【4日目】逃走、観測者の影
こんにちは、霧野ゆうです!
第4話では、物語が急加速しました!ユイの過去、兄の存在、そして“監視者”という正体不明の存在……。この世界には、何か大きな秘密が隠されています。
だんだん、ハルキが“巻き込まれた”のではなく“選ばれた”ことが見えてきたかも……
夕暮れの風を切り裂いて、ハルキとユイは駆けた。
息が上がる。心臓がうるさい。けれど、ユイの手はしっかりと彼の腕を引いていた。
「なあ、本当に追われてるのかよ!? 副委員長だぞ、坂元は!あいつが“監視者”とか——」
「それが、“一番危険”なんだよ」
ユイの声は真剣だった。走りながらでも、その目は鋭く周囲を見ていた。
「“監視者”は、普通の人間のフリをするの。友達、先生、家族に紛れて、“アクセス者”を見張る」
「アクセス者……?」
「あなたのこと。昨日、コードを見た時点で、あなたは“世界の観測対象”になった」
「俺が? どういう……」
言葉を飲み込む。わかるわけがなかった。
ただのレシート。それを見ただけで、世界に狙われる? 意味がわからない。
だけど、ユイの手の温もりと真剣な表情が、すべての冗談を打ち消していた。
やがてふたりは、学校の裏にある古い公園にたどり着いた。
人通りは少なく、今は誰もいない。さびついた鉄棒と、壊れかけたブランコだけが風に揺れている。
「はあ……はあ……ここなら……たぶん……」
ユイが膝に手をついて息を整える。
ハルキも座り込んだ。心も身体も、追いついていない。
「なあ、ユイ。お前は、いつからこんなことを知ってたんだ」
彼女は少し口を閉ざした後、ポツリと呟いた。
「去年。兄が“消された”時から」
「兄……?」
「彼も“アクセス者”だった。でも、誰も気づかないうちに、“いなかったこと”にされた。家族の記憶からも、学校の記録からも。——でも、私は覚えてる。ずっと、忘れないようにしたから」
彼女の声は、震えていた。
強く見えるその背中が、ほんの少しだけ小さく見えた。
「だから、同じことがあなたに起きないように……私は、あなたを守る」
風が止んだ。
空はもう、夜に変わりかけていた。
その時だった。
公園のブランコが、誰も乗っていないのに音を立てて揺れた。
「……追いつかれた」
ユイが立ち上がる。ポケットから、あの“コードの書かれた紙”を取り出す。
「次は、“選ばれる”か、“消される”か。あなたの決断が、すべてを変える」
ハルキは目を見開いた。
「決断……って、何を……!」
「“登録”するかどうか。あなた自身が、“観測する側”に立つかどうか——」
そして、闇の中に“監視者”の影が現れた。
今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございます!
ついに“決断”という言葉が出てきました。これは物語の核に関わるキーワードです。
次回は、ユイが持っている“登録”という謎の選択肢と、監視者の真の目的に迫っていく予定です。
まだまだ謎だらけですが、少しずつ明かしていきますので、これからも一緒に歩んでいただけたら嬉しいです!