ママの水玉傘(アイス/ハサミ/水玉)
付き合いたての彼氏と初デートに行くって言ったら、ママに水玉の折り畳み傘を持たされた。
「今日雨降るらしいから、持って行きなさい!」
だって。それならこんな真っ赤な布地に白の、目立って恥ずかしいやつ嫌なんだけど、なんとママは、同じく赤い水玉模様の布を、ジャキジャキとハサミで切って、ハンカチまで作って持たせてきた!
もーいや! こんな恥ずかしい傘もハンカチも! 放り出して置いて行こうかと思ったけど、そこまで怒るほどでもないかな……。とも思い直して、しぶしぶ持って行く事にした。
ママの言う通り、せっかくのデートの日なのに、空模様は悪かった。公園で歩いて話して、ベンチでアイスを食べてた時、彼氏君が子どもっぽく服にアイスを落としちゃって、ママの水玉ハンカチでとっさに拭いたら、彼氏君も噴いた。
「何それ、めっちゃ水玉! どこで売ってんの、欲しい!」
彼氏君のお日さまみたいな爆笑笑顔とは反対に、やっぱり雨が無慈悲に降ってきた。
「実は傘も赤い水玉模様で……」
「なんで!! やばい、アイスのせいじゃなくて腹痛い、でも傘忘れたから助かったよ、入れて入れて」
ママが見越していたのだろうか、折りたたみ傘にしては大きいサイズだったので、彼氏君と相合傘が出来た。
「傘もハンカチも、ママが用意したの。断れなくて……」
「いいじゃん、面白い人で。おかげで一緒に相合傘も出来たしさ」
私じゃなくて、ママばっかり褒めてるのに、なんでだろう。この人ともっとずっと、この先も一緒にいたいな。なんて、初デートでいきなり思ってしまった。
というか、なんとなくとっさに、「結婚して」って言いたくなっちゃって、やっぱり私はズレたママの子だな。と自分を反省。ママはそれでそのまんま、初めての彼氏と結婚したらしいけど……。
ママだって、流石に初デートではなかったらしいし。そんなところで二世タレントしちゃってもバカだし、向こうが引いちゃったら一巻の終わりだし。そしたら泣くのは自分だし。
だから、とりあえず今日は。ママに感謝しながら、相合傘を楽しむだけでいいかな。って思った。