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第六十九話 瘴気に塗れた大地の下で


 時はカンナが遥か上空から突き落とされた所にまで戻る


 カンナは地面に頭を向けものすごい速さで落下していた


 カンナ「もう……駄目か、俺が浮遊魔法を習得してれば死なずに済んだかもしれないのに 」


 アスフェア「あんた……本当はエナの事を」


 カンナ「もう遅い せめてアスフェアだけでも生きろ 飛べるだろ?」


 アスフェア「うるさい!!エナの為にもあんたを死なせる訳にはいかないの」


 落ちていく中でアスフェアは必死になってカンナを上に引っ張ろうとするがアスフェアの力ではどうにもならない


 カンナ「アスフェアじゃ私を支えることなんてできないよ……せめて薬があればな……」


 アスフェア「……もしかしてこれの事?」


 アスフェアは思い出したかのようにポケットから飴を取り出す その飴はルーゼから密かにもらっていたものでこれを食べると一定時間男の姿に戻れるのである


 カンナ「マジかよ まさかアスフェアが持ってたなんてな」


 アスフェア「あんたは無駄遣いしそうって事でルーゼから預かってたのよ 案の定そうだったみたいだけどね」


 カンナ「悪かったよ……それで早く食べさせてくれよ このままじゃ死んじまう」


 アスフェア「うるさいわね、そんなの分かってるわよ」


 迫り来る地面を見ながらアスフェアは文句を言いつつもカンナの口に飴を放り込む


 飴を噛み砕いたカンナの姿は男の姿となり海斗になる、そして頭を向けて落下していたが方向転換して足を地面へと向けて落下する


 海斗「アスフェア!!しっかり捕まっとけよ!!」


 アスフェア「分かってるわよ」


 そう言うと海斗は拳を地面に向けて構えその拳に魔力を宿す




 そして地面にぶつかるギリギリのタイミングで拳を地面に向けて放つ


 海斗の拳からはとてつもない風圧が発生し上から落ちてきた勢いを相殺して受け身を取って地面に無傷で着地することに成功したのだ


 海斗「何とか上手くいったか……アスフェア!!無事か?」


 アスフェア「何とか大丈夫よ でもここは瘴気が溢れてるから自分を守らないと」


 海斗「いや俺は大丈夫だ(それよりもさっさと着替えるか)」


 海斗は制服を脱ぎ捨てて以前のような黒い布を纏った服に着替える


 アスフェア「何を言ってるの これを吸いすぎたら寿命が縮むのよ だから早く防御魔法で全身を守りなさいよ」


 海斗「心配するな それよりも誰かいるみたいだぞ」


 何かの気配を感じた海斗ら辺りを警戒して見回しているとそこにはシドウの姿が目に入る


 シドウ「大きな音がしたと思ったらお前は……あの時の奴か ここに何の用がある」


 以前共闘した時の雰囲気を感じ取ったシドウは同一人物と見抜くが何か警戒している様子を見せる


 海斗「シドウ先生……」


 シドウ「何故俺の名を知っている 教えた覚えなどはないぞ そして先生呼びとはふざけているのか?」

 

 海斗「えーっと……その 何と言ったらいいのやら」


 アスフェア「全部話せばいいじゃない 私たちの目的とかも全部」


 海斗「そうだな……」


 シドウ「何かあるのか?こちらも急いでるから簡潔に頼む(それにこの妖精は確かレージュの所にいた生徒のだよな?)」


 海斗とアスフェアはシドウにこの国の調査に来た事、カンナとシアの本当の正体や自分が異世界の勇者である事と学長から殺されかけた事を全て簡潔に話す


 カンナのけんに関してシドウは信じられないと言うが貰ったプレートとゼミで習った事などを言うとシドウは信じるしかなくなってしまう


 シドウ「成る程……まさか一緒に戦った奴がカンナに化けていたとはな……それにレージュの言ってた事は本当だったって事か」


 海斗「レージュ先生が?どう言う事ですか」


 シドウ「お前は一週間来なかったから知らんだろうが四日前にレージュとカリータとリナがいなくなったんだ」

 

 海斗「リナとカリータは今日知ったけど先生まで居なくなったの?」


 シドウ「そうだ それも同時にな、最初はカンナを探し回ってるかと思ってたが昨日にレージュから不自然な通信が送られてきたんだよ」


 そう言うとシドウは腕につけている魔術道具に魔力を送るとレージュの声が聞こえてくる


 レージュ「シ ウ聞こえ る 以前も話し けど やっぱ この学 は人を攫 てる リナとカリ タも私と一 に捕まってる 場所は 城の 下 ガレオス 武器 あるとこ 見張りも るから バレないよ に 学長は信用しないで!!…………」


 途切れ途切れではあるが何とか内容の聞き取れるメッセージであり海斗とアスフェアは衝撃をうける


 海斗「リナとカリータも攫われてしまったから学園に来れなかったのか」


 シドウ「そう言う事だ それで座標の場所から大きな音がしたと思ったらお前がいた訳だ」


 海斗「それであの武器の近くに何かが隠れていると」

 

 海斗は以前見た禍々しく古びた豪鉄のメイスを見つめる


 シドウ「ああそうだ……だがあのメイスはかなり重いからどかすのを手伝って……っておい 一人でその重いやつをどかすつもりなのか?それに尋常じゃない瘴気の量だぞ」


 注意するシドウを無視して海斗はメイスへと近づいていく


 海斗「大丈夫だ 俺は一回も風邪をひいた事がないからこれくらいの瘴気は平気だろ」


 シドウ「そうか……俺も多少のは平気だがそれには近づきたくはないから早くどかしてくれ」


 アスフェア(そういう問題じゃないでしょー)


 海斗「……重いけど 両手で持ち上げれば何とか」


 海斗はメイスを両手で持ち上げて手に持つ、そのメイスからは瘴気が溢れていたが海斗が手に取った瞬間に瘴気が消え去りボロボロになっていた部分は綺麗になった


 シドウ「何なんだその武器は……」


 海斗「さあ……でもこれは武器として使えそうだし貰っていくか」


 そして次の瞬間に何か大きな音がして大地が変形して人の何十倍もの大きさを持つ円形の扉が地面に沿って現れる


 海斗「これは地下に続く扉なのか?」


 シドウ「おそらくその武器がこの扉を開く鍵の一つなのだろうな」


 アスフェア「こんな所にまだ秘密があったなんて……でもこの扉は開く気配がないわよ?」


 海斗「何か特別な呪文か何かがいるのかも そしてこの先にリナとカリータが」


 シドウ「そんなのを探す暇はない!!強行突破だ 今のお前ならこの扉も壊せるはずだ」


海斗「分かりました やってみます」


 海斗はメイスを両手に持ち高く飛び上がり勢いをつけて地下へと続く扉目掛けて振り下ろす


 海斗の魔力のこもった一撃で周りにとてつもない風圧と音が広がり扉は大きなヒビがはいっている


 海斗「もう一撃か」


 そして同じようにしてもう一撃叩き込むとヒヒが入っていた扉は完全に崩壊する


 地下には大きな空洞があるのか海斗が壊した扉の破片は崩れて落ちていこうとしていたのだが途中で宙に浮いてその中から聞いた事のある声が聞こえてくる


 ?「シドウ!! 助けに来てくれたのね!!」


 シドウ「レージュか!!どこにいる!! 状況を教えろ」


 レージュ「状況も何も今はあんたが壊した扉を魔法で支えているのよ!! 早くこれを地上の方に投げなさいよ」


 シドウ「何故わざわざそんな事をするんだ」


 レージュ「たくさんの人がいるんだから巻き添えを喰らうでしょ!! というよりもっとマシな開け方は無かった訳? というよりもさっさとして リナとカリータも限界がきてるから」


 シドウ「助けにきたのにやかましい奴だな全く、カンナ……片付けるぞ」


 海斗「俺の名は海……早く片付けてリナとカリータに色々聞こう(もうカンナって呼ばせた方がいいか)」


 そうして海斗とシドウの二人は破片を足場にして次々と地上に放り投げて全てを片付けて地下を見渡すとそこにはとんでもない光景が広がっていた


 海斗「これは……」


 シドウ「人が……住んでいるだと……」


 アスフェア「そんな……信じられない」


 なんとそこには地下深くまで何層にも別れている部分がつづいておりよく見ると弱っている人の姿が目に入ってきたので三人は言葉を失う


 レージュ「ハァ……ハァ シドウ!!と……そちらの人は?」


 信じられない光景を見ていると息切れしたレージュが走ってたのでシドウは海斗の事を話す


 レージュ「この人があの時学園を救ってくれた人で味方でいいのね?」


 シドウ「そうだ、こちらからも色々聞きたい事があるが時間が無いんだろ?俺たちは何をすればいい?」


 


 レージュ「うん……地下にいる人達全員をここから出すわ貴方達は……」


 レージュが指示を出そうとすると何人かの人がこちらを覗き込んでいる気配を感じとる


 レージュ「貴方はAクラスのマルク王子ね」

 

 マルク「はい……何か大きな音がしてると思って来てみれば……やはりあの学長は裏ではとんでもない事をやっていたみたいですね」


 海斗(こいつも目的は俺たちと同じだったって事か?)


 そこにはマルクと何人かのAクラスの人の姿があり悲しそうな表情を浮かべている


 レージュ「なら手伝って 今からここにいる人達を解放するわ」


 マルク「もちろんです」


 マルクと何人かはこちらへ降りてきてレージュを手伝い地下にいる全員へ呼びかける


 マルク「ジックに攫われてしまった皆さん!!もう安心して下さい 私達が助けに来ました この階段から地上へ上がれますので瘴気に触れないように防御壁の中を通って外にでて下さい」


 シドウ「やるじゃないか 俺も負けてられん」


 レージュ「張り合ってる場合じゃないでしょ」


 マルクの呼びかけに全員は感謝の言葉を述べて階段へと向かっていく


 そしてさらに呼びかけて体が上手く動かない人などは抱えて運んだりするなどして次々と地上へ導いていく


 その途中で海斗はリナとカリータを見つけ声をかけると心配していたシドウとレージュも駆け寄って来る


 海斗「リナ!!カリータ!!無事だった」


 リナ「えっと……貴方は(どこかで見た事が……)」


 カリータ「もしかしてあの時私達を助けてくれた人?」


 男の姿で話しかけたので最初は誰か戸惑っていたが雰囲気で思い出して海斗に話しかける


 海斗「そうだよ 無事で良かったけどどうして二人はこんな場所に?それにここにいる人達は何故閉じ込められてるの?説明できる?」


 シドウ「それは俺も気になるから話してくれ」


 カリータ「分かりました 四日前に私達はカンナを探しに街を見ていました」


 リナ「夜も遅くなったのですがそこで偶然レージュ先生を見かけたので話しかけたんです……そしたら」


 レージュ「その時は色々と不審なものが多いこの辺りを色々調べてたんだけど二人が話しかけたと同時に学長に捕まって抵抗したのだけど二人を人質にされてこうなったって訳」


 リナ「あの時は本当にごめんなさい……私達のせいで……」


 レージュ「そんな事ないわ 捕まってしまったけどこの馬鹿が壊した扉は私だけじゃ支えられなかったわ」


 シドウ「だから言っただろ 壊したのはこいつだって」


 海斗「成る程、リナとカリータも情報を残さない為に攫われたと……それと壊したのはあんたの指示だからな」


 アスフェア「あーもう!!そんな事よりもどうしても人が地下に閉じ込められてるの?」


 カリータ「それはですね……ここにいる人達がこの国で行方不明となってた人達で間違いないです」


 シドウ「推測ではそうなるが他に根拠はあるのか?」


 リナ「はい……その中に私達Eクラスの担任だったエリオン先生がいましたので間違いありません」

 

 シドウ「そうか……」


 レージュ「…………それで攫われた人達はこの空間で魔力を吸われ続ける生活をしていたのよ そしてその魔力で私達は生活をしてたのは勿論の事だけど大部分は古龍の封印を解く為に使われたようなの」


 海斗「古龍だと!?それに魔力が無限に溢れる巨大な魔石があるってのは嘘でその正体は人だったって事か……」


 カリータ「はい……そのようです」


 シドウ「あの学長はマジでやばい奴だったって事か……」


 リナ「それに学園にいる勇者達を殺して敵がいなくなったら国民を虐殺して他の国を落とすと言っていました……」


 シドウ「……それはいつ実行されるんだ?」


 リナ「分かりませんが 誰にも知られずに勇者を殺すと言ってたので推測になりますがガレオスの天空城に行く日なのかもしれません」


 レージュ「そーよ だから一刻もはやくこの事を国民に伝えないととんでも無いことが起こるわ」


 シドウ「……おいおいマジか……」


 海斗「それって……」


 アスフェア「今日じゃないの!!」


 レージュ、リナ、カリータの三人は地下にいた為時間の感覚が狂っており今日がその日だということに全く気が付いておらず顔が青ざめる


 カリータ「そんな……」


 リナ「それじゃあもう……カンナは……そんなの嫌」


 レージュ「そんな……今から街の人に呼びかけても間に合うかどうか……それに信じてくれるのかすら分からないのに……」


 シドウ「馬鹿野郎!!何故その事をはやく言わないんだ そんな事ならとっとと動くしかないだろ マルク!!今の話は聞いていたな この辺りは戦場になるかもしれん 早く国民や国王にこの事を伝えるんだついでに増援もよこすように伝えるしかないぞ」


 マルク「まさかそんな事が……今日はお父様はおられませんのでこの国を守る魔導士の軍はいないのですよ……」


 シドウ「クソ……このタイミングを狙ってたとでもいうのか」


 絶望的な状況に沈黙が続くがシドウが口を開く


 シドウ「なら……この学園にいる生徒と俺らで何とかするしかないのか」


 レージュ「っ!? 何を言ってるの!!あの子達はまだ学生なのよ こんな事に巻き込むなんてあってはならない事よ」


 シドウ「そんな甘い事を言ってる場合か!!今は使える戦力は全て使うしかないだろう!!」


 レージュ「分かってる……そんなの分かってるけど……未来ある学生を戦わせるなんて……私には」


 カリータ「レージュ先生……」


 マルク「先生は優しいですね……ですが今はそんな事を言っている場合じゃないと思います 僕もこの国の人を守りたい その気持ちは同じはずです」


 マルクの後にリナとカリータとAクラスの生徒が頷く


 カリータ「私達じゃ頼りないかもしれませんが……」


 リナ「怖いですけどこの国を代表する魔導士として必死に戦います!!そうじゃないと学園で学んだ意味がありませんから」


 レージュ「…………わかったわ」


 完全には納得していないようだがレージュは腹を括り承諾する


 海斗「じゃあ俺が上に行ってクラスメイトにこの事を伝えてくるしかないか」


 シドウ「どういう事だ」


 海斗「勝つには異世界の勇者の力が必要だろ? 俺一人じゃ絶対に勝てないから」


 シドウ「カンナお前……空を飛べるのか?」


 海斗「やれるか分からない……けどやるしかない 住民の避難はお願いします」

 

 とんでもない事を言い出す海斗にシドウは呆れるがカンナという言葉を聞いたリナとカリータが反応して海斗に声をかける


 カリータ「カンナ?今さっきカンナと言いましたよね?」


 リナ「それにクラスメイトって 貴方も勇者の仲間なのですか?教えて下さい」


 海斗「全部終わったら話すよ……二人共同じクラスメイトで大切な仲間だからね」


 海斗はそう言うと地面をもの凄い力で蹴り上げて飛んでいき大地には大きな穴が空いてしまう


 シドウ「リナ、カリータ気になる気持ちも分かるが今はやるべき事をやるんだ いいな」


 色々と気になる二人だったが切り替えて元気よく返事をして自身のやるべき事をする為に走っていった

 


 アスフェア「私も連れていきなさいよ」


 海斗が飛ぶ寸前にギリギリの所でアスフェアもしがみついてきて体勢を崩すがすぐに持ち直す


 海斗「危ないやつだな どうなっても知らないぞ」


 アスフェア「うるさい!! それよりもあの城まで届くの?」


 海斗「いーや このままじゃ届かないだろうな」


 アスフェア「はあ? どうするのよ!!」


 海斗「だから空中をこうやって……」


 勢いが無くなった頃に海斗は再び空中で踏ん張ると空中を蹴って移動する事に成功する


 カンナの体で長い事訓練をしていたおかげもあってか身体能力は凄まじく成長しており今の海斗は空中を蹴り上げて進む事ができるようになっていたのである

 

 海斗「集中しないとあれだけど何とかできるぞ」


 アスフェア「あんた羽もないのに凄いわね……」


 そうして空中を蹴り上げて進んでいき城が目前へと迫って来ると……



 エナ「私は……貴方達を殺した最低な女なのに!!」


 上からエナが叫ぶ声が聞こえてきたのでアスフェアが反応する


 アスフェア「エナ……」


 海斗「まあ……事実ではあるけどな 実際俺は死ぬところだったし」


 アスフェア「無理かもしれないけど……許してあげてほしいの」


  海斗「俺はエナの事が好きになってしまったみたいだからな……だから許すよ」


 アスフェア「えっ!?今の言葉はほんと……」


 海斗「このメイスで城の床を突き破るぞ!!捕まってろ!!」


 エナの思いを打ち明けた海斗に衝撃を受けるアスフェアだが城が迫ってきたので海斗はアスフェアの言葉に被せて指示を出しメイスを前に突き出して城へと突っ込む


 引っ込んだアスフェアは何も言えず黙っており海斗が突っ込んだ城は大きく揺れている、そして床を抜けると同時に海斗は大声で叫んだ


 海斗「本当にその通りだよ!!」


 

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