脱出ボート
この宇宙船は、大破する。避難するしかない。
避難って…。誰が助けてくれるの?
宇宙船を運航している会社が捜索船を出す。ただし、もうすでに出発してから一年たっている。捜索船は、倍のスピードで進むが、ここにたどり着くまで半年かかる。その間に、浮遊したボートがどこに行くかは、分からない。ボートの生存装置は、100年分。その間に救出されなかった場合は…。
ああ、なんていうこと。
とにかく、運を天に任せて脱出ボートに乗るしかない。脱出ボートは、150人分ちゃんと用意されている。船に乗るとき、操作方法を説明されたから、大丈夫だな?
さあ、これを持って。
ママから渡されたのは、チョコマシュマロの袋だ。私が小学生のころ、これさえあればご機嫌、というおやつだった。食堂以外、飲食禁止なのに。ママったら、こんなもの持ち込んで。おかしくって、涙が出そうだ。
幸運を祈る。
うん、パパ、ママ、絶対、またあおうね。
私たちは、それぞれ個人用冬眠スリープ装置に入り、脱出ボートで船外に避難するスイッチを入れた。家族以外の乗客とは、連絡も取れず、そのまま分かれた。




