ブラックサンタ
海外にはブラックサンタという黒い格好をしたサンタが存在する。プレゼントを届ける普通のサンタとは違って、ブラックサンタは悪い子を懲らしめる。
僕はクリスマスの夜、近所の公園で遊んでいた。門限はとっくに過ぎていたけれど、いつものことだから特には気にしていなかった。一緒にいた友達が帰ると言い出したので、僕も帰ろうと自転車に跨った。忘れ物がないか、周りを見回すとブランコに黒い人影があった。
よくよく見ると黒いサンタの格好をした大人がそこにはいた。僕は少し怖くなってすぐに帰ろうとしたが、前を向き直った瞬間、目の前にブラックサンタが現れた。
「うわ!!」
僕は驚きのあまり自転車から落ちて、尻もちをついた。そして、助けを呼ぼうと友達の姿を探したが、もう帰ってしまったのか公園にはもういない様子だった。
「こんな遅くまで遊んでいたらだめだろう、早く家に帰りなさい」
「はい、、帰ります」
僕は立ち上がって帰ろうとしたが、突然ブラックサンタは僕の両腕を掴んできた。
「早く家に帰りなさい」
「帰るから離してよ、、!」
「早く家に帰りなさい」
僕は怖くなってすぐに助けを呼ぼうとした。
「誰かーー!!助けて!」
「早く家に帰りなさい」
僕はもう怖くて泣き出す寸前だった。こんなことだったら、門限の前に帰るんだった、、それでも、僕はどうにかして家に帰らねばと思い、必死に頭を回転させた。どうすれば逃げられる、、?腕はしっかり掴まれて動かなかったが、足は使うことができることに気づいた。
「早く家に、、、」
僕は一瞬の隙を突いて、ブラックサンタのすねを思いっきり蹴り上げた。すると、ブラックサンタは掴んでいた腕を離して、すねを押さえながら地面に転げ回った。僕はすぐに自転車を起こして、公園から脱出することに成功した。
僕は自転車を漕ぎながら家に帰るまで、ほとんど泣きそうだった。お母さんの顔が早く見たい。そして、やっとのことで家までたどり着いた。家のチャイムを押すと、聞き慣れた声とともに母親が家のドアを開けた。しかし家に入ると、そこには鬼の形相をしたお母さんがいた。
「うわぁ!!」
「早く帰ってきなさいっていつも行ってるでしょ!もう、今日は許さないからね!」
それから僕は小一時間みっちりと説教を受けた。でも、ブラックサンタに詰め寄られるよりかは100倍ましだった。僕は終始泣いていたが、怖いというよりも家に帰って来れた安心の方が大きかった。
そしてやっとのことで、説教が終わり自分の部屋に戻った。一息ついて涙を拭い、勉強机を見るとそこには「ブラックサンダー」がひとつ置いてあった。僕はお腹が空いていたのでそれをすぐに開けて食べきった。
食べ終わった後、ふと包装の裏面を見ると、マジックでこう書かれていた。
「ブラックサンタより」