1 伝説の老兵じゃったワシが未だに最強のままっていいのか?
『戦場をかける紫電の龍』。それがワシの異名じゃ。魔族と人間が混ざる戦場を駆け抜けたのが懐かしい。
『バトルフィールド・ライトニングドラゴン』と呼ばれることもある。まぁ、少々ダサいのは勘弁してくれ。それはワシが二十代の頃の異名じゃからな。
広い広い庭園がある立派な大豪邸。
今もデカイデカイ窓から外を眺めておる。
ワシは世界の救世主じゃからな。しかし、冷遇の末に追放されたあのときにはこんなことになるなど全く思っておらんかったなぁ。
「ポロックじいさん!今日も昔話をしてほしいんだけど」
「わかったぞ?これはワシが制御不能になったギガンテスを――」
ご隠居になってから早二十年。
今では髭を剃ることすら面倒で伸びっぱなしじゃ。
髪も“ボサボサ”、顔も“シワシワ”。
寄り付いてくるのもこのアルクという男の子しかおらん。アルクは近所に住んでいる夫婦の子供で、たしか、五、六歳くらいだったじゃろうか?
“キラキラ”とした瞳が綺麗な栗毛の美男子じゃな。
ワシは昔から怖がられるばかりじゃったからなぁ。
こういう可愛いような見た目にちょっとした憧れがあったんじゃ。
まぁ、今ではそんな憧れなどもうないがな。さすがに見た目のことで悩むのはなくなった。もうどこからどう見てもおじいさんじゃし。
「ポロック様!!いま、今はご自宅にいらっしゃいますでしょうか!」
「なんじゃ!ワシは今昔話をアルクに語っておったところなんじゃい!」
「入ります!お邪魔します!」
ワシが武勇伝を純真無垢な子供に語っていると誰かが来よった。そろそろアルクが寝そうになっておったのに、なにをしておるんじゃ!
「実はですね!この前話したあの件についてなのですが――」
「バカモン!!こんなに可愛い子供がいる前でする話か!」
「そ、それもそうかもしれません!失礼しました!」
デリカシーがない男じゃなぁ!
たしか、アクアスとかいう名前の男じゃったな。
少し高めの身長をしている、どこかモテそうな雰囲気があるイケスカン男。なんだか弱そうで素直で真面目なところが女子受けよさそうじゃ。ワシもプレイボーイだからそこら辺はわかるんじゃい。
「おじいちゃん?もしかして、僕は帰った方がいい?」
「そんなことを言うでないよぉ。いいよ?居ていいよぉ?」
「そんな……待っていろってことですか?」
アルクの“キュルキュル”の瞳にそう言われたら敵わん。
たとえ、ワシじゃなかったとしても同様の対応をすることじゃろうな。それにしてもアクアスはワシの許可もなく勝手に部屋に上がり込んできよって。彼が着ている鎧の隙間からホコリが“ポロポロ”落ちておるわ。
それにしても、世界は大変なようじゃな。
アクアスがワシのところへやって来た理由。
それは、この世界にまた魔王が現れそうになっているからじゃ。
数十年も前にワシらで倒したはずなんじゃが、まぁ、魔物は復活することがあるらしいからな。こればっかりは仕方がない。
とはいえ、情けないとは思わんのか。
魔王が消えて弛んどるんじゃないのか?
なんでもかんでも他人に任せようとしよって!
ワシのような老体がなにかできることなんてないじゃろう?どうせ世界は新しい魔法だの戦闘だのが増えておるはずじゃからな。ワシなんて時代遅れの足手まといになる……わけもないか。
―――――
「で?アルクも帰ってもう夕方じゃ。手短に頼むな」
「はい!実はですね、魔王がもうすでに現れたというのです」
「復活したか。うーん、まぁ、ワシの出る幕など――」
「そんなことおっしゃらないでください!」
スゴい剣幕でワシになにかを伝えようとしてくる。
“キリッ”としたその視線はやはりイケメンじゃなぁ。ワシはイケメンは好きじゃぞ。なぜならばワシはイケメンじゃからな。自分を見ているようで気分がいい。
「まぁ、わかったわかった。後方支援ならばワシの出る幕もあるじゃろうからな」
「いや、我々の計画だとフロントラインで戦ってもらうことに――」
「前線でか!?おいおい!老体じゃぞ?どこからどう見ても老体!」
あまりにも伝説が飛躍しすぎておるようじゃ!
そんなに大した実力でもないはずじゃろ!ワシくらいの人間も……一人くらいは居たなぁ、現役のときに“ギリギリ”一人いたくらいじゃったかなぁ?
「無理を言っているのは理解してます!そ、そこをなんとか!!」
「……まぁ、どうせ協力することにはなるはずじゃからな」
最前線に出るかどうかは知らん。
そんなこと今のワシにはなんにもわかっておらん。
しかし、伝説の老兵じゃったワシが未だに最強のままっていいのか?
この様子だとワシがなにもせんでいたら本当に世界が滅んでしまうかもしれん。それは、ワシにとってもアルクにとっても可愛い可愛いひ孫たちにとっても不服すぎる結末じゃ!
ここはワシがやるしかないというのか?
読んでくださりありがとうございます!
修正とかをすることがあるので内容がいつの間にか変わってしまっているかもしれません!




