自然じゃ。普通はもっとフランクに、前みたいに話すのが普通じゃろ?相手がどんな立場になったとしてもな。
「そうじゃ。フープがスコプという兵士の特訓をすることになった」
「そうなのか?交渉しておいてくれたのか?」
「そんな大層なもんじゃないわい。ただ流れでそうなっただけじゃ」
「感謝するよポロック。なんだかんだ言ってお前もこの世界の事が大事らしいな?それでこそ『伝説の老兵』ということじゃろう」
ヘルシはポロックに頭を下げた。
普段はそんなことをしないヘルシに驚くポロック。
こういうところでちゃんと頭を下げられる事。
その事に感心しているポロックがいたが、それとは別に人間として負けている感じがしてどこか不服だった。もはやヘルシのやることは全部微妙に不快なのだった。
「そんな感謝されるようなことでもないわい」
「そんなことはないだろう」
「別にお主のためにやっとるわけじゃないわい!」
「でも、なんだかんだ俺のためになっている。まあ、ポロックが世界のためにこれをしていることは俺も知ってるがな。なんだかんだお前は優しいからな」
なんじゃこいつ。
なんのつもりじゃ?ワシなんか褒めて。
懐かしい気持ちにでもなっておるのか?
まあ、よいか。別にこうして三人で揃うのは久しぶりなわけじゃし、多少の違和感は許してやるとしよう。これすらも否定してしまってはどうにもならんからな。
「それにしてもフープも成長したみたいだな」
「……そう?なら嬉しい」
「その見た目を見れば能力が向上したことがわかるよ」
「そう。まあ、そうかもね」
「もしよかったら後でなにかアドバイスをくれないか?なにか掴んだりしたんだろ?それを教えてくれたら俺も助かる」
これはヘルシも不老不死を得たいと思っとる感じか?
立場があるから言い回しが巧妙じゃ。
普通に「若返りの秘訣を教えてくれ」でいいのに。
いや、よくないのか。それが善くない世の中になっておるからあんまりそういうのはせん方がいいのか。いやぁ、あまりにも難しすぎるぞ?今の世の中。
「瞑想じゃぞ、瞑想。それ以上でも以下でもないわい」
「……同文」
「やはり瞑想か。そんなこと言われても困るが」
「瞑想しないとこうはなれないよ?」
「そんな時間などないし、そもそも雑念が理由でそうなろうとしているわけだからな。恐らくそんなことをしても意味なんてないだろう」
似た者同士じゃ。
ワシも全く同じ理由で瞑想を止めた。
まあ、時間の余裕はあるかもしれんが。
それにしてもなんだか落ち着くな。城の奴等はかなり慌てているようじゃが、ワシらは昔のようになっておる。ヘルシももう昔の顔をしているようじゃ。
まだ若かった頃の、可愛らしさがあったヘルシ。
そんな姿を思い出して懐かしくなるポロック。
そんな二人の事をなんとなく見ているフープ。
三人は変わらなかった。ずっと変わらずに自分の道をひた走っていた。だからこそ三人は同じパーティーで居続けることができたのだ。そして、別れることになったのだ。
それぞれの道を走っていた三人が魔王の復活をきっかけにまた集まることになった。それは懐かしいだけではなくて、やはり使命感のある面倒な事でもあったのだ。
ヤバイ!年が明ける!
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