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第八十二話 出発


 ちょうど良いタイミングでマールが現れてしまい真剣勝負が中断されてしまったのでサフィアは不服そうな顔を浮かべている


 サフィア「命拾いしたな」


 海斗「訓練じゃなかったのか?」


 サフィア「常に死ぬ気でやらなければ訓練の意味がないだろう」


 海斗「それもそうだよな、でもあんたすごく強いな」


 サフィア「貴様も思ったよりかはやるようだ」


 海斗「にしてもあんたは見かけによらず好戦的なんだなもっと誠実な人かと思ってたよ」


 サフィア「人聞きの悪いことを言うな 王女様をお守りする使命があるからだ」


 海斗「……気持ちは分かったけどたまには休める時には休まないといざという時に力がでなくなるぞ」


 サフィア「まあ良い そこそこ楽しめたからよしとする」


 海斗「なら良かったよ」


 マール「海斗、貴方はベルから念入りに休むように言われたのではないのかしら?」


 無視して話している事に苛立ちを覚えたマールは圧のある言い方で海斗に詰め寄っていく


 海斗「いや……だってこのサフィアって人が訓練したいからって」


 マール「人のせいにするのは良くないわね どうせ貴方が余計な事を……」


 ベル「いいえマール様、海斗の言うことは本当ですよ」


 話に入り込んできたベルの言葉を聞いたマールは驚きの表情を浮かべて海斗を見つめている


 マール「……貴方が言うのならそう信じましょう、私はてっきり海斗が余計な事をしてそこの騎士とトラブルを起こしたと思ってしまったから」


 ベル「サフィアも相変わらず色んな奴に勝負を挑んでいるようですから」


 海斗「そう言えばベルさんと一緒にいたって言ってたよな? どっちが強かったの?」


 サフィア「そうね、コランダとの勝負はまだ私が勝ち越しているわ」


 ベル「今はベルと言ったはずよ そういう事にしといてあげるわ」


 サフィア「へー 昔みたいに突っかかってはこないのね」


 ベル「色々あったからね、それよりも海斗いくらサフィアが突っかかってきたとしても休めと言われたら素直に休みなさい」


 海斗「分かりました 気を付けます」


 ベル「よろしい それと貴方達は準備ができたから来てもらうわよ」


 ベルの指示に全員が返事をしてついていこうとするがサフィアが不服そうな声でベルを呼び止める


 サフィア「ちょっと待ちなさいコランダ!!」


 ベル「……」


 サフィア「いや……ベルだったわね」


 ベル「何のようかしら?」


 サフィア「今から私と勝負しなさい!!決着をつけるわ」


 ベル「さっきも言ったけど今はそんな暇は無いの」


 サフィア「またあの時のように逃げるつもりなの!!」


 ベル「……」


 サフィア「何か言いなさいよ!!」


 険悪なムードの中なのだがカネリア王女が止めに入る


 カネリア「サフィア 落ち着いて、色々と言いたい事もあるかもしれないけどベルにも事情があったのよ」


 サフィア「……すみません」


 カネリア「ベルもサフィアを悪く思わないで、私は二人が喧嘩しているのを見たくないから」


 ベル「カネリア王女……申し訳ございません 深いところまではお話しできませんが後で時間があればお教えします」


 カネリア「分かりました、しかし随分と言葉使いが丁寧になったみたいですね」


 ベル「私も一応使えてる身ですので」


 カネリア「そうね、真面目な貴方らしくて安心しました」


 王女はベルに微笑みかけており嬉しそうにしている


 サフィア「それで 後からなら私と勝負を……」


 またもや突っかかってくるサフィアに今度はルビーが宥めるようにしてサフィアを抑える


 ルビー「もーう 貴方はコランダ……じゃなくてベルの事になると熱くなっちゃうんだから」


 ベル「ルビーも相変わらずで安心したわ」


 ルビー「貴方も随分変わったのは私にも分かるわー、元気に上手くやってるならそれが一番よー」


 ベル「そうね」


 ルビー「本当はこの子も会えて嬉しいはずなのに素直じゃないんだから……」


 サフィア「余計な事を言うな」


 ベル「前は情熱的だったルビーこそ今となっては落ち着いたきたんじゃないかしら」


 ルビー「あらあらそうかしらー?まだまだ私は情熱的よー それこそ貴方とサフィアと初めて出会った時は……」


 ベル「その話は後にしましょうか……」


 ルビー「私は別に良いのにー」


 マール(ベルもあんな感じで話したりもするのね)


 普段の行動からは考えられないようなベルにマールは驚いていたが今はそんな事をしている暇は無いと気がつく


 マール「とにかく海斗達は関係ないからさっさと向こうに行くわよ!!」


 ベルに変わってマールが海斗達を先導しカネリアやルビーは海斗達に対して頭を下げていた


 エナ「海斗!大丈夫だったの?怪我は?」


 海斗「問題ないよ あっちもまだ本当の全力をだしてはなさそうだったから」


 エナ「そう……なら良かった」


 海斗「それにしてもベルさんってあの人達とどんな関係があるのかな?」


 エナ「私も聞いた事ないし気になるかも」


 マール「それは後になったら分かると思うわ そんな事よりもこれからの事に集中してもらわないと」


 マールの足が止まると目の前には車輪が四つ付いている馬車のようなものがある


 斉藤「成る程 これで移動するのですね」


 工藤、エナ、海斗以外の全員は馬車のようなものに夢中になり乗り込んだりして感想を言ったりしている


 マール「そーよ これで貴方達はビスト王国に行ってもらうわよ」


 エナ「でも馬車じゃなかったんですよね?」


 マール「そうね……これは馬車じゃなくて人力車と言ったところかしら」


 工藤「人力って一体誰が……あっ」


 海斗「まさかとは思うが俺が引く……のか?」


 マール「だって馬よりもあんたの方が早いから」

 

 海斗「だから念入りに休めと言ってた訳か……それよりももっとマシな方法は無かったのかよ」


 マール「これしか思いつかなかったのよ けどルーゼは修行になるし良いんじゃないと言ってたわよ」


 海斗「……分かったよ」


 エナ「海斗……本当に大丈夫なの?」


 海斗「エナや工藤に引っ張らせるわけにもいかないからね、もし疲れたりしたらフェンリルに変わって貰うよ」


 工藤「大丈夫 私も魔法で補助するから心配しないで」


 エナ「私もできる事があるなら手伝うから」


 海斗「ありがとう」


 マール「今から斉藤って子に向こうに着いたらするべき事を伝えるから話は後で人力車の中で聞いてちょうだい」


 海斗「俺は向こうに着いてから聞けと」


 マール「向こうに着いてからでも問題ないでしょう?後は仲良い人達に別れの挨拶をしてくるように伝えなさい」


 三人とも頷いて人力車の方へと行きマールは斉藤を呼び出して説明を始める


 それまでの間はそれぞれ自由な時間を過ごしておりリナやカリータはシドウやレージュと色んな事を話し海斗はアリスに何故着いてくるのかを聞こうとしていた


 アリス「その事だけどマールお姉ちゃんが向こうに着いてから話した方が良いかもって言ってた」


 海斗「またそれかい」


 アリス「その方が集中できるって言ってた」


 海斗「取り敢えずはあれを引いて全員を送り届けろって事だな」


 アリス「私も手伝うから一緒に頑張ろう海斗お兄ちゃん」


 エナ「アリスちゃんもこれを引っ張るの!?……でもアリスちゃんなら大丈夫か」


 海斗「おー、それなら大分楽になるかもな」


 アリス「多分だけどマールお姉ちゃんにはバレないようにしないといけないと思うの」


 エナ「確かにそうね……」


 海斗「でないと俺が殺される」


 アスフェア「だから外に出て少しの所で休憩してそこから一緒に引いていけばいいんじゃないかしら?」


 エナ「アスフェアの言う通りだね それにフェンリルもいるし何とかなりそうな感じがする」


 アスフェア「三人一緒に引いた方がいいまであるんじゃない?」


 海斗「それは良い考えだ」


 海斗達は楽しそうに秘密の作戦会議をしておりそれぞれが時間を過ごしているうちに斉藤とマールが戻ってきて時間がやってきた


 マール「皆準備は良いかしら? やる事は斉藤に全て伝えたから後は貴方達の頑張りにかかってるわ」


 斉藤「分かりました ビスト王国とジュエリーナの関係を良くできるように頑張ります」


 マール「カネリア王女も「私達も和平に向けて尽力致します」との事らしいから本当に頼んだわよ」


 シドウ「リナとカリータもソルセリ代表として頼んだぞ」


 レージュ「くれぐれも無理はしないようにね エナも気を付けて」


 エナ「はい!!」

 

 カリータ「分かりました」


 リナ「パックにも心配しないように伝えておいて下さい」


 シドウ「そうだな パックとサブナックにそう伝えておこうか」


 カリータ「ちょっと先生!!」


 この言葉とカリータの表情を見た全員は微笑ましく思ったのだがシドウは適当に言ったつもりだったのである


 シドウ(カリータとサブナックはそんな関係だったか? これは余計な事を言ってしまったか)


 斉藤「その手の質問は馬車のなかでたっぷりするとして……マールさんや先生達も新たなソルセリの発展を頑張ってください」


 マール「そうね……お互い大変ですが頑張っていきましょう」


 斉藤「はい!!それでは福田君 出発して下さい」


 海斗「ヒヒーンて言えばいいのか?」


 マール「そういうのいいから早く行きなさい」


 海斗「あんたって人は……そんじゃ行くぞー!!」


 マールに対して色々思いながらも海斗は足に力を入れて人力車を引き中に入っている全員がマールらに手を振りそれに返すようにしてマール達も手を振りかえす


 車輪が回り出すとそれは段々とスピードを上げて見えなくなっていきソルセリから飛び出して緑あふれる草原へと消えて行った


 マール「本当に頼んだわよ」


 シドウ「本当は俺たちも着いて行きたいんだけどな」


 レージュ「あの子達なら大丈夫よ それに私たちはソルセリの復興と色々やる事があるじゃない」


 マール「ジュエリーナとビスト王国……お互い問題を抱えているけれどあの子達を信じましょう そして大変なのは貴方達も同じよ、それは分かってるわね?」


 シドウ「分かってますよ新国王」


 レージュ「私達は私達でやれる事をやりましょう」


 三人共名残り惜しそうにして草原へと消えゆく人力車を見送りこれからの使命を胸に刻み込んで草原から背を向けたのであった

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