第七十七話 古龍の正体
エナ「おはよう……海斗」
時刻は朝の7時で部屋の中に光が差し込んでいる
エナは寝起きの声で話しかけると海斗も眠そうにしながら言葉を返す
海斗「おはよー、今日はグランドの方に集合だったよね?」
エナ「そうだよ、はやく行かないと」
エナは笑顔で答えて支度を始めたので海斗も同様に支度をし二人は宿の中から出て行った
朝日に照らされながら二人は手を繋いでグランドまでの道を歩いていき仲良く話している
そうして二人はグランドへとたどり着くとそこにはリナとアスフェアが二人で話していたがこちらに気付いたので話しかけてくる
リナ「エナー!!昨日はどこに行ってたの?」
エナ「えーっと……質問責めにあって疲れちゃったから早めに寝てたかな」
エナは言葉に詰まりながらも答えるがそれを見たアスフェアはニヤけている
リナ「そうなんだ、でもなんかよく分からないけどエナの肌がとても綺麗になってるような感じがする」
エナ「えっ!? そうかな?……」
リナ「なんだろう、なんか色気があるようなそんな感じがするかも」
アスフェア(エナすっごい焦ってる、可愛い)
エナ「えーっとね……いい化粧水を使ってるからだと思う、今度貸すよ?」
リナは顔が赤くなっているエナを不思議に思いながらも納得し次は海斗に話しかけてくる
リナ「カンナ?だよね?」
海斗「……そうだよ」
リナ「今だに信じられないけど……私を助けてくれて本当にありがとう、カンナのおかげで学校も楽しくなったから本当に嬉しかった」
海斗「それなら良かったよ、リナもパックと仲良くやっていかないとね」
リナ「うん……」
リナも照れくさそうにしながら頷いているとアスフェアが思い出したかのように会話に割り込んでくる
アスフェア「そうだった、マールの伝言であんたが古龍と戦った場所に全員来て欲しいって言ってたわよ」
海斗「天空城の真下のところだよな?でもあそこは瘴気で危なかったんじゃないのか?」
アスフェア「それなんだけど、何かよく分からないけど瘴気が全て無くなったみたいなの」
この事に二人は信じられないといった表情をしている
アスフェア「とにかく行ってみれば分かると思うわ、私とリナはまだきてない人にこの事を伝える係だからここに残るわ」
リナ「また後でねー」
二人はアスフェアの指示に従って瘴気に溢れていた天空城の真下へと向かっていく
段々とその場所へと近づいていくと二人共すぐに異変を感じ取る
その理由は瘴気を防いでいた結界が無くなっており綺麗な空気になっていたからである
海斗「瘴気が全部消えたのか?」
エナ「分からないけど 行ってみよう」
二人は走っていくとその場所にはクシア、ベル、マール、大妖精、アリスの五人と見た事のない白い龍がいる
海斗「あの龍はどこかで……」
エナ「まさか……」
二人は何か心当たりのあるようだがこちらに気が付いたベルがこちらによってきて話しかけてくる
ベル「おはようございます、時間はしっかりと守れたようですね」
海斗「はい、屋敷で朝は慣れたから」
エナ「何言ってるの、まず最初はおはようございますでしょ?それに起きれたのは私が起こしたからだからね?」
海斗「あっ……そうだった、おはようございます」
このやり取りにベルは笑顔になり優しい顔で二人を見つめている
ベル「フッ……エナもこの調子でこいつを支えてあげなさい それにその調子だと私の護身術も毎日やってるようね」
エナ「はい!!ベルさん程ではないですが毎日やるようにしています」
ベル「これは毎日の積み重ねが大事よ、……少し脱線してしまったけど二人共こっちにきてくれる?」
エナ「はい、分かりました」
海斗「ベルさんはあの龍の事は分かるの?」
ベル「それは今からマール様が話してくれるわ」
ベルの後に着いていくとクシアとアリスは白い龍の頭を撫でており大妖精とマールがこちらに話しかけてくる
マール「少し遅いけど昨日は大変だったから仕方ないわね」
海斗「はい(あんたがグランドに集合って言ったじゃないか)」
マール「何か言いたそうね?」
海斗「いえ、何でもありません それでクシアとアリスが頭を撫でてるあの龍は何なのですか?」
マール「そうね……貴方も大体の想像はつくだろうけどあの龍は貴方が戦ったザンギャグロスと呼ばれてた龍よ、そして別の名を聖龍ホーリアー」
海斗「やっぱりそうだったのですか」
エナ「あの傷ついた人を癒していたと言われる龍が何故こんな事に……」
海斗「反転魔術を使われてたから全く逆の性質になってしまったって事なのか?」
マール「概ねその通りよ、ホーリアーにはとてつもなく強力な反転魔術が使われてて人を癒す力が人を蝕む瘴気と性質を変えてザンギャグロスと呼ばれるようになったと思われるわ」
エナ「そういう事だったんだ……本当は戦うつもりなんてなかったのかな?」
海斗「そうかも、助けを求めてたから多分だけど操られてた可能性が高いかもね」
クシア「それで間違いないと思います」
クシアはフラフラになりながらこちらに話しかけてきたので海斗とエナは心配する
海斗「クシア!!大丈夫なの?」
エナ「この程度の疲れなど海斗やエナに比べたら……」
エナ「その感じだと相当無理してたんじゃない?」
クシア「いえ、本当に大丈夫ですよ」
姿勢が定まってないクシアが倒れようとするとアリスが飛び出してきて必死に支える
アリス「クシアお姉ちゃん無理はしないで、一日中眠らずそばにいたんだからゆっくり休んでよ」
マール「本当よ全く……」
大妖精「まあそのおかげもあってこの龍にかけられた魔術を一日で解く事ができたのじゃからな」
マール「貴方はよく頑張ったから今は休みなさい」
クシア「はい……」
この言葉を最後にクシアは倒れるように眠ってしまったので海斗とアリスはクシアを支えて寝かしつける
海斗「それで俺たちはこれから何をするんですか?」
マール「それを今から話すところよ、でもまだ勇者達が来てないからもう少し待ちなさい」
海斗「分かりました、それと質問ですけどホーリアーが元に戻ったからここら辺の瘴気は全部消えたって事ですか?」
マール「そうみたいね、あの龍からは瘴気を浄化させる能力があるみたいだから……」
他の人が揃うまで色々な事を話していると後から次々とこちらにやってくる人が増えて勇者一同とルーゼ、シドウとレージュ、マルクが到着する
海斗は勇者の仲間と少し気まずそうにしているがマールは揃った事を確認すると話し始める
マール「全員揃ったようね、マルク王子から報告をお願い」
マルク「はい」
海斗(こいつは王宮の時は嫌な奴って思ってたけど印象が変わったな)
マルク「残念ながら良い報告はできませんね」
マール「構わないわ」
マルク「マール様が仰られてた私の父の行方なのですがこの国の優秀な魔導士と共にどこかに消えたそうです」
マール「そうなのね……」
斉藤「デストリンガーに攫われたという事なのでしょうか?」
マール「……そうとも限らないわ、もしかすると協力関係にあった可能性もあるのよ」
マルク「そうですね……ジックがこの地下に閉じ込めていた人の数を見るとむしろお父様も協力していた可能性が高いのですよ」
斉藤「そうなのですか……」
マルク「現にソルセリの住人は私の父を信用できてないみたいですから」
この報告には全員暗い顔をしているがさらに良くない報告が続く
マール「次はルーゼにお願いするわ」
ルーゼ「分かりました、さらに悪い報告が続きますが先程マルク王子が言われたように住人がこの国を信じられないと言っておりおまけにマルク王子の処刑を望む者が現れ始めました」
海斗「ちょっと待ってくれよ マルクは何も悪くはないだろ」
ルーゼのまさかの報告に海斗は慌てて否定したのでマルクは驚いている
ルーゼ「そうだな、だが国民はそれを望んでいるのは事実だ」
マルク「仕方のない事です」
海斗のクラスメイトはまさかの反応に驚いているようだが色々と事情を知っているので聞き流す
マール「そこは後でなんとかするしかないわね、それと次にベル……いやリゼル、報告をお願い」
斉藤らは知っている名を聞いたので同様しているとベルの体がひかり輝いて見覚えのある天使が現れる
リゼル「私からも悪い報告をするわ」
色々と突っ込みたい衝動を抑えて全員は話をきく
リゼル「まずはソルセリの行方不明者を全員助けたのは良かったけど一番重要なジックを取り逃した事がマズイ状態になっているわ」
これには斉藤達も何も言い返せずに黙るしかない
リゼル「それでジュエリーナ王国とビスト王国の仲がさらに険悪になってしまったわ」
海斗(やべー何の事だか分かんねー)
リゼルは勇者達とマールに色々と報告をするが海斗は話についていけずに眠りかけていた
しかし以前と違って完全に眠る訳ではなく聞こうという意思が感じられるので少しは成長したと言えるが話の途中でリナとカリータが入ってきたのである
リナ「話の途中ですみません!!皆さんに聞いてほしい事があります」
マール「急にどうしたの?言ってごらんなさい」
カリータ「はい、ジュエリーナ王国のカネリア王女を名乗る人が現れてしまい今現在は混乱している状況です」
リゼル「まさか……ね、信じられないけど本当なのかしら?」
マール「それは確認してみるしかないでしょ、居眠りの海斗 カネリア王女を迎えに行って来なさい」
海斗「えっ……あっはい」
眠りかけていた海斗は曖昧な返事をしてリナとカリータに着いていきそれらの様子を見ていた斉藤達クラスメイトは相変わらずだど苦笑いをしながら海斗の背中を見送ったのであった




