【2日目】消えたレシートと無言の視線
こんにちは、霧野ゆうです!
第2話では、“日常のすき間”にじわじわと入り込んでくる違和感をテーマに描いてみました。普通のレシート、ただの視線。でもそこから始まる非日常って、すごくワクワクしませんか?
朝宮ユイの存在が、これから物語にどう関わっていくのかもお楽しみに!
コンビニの扉が、チリンと音を立てて開いた。
午後4時半。放課後の空気に混じって、夕陽のオレンジが床に伸びている。
「……また、来てしまった」
ハルキは呟くように言いながら、慣れた動作で飲み物コーナーに向かった。
午後の紅茶を取り、レジには向かわずにそのままイートインスペースへ。
昨日、自分がこの場所で買ったレシートを探すためだった。
ポケットの中には何もなかった。机の下も、椅子の隙間も、ゴミ箱の中も。——どこにもない。
でも、確かにハルキの記憶の中には、印字されていた奇妙な文字が焼き付いていた。
『登録不可商品』
『アクセスコード:A7–0415』
「なんなんだよ、それ…」
ごく普通のレシートに、そんな言葉が載るはずがない。
イタズラか?バグか? それとも……。
その時だった。誰かの視線を感じた。
ふと顔を上げると、すぐそこの自販機の影から誰かが覗いていた。
——朝宮ユイ。
同じクラスの、けれど一度も言葉を交わしたことがない、無口な少女。
黒髪をまとめ、いつも無表情で、誰とも関わろうとしない存在。
でも、彼女の目は確かに、ハルキの手元を見ていた。
(レシート…を、見てた?)
一瞬、目が合った。
その瞬間、ユイは目を伏せ、くるりと背を向けて、無言のままコンビニを出て行った。
ハルキは立ち上がった。何かがおかしい。偶然にしては、出来すぎている。
ユイの座っていた席へ向かう。何かあるはずだ。
そして、彼女の机の下に落ちていた一枚の紙——それが、自分のなくしたはずのレシートだった。
だがそれは昨日見たものとは違っていた。
印字の端がかすれている。
バーコードの下に、うっすらともう一行文字が追加されていた。
『時刻:04:15/拠点:S-09/ステータス:認識前』
「……なに、これ」
言葉を失っていると、誰かが彼の後ろに立った。気配でわかる。
「……それ、見たんだ」
聞き慣れない、けれどはっきりとした少女の声。
振り返ると、そこにはさっき出て行ったはずの朝宮ユイが立っていた。
彼女はまっすぐハルキの目を見て言った。
「なら、もう戻れないよ。日常には——」
そしてその瞬間、コンビニの照明がふっと一度、消えた。
読んでくださってありがとうございます!
今回は少し長めに、物語の緊張感と謎の導入部分を深掘りしてみました。
「登録不可商品」や「アクセスコード」というワードが今後どんな意味を持ってくるのか…少しずつ明かしていきます!
この物語は365話、青春と謎が交差する長い物語です。
まだまだ始まったばかりですが、ぜひ一緒に歩んでくださいね。