お月様のサラダ(首輪/マカロニ/月)
ぼくんちで飼ってる犬のカロに、新しい黄色の首輪をつけた夜。あんまりワンワンうるさいものだから、なだめる為に外に出た。
撫でても抱っこしても落ち着かないで、「散歩に行こうよ!」と服の袖を咥えて引っ張るものだから。ぼくはパパにもママにもナイショで、カロと二人で散歩に出かける事になってしまった。
どっちが散歩させられてるんだかわかりやしないほど、カロがリードを掴むぼくを思いっきり引っ張っていくものだから、いつもの散歩コースの大通りからも外れて、郊外の方に行ってしまった。こっちは昔からある畑とか、森とかが広がっている。昼間友達が一緒の時なら格好の遊び場だけど、夜にカロとぼくだけで行くのはちょっと怖い。いつもより明るい、まんまるのお月様の光のお陰で、そう暗くなかったから良かったけれど。
「あっ、カロ、今何食べたの、ダメだよ!」
食いしん坊のカロが、何か口に入れてポリポリしだしたので、ぼくは慌てたけど、道の先に点々と落っこちているものを見て納得した。
「カロ、お前、マカロニの匂いを嗅ぎつけて、こんなところまで来たの?」
ワン! と元気な返事。カロは、うちに初めて来た日、ぼくがご飯の時うっかり落っことしたマカロニサラダを拾い食いして以来、マカロニが大好きなんだ。名前もマカロニの真ん中だけ取って、カロ。
ポツポツ落ちているマカロニを、おいしそうにポリポリ食べて走っていくカロに引っ張られながら行った先は、お月様が良く見える丘の頂上。
「やあ、こんばんは」
お月様が、マカロニでサラダを作ってる!
「お月様も、マカロニサラダを食べるの?」
「そりゃそうさ、月だってサラダは食べる。こう見えて健康志向なんだ」
「だから夜、あんなに綺麗に輝けるんだね」
ぼくがそう言うと、お月様はちょっと照れたように輝いて、ぼくとカロにおいしいマカロニサラダをごちそうしてくれた。
お月様のマカロニサラダにはゆで卵を輪切りにしたのが入っていて、キュウリとハムでお母さんが作るやつとちょっと味が違う。お月様がサラダに落っこちたみたい、と言えば、お月様がキラキラ笑った。