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第七話 追放の勇者と天使

 海斗達のパーティはやっと出現したゲートに入り王宮の中へ戻ることに成功する


 最後のパーティが帰ってきて一時間近く経っており中々戻ってこない海斗達にクラスメイトの皆は心配していたがゲートが開いたことで全員が安心する


 しかし海斗達は王宮に着くと同時に地面に倒れてしまいその様子を見た仲間達が一斉に駆け寄ってくるが海斗の様子を見た何人かが悲鳴をあげて泣いている


 絵美「かい……と?」


 武「お前!!一体どうしたんだよ」


 両足と左手が無くなっている様子を見た親友と幼馴染は海斗の元へと駆け寄り絵美は声を震わせながら海斗に手を当てて治療魔法を唱え武は天使のクシアの元へと向かい


 武「おい!!お前 天使だから助けてくれるんじゃなかったのか?」

 親友が大変な事になってしまいその怒りをクシアにぶつける、それに対してクシアはただ謝ることしか出来ない


 痺れを切らした武は怒りのままにクシアを殴ろうとするが海斗が「止めろ武!!クシアさんは悪くない……」と叫んで何故こうなってしまったのかを全員に説明する


 これらの様子を遠目で見ていたサンド王とリリィ王女は近づいて様子を見に行くと真っ先に海斗の姿が目に入る

 サンド「……お前もタグラスのような運命を辿るのか……かいとよ」

 リリィ「海斗おにい……様」

 この二人は海斗のことを今は亡き誰かと重ねており悲しそうに様子を見つめている


 海斗とクシア以外のメンバーは全員疲弊したのか眠ってしまっていたのでそれぞれ仲の良いクラスメイトの人が部屋へと運ぶ


 海斗は皆に説明をし皆はそれを聞いていたが天使のうちの一人が「有り得ないわ」と声をあげる

 ?「よくもそんな嘘をつけたわね 仮にフェンリルがいたとしたらあなた達全員死んでるはずよ、両足と腕一つだけで済むわけがないでしょ」


 クシア「リゼル……これは本当なの……信じて」


 リゼル「そもそも貴方がしっかりしてたらこんな事にはなってなかったはずでしょ」


 このリゼルと呼ばれた天使は身長こそ低いがしっかりしていて何事にも自信を持っておりプライドが高い天使でクシアに突っかかっていることが多く常に説教していたイメージがあるな……どんな関係なのだろうか?


 そんなことを思いながらも海斗はクシアと一緒にリゼルを説得しようとするがリゼルは聞く耳を持ってくれない


 言い争いが続くなかこっそりと会話を聞いていた一人の男が乱入する

 ?「全く 勇者と聞いて様子を見に来てみれば聞いて呆れる」


 リゼル「貴方は……マルク王子じゃないですか 何故ここに」

 マルクと言われた男は海斗とクシアを見て嘲笑いながら見下している

 突然現れた王子にサンドとリリィは慌ててマルクの元へと向かい

 リリィ「マルク様 随分と早いですね……一応明日が到着予定だと聞いていましたが?」


 王族としての立場があるのかリリィは涙を我慢しながらマルクに話しかける


 マルク「勇者を一目見ておきたいと思いまして早めに来たのですよ……しかしあそこにいるのが勇者なのですか?」


 マルクはクシアと海斗を指差して問うがサンドとリリィは何も言い返せずにいる


 マルク「さっきから話を聞いてるとそいつらは勇者と天使みたいですがなんて醜い おまけに嘘つきだ」

 クシア「マルク様 これは本当なんです……フェンリルが突然私達を……」


 クシアが弁明するが「うるさい 口答えするな!!」と怒鳴り疲弊して動けないクシアに近づき暴力を振るう


 クシアは「痛い…辞めて下さい」と訴えておりこの様子を見ていたクラスメイトが止めようと動くがリゼルが「動かないで下さい」と言い皆を止める


 リゼル「あの方は魔法都市ソルセリの王子です この国ともそれなりに友好的な関係ですので」


 橘「ソルセリの王子なのですか? だからと言ってあんな事は……」


 勉強熱心なクラスメイトのほとんどはソルセリの事について理解していた……しかしいくら偉くてもこのようなことが許されるはずもない


 その一方でマルクはクシアが痛がる様子を見て楽しんでいるようにも見える


 その様子を真横で見ていた海斗は「おい……辞めろ」とマルクに言うが全く聞こえていなかったので片腕で自分の体を持ち上げて飛び跳ねてマルクに強烈なデコピンを喰らわせる


 まともに喰らったマルクはおでこに小さなアザができたので次は海斗に標的を変え罵倒し暴力を振るう


 マルク「このクソ野郎がなんて事をしやがる 死ね」

 

しかし鍛えていた海斗はマルクの蹴りなど痛くもなかったが「いたいー」と棒読みではあるが叫んでいた


 この様子を見ていた全員は何が起きているのか脳の処理が追いついていないようだがリゼルが「アイツ……何をしてるの……」と呟いている


 痛めつける事に飽きたのかマルクはサンドへ近づき「サンド王 こいつら処刑ね」と命令する

 この言葉を聞いたクラスメイトだが(まさか実行しないだろう……)と王様を信じていた


 サンド「なっ!?………………」

 リリィ「マルク様いくら何でもそれはやり過ぎなのでは? 海斗様の無礼は私が謝りますので……」

 デコピンに対しての仕返しが処刑というので明らかに釣り合っておらずサンドが返答に困っていると


 マルク「処刑しないのならあなた達を異世界から勇者を召喚し世界を乗っ取る裏切り者として情報を流しますよ?」


 海斗「俺らがそんな事する訳ないだろ何を言ってる」


 マルク「うるさいお前は死んでもらうからな!! それでどうするんですか?サンド王 現に異世界からの者など信用されてない中でこの情報が出回ればまた世界が混乱する事になると思いますが?」


 クシア「そんな事しては駄目です……争いごとはもう……」

 マルク「うるさい無能天使 やっぱりお前もムカつくからお前もこいつと一緒に死んでもらおうか…………それでどうするんです王様?」


 まるで子供のようなマルクの言い分を聞いたサンドはしばらく何か考えた後に


 サンド「……了解した この二人を処刑する」

 この言葉を聞いたクラスメイトは猛反対し声をあげるがリゼルが「リダウン」と呪文を唱えると橘を残したクラスメイトが全員眠ってしまった

 橘「リゼルさん 一体どういうつもりですか 」


 リゼル「静かに 何か分からないけど王様には考えがあるみたいよ」


 海斗は今の状態に頭が真っ白になりクシアも限界を迎えてしまったのか二人ともその場に倒れて気絶してしまう


 サンド「マルク王子の言う通りこの者は処刑します……しかしこの者達が死んだのを見届けた後にあなたには記憶を消す魔法を受けて貰います それでよろしいですか?」


 マルク「そうしないと僕の気分で嘘の情報を流してしまいますからね 良いでしょう」


 リリィ「お父様!!待って下さいお兄さ……ではなくて海斗様を何故処刑するのですか!!」

 とんとん拍子で話が進む中でリリィはサンドの前に立ち全力で否定するがサンドは「大丈夫だ……」と小声で呟きマルクの元へと向かう


 サンド「こちらも準備をしますのでその間はあちらで顔の傷を癒やされてはいかがでしょうか? 」

 サンドは処刑の準備があると言うとマルクは納得したのでケールが「こちらです」と部屋へと案内する


 マルクの姿が見えなくなるとサンドは橘の前に立ち

 サンド「よく聞け橘勇気よ 今から海斗とクシアを処刑するフリをする この事を他の仲間達に後で伝えてはくれぬか?」


 リーダーである橘にサンドは全ての作戦を話す

 橘「……そうですか でもあの状態の福田君はどうやってこの世界で」

 サンド「天使のクシアも一緒だから心配することは無いだろう……とにかく急がないとな」


 サンドは気絶した二人を兵士に担がせて移動させるように指示を出して処刑の準備に取り掛かかると一時間後に海斗とクシアはマルクの前で処刑が実行された


 ――さらに処刑から一時間後――


 海斗「んー……ここはどこ?俺は殺されるって」

 海斗は目が覚めると知らない部屋の中にいたよく見ると窓がついていてガタン!と揺れたりしており移動している事が分かる


 リリィ「海斗様……目が覚めたのですね?」

 首元に柔らかい感触を感じる、横に倒れていた海斗はリリィ王女の膝枕で眠っていたようだ


 海斗「雪……リリィ王女 ここはどこですか?俺はどうなってしまうのですか?」

 危うく妹の名前を叫ぼうとしてしまう、髪の色は違えど雰囲気や髪型が海斗の妹に似ており誰にも言ってないが異世界に来た時からずっと感じていたことだ


 リリィ「はい……全て説明します」

 そう言うとリリィは全てのことを説明してくれた……マルク王子の目の前で処刑された人はこの世界の凶悪犯罪者で見た目を幻影魔法を上手く使いマルクを騙して都合の悪い部分の記憶は消したこと


 しかし今の状態の海斗とクシアを見るとまた同じような事が起きてしまうので今は王都から遠く離れた街まで馬車で移動中とのことらしい


 海斗「そうなのですか……」


 リリィ「追放するようことになってしまって申し訳ありません……」


 海斗「いいえ……悪いのは感情的になってしまった俺の方ですよ 知らなかったとはいえ偉い人に攻撃してしまったのですから」


 リリィ「そんな事ありませんよ あの場面では海斗様が一番人として正しかったと私はそう思っています」


 結局こうなってしまったのは俺のせいで迷惑をかけてしまったと思ってたけどリリィの一言で救われた気がするなでもこれからどうやっていけばいいのだろうか


 そんなことを考えていると馬車が止まり扉が開いて兵士が「出ろ」と言ってくる


 リリィ「海斗様 最後にこれを」

 

リリィは重いふくろを海斗に手渡すが突然のことに海斗は戸惑ってしまう


 リリィ「その袋に一万ゴールド入っていますそれだけあれば当分は大丈夫なはずです」


 海斗「一万ゴールド……とにかくありがとうございます」

 お金の価値についてはクシアに教えられていたのだがまともに授業を聞いていない海斗は価値を理解していなかった……しかし一万という数字は学生にとっては大金なので(一日くらいは何とかなるか)と考えていた


 お礼を言った海斗は袋を受け取ると自分の影の中に袋をいれた

 リリィ「そんな事ができるのですか?」

 変わった事をする海斗にリリィは驚いていた、この影に物を入れることができる能力はたまたま見つけたもので大きすぎる物じゃなければ何でも入る便利な能力で正直生活に欲しいくらいだ

 海斗「異世界の勇者ですので……リリィ王女も色々と大変かもしれませんが頑張ってください」


 リリィ「はい……本当はずっとそばにいて欲しいのですけど…… 」


 海斗「心配しないで下さいよ 渋さには自信がありますので何とか生き抜いて見せますよ」

 リリィ「(やっぱり前向きなところとかがタグラス兄様に似ています)クシア様もいますしその様子だと心配なさそうですね……どうか頑張って下さい」


 そう言うとリリィは上手く動けない海斗を抱えて馬車を降りる、妹に抱き抱えられているようで照れくさかったが温もりを感じていた


 その後に兵士がクシアを海斗のそばにおろすとリリィは馬車へと戻る


 海斗は見えなくなるまで手を振りリリィもそれに答えるように手を振り続けた

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