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タイトル未定2025/02/20 18:33


1. 転生と異世界の第一歩

2. 辺境の村での新生活

1. 猫耳族の村「リューク村」

2. 村の現状――深刻な食糧問題

3. ひまりの決意――発明で村を救う!

3. 初めての発明!

1. 魔法式かまどの発明

かまどの試作品1号:燃えすぎて爆発寸前

かまどの試作品2号:火がつかない

試作3号:ついに完成!

2. 氷魔法式冷蔵庫の発明

試作1号:ただの氷箱

試作2号:魔力石を使った冷却装置

3. 発明家ひまり、村の救世主となる!?

4. 予期せぬ影響、そして運命の歯車が動き出す!

1. 村の発展と広がる噂

2. 王都での噂と、王様の捜索命令

王都・セリオール

3. ひまり、何も知らずにのんびり過ごす

4. ついに村へ捜索隊が到着!

5.役人 vs. 天然ひまり、壮絶な攻防戦!

6.ついに決定! 「もういい……」



第1章:普通の女子高生、異世界で生きるために発明する!


1. 転生と異世界の第一歩


──冷たい風が、頬をかすめた。

ひんやりとした空気が肌に触れ、かすかに草の香りが鼻をくすぐる。


(……風?)


違和感を覚えたひまりは、ゆっくりと意識を取り戻した。


瞼を開くと、目に飛び込んできたのはどこまでも青く広がる空と、ゆらゆらと風にそよぐ鮮やかな緑の草原。



目の前には太陽の光を浴びて輝く木々が広がり、鳥のさえずりが心地よく耳に届く。



……おかしい。



ついさっきまで、ひまりは学校の帰り道にいたはずだった。



放課後、友達と別れ、スーパーに寄ってお菓子を買って帰ろうとしていた。



そんな彼女が、なぜ見知らぬ草原に寝転んでいるのか。



(夢……?)



頬をつねろうとしたが、土の冷たさや草の感触があまりにもリアルすぎる。


ゆっくりと起き上がり、まばたきを繰り返す。

そしてようやく、自分の置かれている状況に違和感を覚えた。


(……え? ここどこ?)


遠くに見えるのは、素朴な木造の家々。

さらにその向こうには、深い森が広がっているのが見えた。


学校も、コンビニも、電車の音すらない。

見渡す限り、人工物はどこにも見当たらなかった。


完全に、知らない場所だった。


「……え?」


焦燥感が胸の奥からじわじわと湧き上がる。

だが、そんな彼女の思考を遮るように、突然――


「ん……?」


頭の上で、もふっとした何かがぴくりと動いた。


違和感に気づき、思わず手を頭にやる。

すると、そこには自分の髪の毛とは違う、ふわふわとした柔らかい感触があった。


「……え? なにこれ……」


さらに指で撫でると、それは敏感に「ピクッ」と動いた。


(えっ、これ……耳!?)


慌てて髪をかき分け、頭の両側を探る。

すると、どう考えても自分の耳ではないものがそこに生えていた。


さらに、その場で跳ねるように立ち上がると――


ヒラリ、と揺れる何かを感じた。


恐る恐る後ろを振り向くと……そこには、見慣れないふさふさの尻尾が生えていた。

「……えええええ!?!?!? 私、猫耳になってるぅ!?」

声が裏返るほど叫んだ瞬間、通りがかった人々が驚いたようにこちらを振り向いた。


(やばい……! ここ、人いる!?)


だが、ひまりは次の瞬間、もっと衝撃的なものを目にすることになる。


視界に入ったのは――

耳や尻尾が生えた人たち。


「えっ……?」


目の前を歩いている女性は、茶色の獣耳をピクピクと動かしながら、大きな籠を背負っている。

その隣を歩く子どもは、銀色のふわふわした尻尾を揺らしながら、楽しそうに駆けていた。


(……待って。え? え??)


彼女は目を疑い、もう一度、周りを見回す。

だが、どこを見ても、そこにいるのは獣耳と尻尾を持った人々ばかりだった。


(どういうこと!? ここって……まさか、異世界!?)


信じられない。いや、信じたくない。

これは夢か、それとも現実か。


頭が混乱する中、突然、ひまりの脳内に明るく響く声が飛び込んできた。


『ごめんなさぁぁぁぁい!!!!!』


「えっ!? 誰!?」


突如として、目の前に光の粒子が集まり、キラキラと輝く何かが現れた。

よく見ると、それはふわふわした白髪に小さな羽根が生えた、小柄な女性の姿だった。


目はまんまるでウルウルしており、両手をバタバタと振りながら、必死に謝っている。


『本当に申し訳ありません!! 手違いであなたを異世界に転生させちゃいましたぁぁぁ!!』


「……へ?」

事態が理解できず、ひまりは思わず首をかしげる。


「えっと……手違いって、どういうことですか?」


『あぁぁぁ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!! まさか、本当にこんなことになるなんてぇぇぇ!!!』


神様は、今にも涙を流しそうなほど慌てふためき、両手で自分の頭を抱えながらその場でぐるぐると回り始めた。


『あぁもう!! 上の神様にバレたら私、消される……!! どうしよう、どうしよう!?』


(……この神様、大丈夫なのかな……?)

ひまりは、自分が異世界に飛ばされているという大事実よりも、目の前の神様のポンコツぶりが気になって仕方なかった。


「えっと……そんなに慌てなくても、大丈夫ですよ?」

ひまりは、困惑しつつもついニコニコと微笑んでしまう。


すると、神様は目をぱちくりとさせた後、

『え……? 怒らないんですか……!?』


「え? まぁ、ちょっと驚いたけど……」

ひまりはポリポリと頬をかきながら、少し考えた。

「えーと、転生ってことは……もう日本には帰れないんですよね?」


『そ、それが……そうなんですぅ……!!』


「そっかぁ……うーん……」

ひまりは、一瞬だけ寂しそうな表情を浮かべたが、すぐに気を取り直してにっこりと笑った。

「ま、いっか! 異世界なんて、ちょっとワクワクするし!」


『えぇぇぇぇぇっ!?』

今度は神様が驚いて目を丸くする番だった。


「ほら、私ってあんまり特別なこととかない、普通の女子高生だったし……こうなったのも運命かもしれませんね!」


『す、すごい……!! ふつう、もっと怒ったり絶望したりするはずなのに……!!』

神様は驚きのあまり、空中でプルプルと震えている。


「まあ……どうせなら楽しくやってみようかなって!」

「それに、神様がそんなに困ってるなら、私が怒ってもしょうがないし!」


ひまりの言葉に、神様はぽかんと口を開けた。

しかし、その表情はすぐにウルウルと感動したようなものへと変わり――


『うぅぅ……ひまりさん……あなた、なんていい人なんですかぁぁぁ!!!』

そう言うなり、神様はぼふっと光の塊になって飛びついてきた。


「えぇっ!? ちょ、ちょっと!?」


『ごめんなさい! そして、ありがとう!! もう全力であなたを応援します!!』


「お、応援って……?」


『とりあえず、転生の補償として“何か特別な力”をあげますね!!』


「えっ、いいんですか?」


『もちろんです!! 本来ならこんな補償できないんですが……!! もう、秘密でやっちゃいます!!』

神様は、ぱぁぁっと明るい笑顔を浮かべ、ひまりの頭上で指をくるくると回す。



すると――

ひまりの体が、ふわっと温かい光に包まれた。


『あなたに“発明したものを実体化できる力”を授けます!』


「えっ、発明?」


『はい! ひまりさんが考えたものを、この世界の魔法の力で形にできるようにしました!!』


「えぇ……それって、めちゃくちゃすごくないですか?」


『すごいですよ!! でも、考えたものを勝手に出せるわけじゃなくて、ちゃんと設計したり、試行錯誤しないと実体化できません!!』


「へぇ~……つまり、工夫次第でいろいろなものが作れるってことですね!」


『そうですそうです!!』


ひまりは少し考えた後、うんうんと頷く。

「……なんか、面白そうですね!」


『ひまりさん、本当に肝が据わってる……!!』

神様は感動の涙を流しながら、感謝の気持ちを込めてキラキラとした光の粒をひまりの体に降らせた。

『では、ひまりさん!! どうか、この異世界で楽しく生きてくださいね!!』


「はい! なんとか頑張ってみます!」

ひまりが笑顔で返事をした瞬間――


──ズズンッ!!


突然、神様の姿が光の渦に飲み込まれた。

『あっヤバい、上の神様にバレたかも!! じゃあひまりさん!! 本当に頑張ってくださいねーー!! さらばぁぁぁ!!』


「えぇぇ!? ちょっと、最後バタバタしすぎじゃ……!」


次の瞬間、光が弾けるように消え、神様は完全に姿を消してしまった。

ぽつんと草原に取り残されたひまりは、しばらく状況を整理しようと考えた。


(えーっと……まとめると)


(私は神様のミスで異世界に転生して)

(お詫びとして発明を実体化する力をもらって)

(神様は最後、何かにバレてどっかに消えた……)


「…………うん、よくわかんないけど、まあいっか!」

彼女は、のんびりと伸びをしながら、目の前に広がる異世界の風景を見つめた。


(せっかくだし、この世界で楽しくやってみよう!)


こうして、ひまりの異世界生活は――

予想外の形で幕を開けたのだった。


2. 辺境の村での新生活

1. 猫耳族の村「リューク村」


――それから数日後。


「さて、ここがアンタの新しい家だよ」

そう言ってひまりを案内したのは、エルダという老猫耳族の女性だった。



エルダは、この村のまとめ役であり、村人たちからも頼りにされている人物らしい。

長い白髪に、ピンと立った猫耳、背中にはふさふさの尻尾を揺らしながら、歩く姿にはどこか威厳があった。


ひまりが身を寄せることになったのは、リューク村という小さな村だった。

村には木造の家々が並び、細い砂利道が通っている。



どこか昔のヨーロッパの田舎町のような雰囲気があり、遠くには広大な草原や森が広がっていた。


(すごい……まるでファンタジーの世界みたい)


だが、その幻想的な雰囲気とは裏腹に、村の様子はどこか寂れていた。

家々の屋根には所々穴が空き、道を歩く村人たちの服もどこかくたびれている。

子供たちは元気に走り回っているが、その体はどこか痩せているように見えた。


「ここは王国の辺境にある小さな村さね。アンタ、何も持っていないようだったから、しばらくここで暮らしていいよ」


エルダの言葉に、ひまりは思わず涙が出そうになった。


「……あ、ありがとうございます!」

(私、異世界に来て、どうなるかと思ったけど……この村の人たちは、みんな優しい)


だが、すぐに彼女は気づくことになる。

この村がとんでもなく貧しい状況にあるということに――。


2. 村の現状――深刻な食糧問題


ひまりは、エルダの家に滞在しながら村の様子を観察していた。

そして、わずか数日で、この村が抱える問題を痛感することになる。


・食糧不足(特に冬が厳しい)

・農作業が非効率で収穫量が少ない

・保存技術が低く、腐敗が早い


(えっ……これ、めちゃくちゃヤバい状況じゃん……)


ひまりは、エルダに連れられて村の倉庫を見せてもらった。

そこには、わずかに残った干し肉と小麦粉、そして数個の乾燥野菜が並んでいた。


「今年は夏が暑すぎて、作物があまり取れなかったんだよ……」


エルダがため息混じりに言う。


「冬になる前に、もっと食べ物を蓄えないとね。でもまあ、うちの村はまだマシな方さ。隣の村なんて、もう食糧を分けてもらいに来てるくらいだからねぇ」


ひまりは思わず唾を飲み込んだ。


(……つまり、今はギリギリ生活できてるけど、このままだと冬に食べるものがなくなるってこと?)


さらに、畑を見に行ってみると、作物の育ちが悪いことにも気づいた。

土は乾燥し、作物は細く弱々しい。


村の人々は必死に農作業をしているが、耕し方も水やりの方法も、現代の農業技術から見るとかなり非効率だった。


「これは……ちょっとした食糧危機レベルでは?」


もちろん、魔法がある世界なので「水魔法」を使って畑に水を撒くことはできる。

しかし、魔力が少ない村人は限られた量しか水を撒けず、農業に魔法を活かすことはほとんどできていなかった。


(魔法があっても、生活が劇的に便利になるわけじゃないんだ……)


魔法に頼りすぎて、逆に「技術」が発展していないことに、ひまりは衝撃を受けた。


3. ひまりの決意――発明で村を救う!


村の状況を知れば知るほど、ひまりの心には焦りが募る。


(このままじゃ、この村の人たちは冬を乗り越えられないかもしれない)

(でも、私には戦う力もないし、魔法だって普通レベル……)


「……自分にできることなんて、何もないよね……」


落ち込むひまりだったが、その時、ふと自分が持っている「ある能力」を思い出した。


『発明したものを実体化できる能力』


「……あっ!!!♡」

ひまりの脳裏に、あるアイデアが浮かんだ。


(そうだ、私、元の世界では特別な才能なんてなかったけど、ちゃんと勉強はしてきた。)

(科学とか技術とか、そういう知識なら少しは覚えてる!)

(魔法があるこの世界なら、現実じゃ無理なものも作れるかもしれない……!)


村の畑を眺めながら、ひまりは拳をぎゅっと握りしめた。


「……よし、まずは食糧問題の解決から始めよう!」


魔法を使った「魔法式かまど」や「氷魔法式冷蔵庫」、「魔導水車」など――

この世界にはない技術を、彼女の知識と発明の力で作ることができるかもしれない。


(もしかしたら、私にもこの世界で生きていく意味があるのかもしれない)

新たな決意を胸に、ひまりは「発明家」としての一歩を踏み出すことを決意した。


3. 初めての発明!

1. 魔法式かまどの発明


「火を安定させるかまど……か」

ひまりは村のかまどをじっくりと観察しながら、どう改良するかを考えた。


現状のかまどの問題点:

* 火力が不安定で、料理が焦げる

* 薪を大量に消費するため、燃料不足になりやすい

* 火をつけるのに時間がかかる


(火魔法があるなら、それを利用できないかな?)

ひまりはまず、大工や鍛冶屋を集めて相談した。


「薪なしで火がつくかまどを作りたいんです!」


「薪なしで……? そんなこと、本当にできるのか?」

「そもそも、どうやって火をつけるつもりだ?」


「火魔法を込めた魔力石をかまどに組み込めば、炎を安定させられるんじゃないかと思うんです!」


鍛冶屋のゴルドが腕を組んでうなる。

彼はガッチリした体格の中年男性で、村の道具作りを一手に引き受ける職人だった。


「ほう……だが、火魔法を持つ者が常に魔力を供給しないといけないんじゃないのか?」


「それが問題なんですよね。でも、魔力石は魔力を溜めておけるから、ある程度の時間は自動で燃えてくれるはずです!」


「なるほど……だが、普通の魔力石は火をつけても短時間しか持たんぞ?」


「だから、魔力石を加工して、『持続的に燃える仕組み』を作ります!」


ひまりは、魔力石を魔法陣に組み込んで「制御装置」を作ることを提案した。

魔力石の出力を安定させ、少しずつ魔力を放出することで、長時間燃え続けるようにするのだ。


「なるほど……やってみる価値はあるな!」


村の鍛冶屋たちが協力し、ひまりの設計図を元に試作を開始することになった。


かまどの試作品1号:燃えすぎて爆発寸前

試作1号が完成し、火を灯してみると――


「ゴオォォォッ!!」

かまどから、まるで火山の噴火のような炎が噴き出した。

「ぎゃあああ!? 火が強すぎる!!」

「おいおいおい!! 村ごと焼けるぞ!!」


(やばっ!! 魔力出力を強くしすぎた!?)

ひまりは慌てて魔力石を抜き取る。


かまどの試作品2号:火がつかない

次に、魔力石の出力を抑えて作り直す。


「……ポフッ(小さな炎)」


「えっ、今度は逆に火が弱すぎる!?」

「これじゃあ、豆一粒も煮えねぇぞ!」


(む、難しい……! 火加減を絶妙に調整する仕組みが必要か……!)


試作3号:ついに完成!

試作を重ねた結果、ひまりは魔力石の出力をダイヤル式で調整できる機構を作ることにした。

ダイヤルを回すことで、火力を「弱・中・強」と調整できるようにしたのだ。


試作3号が完成し、再び火を灯してみる。


「ボッ……!」


かまどの中で、魔力石が青白い光を放ち、静かに燃え始めた。

ダイヤルを回すと、炎がメラメラと強くなる。


「こ、これは……!!」

「火が安定してる!!」


試しに鍋を火にかけると、底が焦げることなく、スムーズに温まっていく。


「す、すごい! 火の大きさが自由に変えられるぞ!」

「薪を使わずに火がつくなんて……夢みてぇだ!!」


村人たちは目を輝かせながら歓声を上げた。


2. 氷魔法式冷蔵庫の発明

かまどの成功により、村の料理が一気に改善された。



しかし、次に村人たちから出た要望は、「食べ物を長持ちさせる方法」だった。


「せっかく狩りで獲ってきた肉も、数日で腐っちまうしなぁ……」

「特に夏場は、すぐに虫が湧くんだ」


(そうか……この世界には冷蔵庫がないんだ……!)


ひまりは、氷魔法を使える村人と協力して、「氷魔法式冷蔵庫」の開発に取り組んだ。


試作1号:ただの氷箱

ひまりは、氷魔法を使う村人に氷を作ってもらい、それを木箱に入れてみた。


「よし、これで冷やせるはず!」


しかし、数時間後――

「……溶けてる!!?」

(しまった! ただの氷じゃ持続しないんだった!)


試作2号:魔力石を使った冷却装置

「魔力石に氷魔法を込めれば、ずっと冷やせるかも?」


ひまりは、氷魔法を持つ村人たちに魔力石へ魔法を込めてもらい、それを木箱の底に設置した。

さらに、木箱の内側に特殊な「魔法反射布」を張り、冷気が逃げにくい構造にした。


数時間後――

「おおっ!? まだ冷たい!!」

「肉が全然腐ってねぇぞ!」


試作品2号は、大成功だった!!


3. 発明家ひまり、村の救世主となる!?

こうして、ひまりの発明は村の人々を驚かせ、「神の使い」とまで称されるようになってしまう。


「ひまり様、次は何を発明するんですか!?」

「ど、どんな魔法の技術を持っているんですか!?」


(だから、ただの普通の女子高生なんだけど!?)


こうして、ひまりの発明が徐々に村を変えていくのだった――。


4. 予期せぬ影響、そして運命の歯車が動き出す!

1. 村の発展と広がる噂

リューク村が、少しずつ変わり始めていた。


「魔法式かまど」 のおかげで、薪の消費が激減し、料理の効率が飛躍的に向上。

さらに、「氷魔法式冷蔵庫」 によって、保存できる食糧が増えたことで、村人たちの生活は明らかに豊かになっていた。


──ある晴れた日の朝。

村の広場では、数人の女性たちが集まり、楽しそうに話していた。


「聞いた!? うちの料理、最近ぜんぜん焦げなくなったのよ!」

「うんうん! 火力が安定してるし、パンもふわふわに焼けるようになったわ!」

「それに、冷蔵庫があるから肉も長持ちするし、すごく助かるわよね~!」


広場では、焼き立てのパンの甘い香りが漂い、村人たちはどこか余裕のある表情を見せていた。

それもこれも、すべてひまりの発明のおかげだった。


しかし――

「すごい発明をする子がいるって、王都の商人たちも噂してたわよ」

「えっ、本当に?」

「ええ、商人のグラッツさんが言ってたわ。『リューク村の発明家を探している人がいる』って」


この村で生まれた発明が、知らぬ間に王都へと広がりつつあった のだった。


2. 王都での噂と、王様の捜索命令

王都・セリオール

リューク村から南へ約十日ほど歩いた場所にある、王都・セリオール。


王都は巨大な石造りの城壁に囲まれ、内部には整然とした石畳の道が広がっている。

市場には色とりどりの果物や布地が並び、商人たちが元気よく声を張り上げていた。


そんな王都のとある高級な酒場――「黄金の獅子亭」。


「……聞いたか? 辺境の村で、革新的な発明をした天才がいるらしい」

金髪の若い商人が、ワインを片手に仲間へと囁く。


「ええ、聞きましたとも。『火を自由に操れるかまど』や、『氷の魔法を封じ込めた保存庫』 を作ったとか」



「まさか……魔導技術をここまで実用化するとは……いったい何者なんだ?」



「わからん。ただ、その発明者を探している貴族や学者もいるらしい」


噂は、すでに王都の上層部にも届いていた。


そして――


「……面白い。すぐに捜索命令を出せ!」

王城の玉座に座る、エルンスト・グラウヴァルト王 は、興味深げに頷いた。


彼は、まだ三十代半ばの王でありながら、冷静で聡明な政治手腕を持つ人物だった。

鋭い灰色の瞳が、面白いものを見つけたかのように輝く。


「ここ最近、隣国との緊張も高まっている……。もしこの発明が軍事技術にも応用できるなら、王国にとって大きな力となる。」


「調査隊を派遣し、すぐに発明者を見つけ出せ!王都に招待し、爵位を与える用意をせよ!」

こうして、王国全土に「発明家を探せ!」 という命令が下されたのだった――。


3. ひまり、何も知らずにのんびり過ごす

そんなことが起こっているとはつゆ知らず、ひまりは相変わらず村でのんびりと過ごしていた。


「今日はパンがふわふわに焼けたんですよ~!」

「ひまり様! おかげでうちの畑も豊作です!」

「おー、よかったよかった!」


(うんうん、いい感じだ!)


彼女は、自分が王国中で探されている などとは夢にも思わず、のほほんとした笑顔を浮かべていた。


しかし――


「発明家を探している役人たちが王都から派遣されているらしい」

そんな情報が村に入ってきたのは、それから数日後のことだった。


4. ついに村へ捜索隊が到着!

ある朝、村の入り口に数名の役人と騎士たちが姿を現した。


「ここはリューク村か?」

先頭に立つ役人が、鋭い目つきで村人たちを見回す。

彼の後ろには、しっかりと鎧を身にまとった騎士たちが数名並んでいた。


村人たちは緊張しながら、ゆっくりと頷く。


「そうですが……な、何か御用でしょうか?」


「王国の命令により、この村にいる発明家を探している。該当する者をすぐに引き渡せ!」


村人たちは、一斉にひまりの方を見た。


「えっ?」

ひまりは、突然の視線にポカンとする。


(……えっ? 発明家って……私のこと!? いやいや、そんなわけないよね!?)


彼女は思わず、村人たちに尋ねた。

「あの……すごい発明家って、誰なんですか?」


「お前だよ!!」


「へっ!? 私!?」


ひまりは、目を丸くして慌てて首を振る。

「ちょ、ちょっと待ってください! 私、ただの村の子ですよ!?」


「ふざけるな!!」

眼鏡の役人はバシンッと手にした書類をはたき、鼻息荒くまくしたてた。

「この村で『魔法式かまど』と『氷魔法式冷蔵庫』を作ったのは貴様だろう!!」


「えっ、あぁ……はい、まあ、作りましたけど……?」


「ならば貴様が発明家だろうがぁぁ!!!」


「えぇぇぇ!? いやいや、ちょっと工夫しただけで、そんな大したことじゃないですよ!?」


「それを『発明』って言うんだよ!!」


「そ、そんな……!?」


~ひまりの脳内~

(えぇぇぇ……でも、私、そんなすごいことしてるつもりなかったし……)

(それに、すごい発明家って言うから、もっとおじいちゃん学者みたいな人を探してるのかと……)


~役人の脳内~

(なんだこの娘!? なんで自覚がないんだ!?)

(発明品を作ったのに「発明家じゃない」とか、意味がわからん……!)


5.役人 vs. 天然ひまり、壮絶な攻防戦!

「とにかく! 我々は王命により、貴様を王都へと連れて行く!!」


「えぇぇ!? いや、ちょっと待ってください!」

ひまりはあわてて手をブンブン振る。


「そもそも、私なんかを王都に連れて行ってどうするんですか?」


「決まっている! 王様が直々にお前を召し抱え、爵位を与えるのだ!!」


「えぇぇ!? そんな大げさな!?」


「当然だろうが!!」

役人は、書類をビシィッと指差す。


「王都では、貴様の発明がとてつもない影響を与えているのだ! すでに王宮の厨房でも『魔法式かまど』が使われ、貴族たちの間では『氷魔法式冷蔵庫』の争奪戦が起きている!!」


「へぇ~! そんなに広まってたんですね!」


「そうだ!!」


「でも……私、王都なんか行ったことないんですけど?」


「なにぃ!?」

役人は ガタッ!! と立ち上がり、思わずよろけた。


「ば、馬鹿な!! 貴様はこの技術をどこで学んだのだ!? 誰かに師事したのか!? それとも、どこかの研究機関にいたのか!?」


「えーと……ただの思いつき?」


「思いつきで魔法工学の常識を覆せるかぁぁぁ!!」


「えぇぇ!? でも、本当にそうなんですよ!」

ひまりが困惑している横で、村人たちは苦笑いしながらうなずいた。


「いや、役人さん……本当にこの子、思いつきで作っただけなんですよ」

「特に誰かに教わったわけじゃなく、ある日突然『これ作ろう!』って言い出して」

「そのへんにあった材料と魔法を組み合わせて、あっという間に完成させちゃったんです」


「そ、そんな馬鹿な……!」


役人は頭を抱えた。

「貴様、何者なのだ!? 本当にただの村人なのか!?」


「えっと……普通の女子高生だったんですけど……?」


「女子高生ってなんだ!? 貴族の称号か!?」


「え? いや、えーと……あの……」

(あれ……なんかどんどん話がややこしくなってる気がする……??)


騎士たちも、もはや苦笑いしながら事態を見守っていた。

「おい……こいつ、本当にただの天然じゃないか?」

「王都に連れて帰るどころか、話を理解してもらうのも大変そうだぞ……」

「どうする? このままだと、ただのすれ違い劇になりそうなんだが……」

「……もう、今日は帰るか?」

「いやいやいや、諦めるの早い!!!」

役人のツッコミが、村中に響き渡った。


6.ついに決定! 「もういい……」

その後も、ひまりは「普通に生活してただけ」「なんか便利になればいいな~と思っただけ」と、自覚のない発言を繰り返した。


結果――

ルドルフ「……もういい、帰るぞ」


「えっ!? 諦めるの!?」


「話にならん……この娘、天然すぎて捕獲不能だ……!!」


村人たちは、苦笑しながら役人たちを見送る。


(……これで大丈夫かな?)

ひまりはホッと胸を撫でおろした。


だが――

この事件は、王都に大きな混乱を引き起こすことになる。


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