第九話 これからのこと
エナに出会った海斗とクシアは彼女が働いている酒場に案内されていた、立ち止まると彼らの視線の先には程よい大きさの建物が建っており小さく開いた扉から明るい光が見えている
海斗「ここがエナの働く酒場?にしても静かな感じがする……」
エナ「………ただいま帰ったよー」
海斗の発言を聞いたエナはぎこちない表情を浮かべて扉を開ける
中に入ると明るいランプのようなものを囲むようにして椅子とテーブルが並んでいるのが見えそれと同時にお肉のジューシーな匂いが漂ってくる
?「遅いよエナ姉ちゃん」
食欲を掻き立てる良い匂いと同時に声が聞こえ二人の小さな男女が降りてきてエナに声をかけてくる
エナ「ゴメンね ちょっと色々あって」
?「変な奴らに絡まれてたんでしょ?皆心配してたわよ……でそいつら誰なの」
小学生くらいの男女の他に目を凝らして見てみると手の平サイズの人間が宙に浮いて話しており海斗はそれを見つめる
?「なにコイツ……分かった!!コイツらに襲われて返り討ちにしたんでしょ 氷漬けにして明日ギルドに引き渡そうよ」
物騒な発言をする奴にエナは慌てて否定をして何があったのかを三人に説明する
エナが全て話終わると三人は海斗に向かって頭を下げてお礼を言って自己紹介をする
?「俺の名前はニコスっていうんだ よろしく!!」
?「私の名前はミリアです……」
?「私はアスフェア 見ての通り妖精よ」
元気な少年のニコス 物静かでしっかりしてそうなミリア そして見た事ない種族のアスフェアに海斗も挨拶をしようとするが
エナ「疲れがまだ取れてないね……」
アスフェア「こいつ何者なの?」
さっきまでは元気に話していたが今になって溜まった疲れが来て二人とも安全な場所に来て安心したのか糸が切れたように眠ってしまう
――――
――どれくらいの時間眠ったのだろうか気が付くと海斗は個室のベットの上で目を覚ます
辺りを見回すと妖精のアスフェアが興味津々にこちらを見つめていたので海斗は「あんたは妖精の……」と話しかける
アスフェア「……私はアスフェアって言ったでしょ 覚えなさいよ それであんたの名前は?」
海斗「なんかゴメン……俺の名前はカイトっていうんだ」
初対面なのに叱られてしまった海斗は反射的に謝り自己紹介をする、名前を聞いたアスフェアは黙り込んでしまったやはり名前が珍しいのだろうか?
アスフェア「まあいいわ……とにかく皆を呼んでくるわね」
そう言い残しアスフェアは部屋から出ていってしばらくした後にニコス、ミリア、エナ、クシアの四人が部屋に入って来る
四人は店で業務をやっていたのか服に油汚れがついておりクシアはずっと寝ていたのが申し訳なかったのか酒場の手伝いを自分からやっていたみたいである
エナ「クシアさんの接客はとても素敵でしたよ」
ニコス「客からの評判も良かったもんね」
ミリア「とても助かりました」
知らない間に酒場の従業員に褒められる程仲良くなったクシアはとても嬉しそうにしており天使という遠い存在よりも身近な人間のようで親近感がある
?「こやつがエナを助けてくれたやつなのか?」
低い声がする方を向くと体格の大きな男が四人の後ろに立っておりこちらを見つめている
海斗がおっさんに話しかけようとするとクシアが遮るように抱きついてきて小声で
クシア「海斗様 分かってらっしゃると思いますが私達の正体を教える訳にはいかないので今の海斗様と私は兄弟ということにしていますので上手く話を合わせて下さい」
海斗「そうですか……それでクシアさんが姉ですか?」
クシア「一応そういう設定にしてます……」
勝手に設定を追加されてしまい戸惑ってしまうが何とか話しを合わせるしかない
?「クシアちゃんの弟だったな 今日はエナを助けてくれてありがとうな」
大男が再び声をかけてきたので海斗はゆっくりと頷いて大男に名前を名前を尋ねる
?「自己紹介がまだだったな 俺の名前はフラガでここの酒場のマスターをしているんだ よろしくな」
見た目に反して丁寧な言葉遣いにギャップを感じるが海斗も返すように自己紹介をする
ミリア「カイトっていうの?」
ニコス「カイトお兄ちゃん!! これからよろしく」
海斗「……あぁ よろしく (そういや名前を教えてなかったな……)」
フラガ「カイトっていうのか……それにしても二人ともそんなにボロボロの状態で何があったんだ?」
フラガの言葉を聞いた酒場の従業員は頷いており海斗とクシアに興味津々のようだ
海斗はどう答えれば良いのか分からずに黙ってクシアに全て任せることにした
クシア「えっと……あの例の組織の争いに巻き込まれてしまいまして……」
海斗「(おいおい大丈夫か てか例の組織ってなんだよ)」
クシアが若干ぎこちない答え方をしたので怪しまれてしまうのではないかと思うが
フラガ「あの組織か……それは気の毒だったな」
曖昧な言葉だが何やら本当に実在する組織のようでフラガはそれを知っているのか悲しそうにこちらに同情する
ニコス「あいつらなんか居なくなってしまえばいいのに……」
ミリア「そうだね……あんな奴ら嫌い」
子供の二人もその組織の悪口を言ってるので悪い奴らなのだろうということは予想できる
アスフェア「でもそいつらをやっつけるために異世界から勇者っていう存在を王宮が召喚したって噂を聞いたわよ?」
しかしアスフェアの言葉を聞いた二人は顔を合わせ驚いた表情で見つめ合う エナはこの瞬間を見て色々と思うことがあったが深くは追求しないことにした
クシア「そっ…そうなんですね その人達にはやく倒してもらいたいものです」
クシアに同情するように頷いてその場はやり過ごしその後に色んな話をした後に海斗とクシアを除いた全員が寝るために部屋からでていき今は寝室に二人きりになっていた
海斗「クシアさん 何とかなったかもしれませんけど……」
クシア「そうですね……騙しているようで悪いですがしばらくここにお世話になる方が良いかと」
海斗「ですね……皆良い人達で良かったです この人達なら正体をバラしてもいいのでは?」
クシア「いえ……それは辞めておいた方が良いかと まだ公にいないはずの存在なので」
戦いに関する授業以外を聞いていなかった海斗はクシアの提案にただうなづいて納得するしかなくフラガが貸してくれた部屋のベットの上で二人は今後のことについて話していた……それをエナはこっそりと聞き耳を立てて聞いており
エナ「やっぱりそうだったんだ……」
エナは小声でそう呟いて自分の部屋へと戻っていく……正体を隠すつもりが早速一人の女の子にバレてしまったが果たして二人はこれからどうなってしまうのか