99年後
目が覚めたら、知らない人が、私の顔を覗き込んでいた。
あれ?私、どうしたんだっけ。
「目が覚めた?」
「えっ。だれ?ここどこ?」
「ここは、病院よ。あなたは、助かったのよ。私は、宇宙船の会社の担当者のベティ・アルゴル・スズキよ。」
頭が、ボウっとする。
「助かった?」ぼんやり思い出す。
そういえば、冬眠スリープして脱出したんだっけ。
「パパとママは?」
ベティ・アルゴル・スズキとかいう人の顔が、気の毒そうにゆがんだ。
「あなたは、99年間冬眠していたの。お母様は、1年後に発見されて、平均寿命の108歳までご存命だったの。あなた達が発見されるまでは死なないって、がんばってたのだけれど、13年前に亡くなったわ。お父様は、まだ見つからず、もうすぐ100年たってしまうの。」
99年。そんなに寝ていたのか。家族だけでなく、友達も、知り合いも、みんないなくなってしまっただろう。どうやって生きていけばいいのか。
「あなたは、これを握りしめて眠っていたのよ。一緒に冬眠していたから、食べられるわ。」
チョコマシュマロが手渡された。思わず、一つ口に入れた。
甘さが口に広がった。ママ。。。。
結局、助かったのは150人の乗員乗客のうち、たった13人だったそうだ。100年たってしまい、すべての捜索は打ち切られた。
救命ボートの宇宙Aa1は、100年で尽き、最後の活動ー眠ったまま永遠に目覚めない措置ーを施し、活動を停止させる。救命ボートは、そのまま安らかな棺となったはずだ。。。




