【6日目】観測者の目、目覚める時
こんばんは、霧野ゆうです。
第6話ではついに、ハルキが“観測者”としての力を手に入れました。
世界がゲームのように見えるのに、すべては現実——そんな怖さとワクワクを詰め込んでいます!
「目、閉じて。深く、ゆっくり息を吸って」
ユイの声が、やけに近くで響いた。
公園のベンチに座るハルキの目元に、彼女の手がそっと添えられる。
夜風が少し冷たく感じた。
「これで、登録処理が完了する。……世界の“見え方”が変わるから、驚かないでね」
「……お前、最初に言えよそういうこと」
そう言いつつも、ハルキは言われた通り、目を閉じる。
そして——
——ピピッ
何かが視界の奥に走った。
まぶたの裏で、世界が“上書き”されるような、不思議な感覚。
「——ハルキくん、目を開けて」
そっとまぶたを開けると、そこは、見慣れた公園だった。
……のはずだった。
ハルキの視界の右上に、小さなウィンドウが浮かんでいた。
【観測視界ON】
【対象:坂元アイ/ステータス:監視モード潜伏中】
「……これ、なんだよ?」
「それが“観測者”の視界。今のあなたは、情報を読むことができるの」
ユイの指先がふわりと空中をなぞる。
すると彼女の視界にも、同じようにウィンドウが浮かんでいた。
「こうして、対象のステータスを“視認”できる。それが登録者の力……“観測の眼”」
「これって、まるでゲームじゃん……」
「でも、これは現実。失敗したら、“死ぬ”こともある」
「……まじかよ」
ハルキは空を仰いだ。
星が、どこか遠くに思える。
「アイってやつ、やっぱり……“監視者”だったんだな」
「彼女は“潜伏型”の監視者。ふだんは何気ない言葉でアクセス者を誘導する。
でも登録された今のあなたは、彼女から一歩先に進んだ」
「つまり……“狙われる側”から、“見る側”に?」
「そう。そしてこれから、あなたには“ミッション”が与えられる」
「ミッション……って?」
ユイはポケットから小型端末を取り出した。
それはまるで、未来のスマートフォンのようだった。
そこには、次のような指令が表示されていた。
【初期ミッション:観測対象A1“坂元アイ”の監視ログを収集せよ】
【報酬:ステータス拡張1/コードポイント+5】
「これが、観測者としての“はじめの一歩”」
ハルキは、画面を見つめながら呟いた。
「なんか……とんでもない世界に足を踏み入れちまった気がするな」
ユイは微笑んだ。
「でも、まだ間に合うよ。“正しい観測者”になれるなら」
——どこまでが正しくて、どこからが歪んでいるのか。
その境界線を、ハルキはまだ知らなかった。
読んでくださってありがとう!
“観測の眼”の発動、そして初のミッション発令。
ゲーム風のシステムで動くけれど、中身は青春と命がかかったリアルな選択です。
次回は、坂元アイに接近しながら“監視ログ”を集める緊張のエピソード!
裏で何が動いているのか、少しずつ明らかにしていきます!