第六十五話 閉会 そして...
カンナ「フーッ……四勝一敗か 中々優秀な戦績なんじゃないかな(汚い手だったかもしれないけど……工夫した必死に捻り出した勝ち筋だし大丈夫だろ)」
クラスメイトの寺山との真剣勝負を終えたカンナは観客の声援を浴びながら最初に待機していた場所へと戻っていく
カンナ「私が最初みたいだね」
Eクラスが待機していた場所へと行くとカンナが一番最初であり全員の戦いが終わるまで暇となるのでその場でクラスメイトの応援をした
そして応援を続けていると勝負を終えたリナとカリータがこちらに向かってくるのが見えたのでカンナは話しかける
カンナ「二人共お疲れ様 結果はどうだった?」
リナ「悔しいけど私は二回しか勝てなかったなー」
カリータ「私は三回ですね 何だがよく分かりませんけどAクラスの勇者の上野さんに勝てましたね」
リナ「私もその人に勝てたけど……何か調子が悪そうな感じだったけど大丈夫なのかな?」
カンナ「あっ……(多分だけど音が耳に残って上手く詠唱できなかったのかも)」
カンナの魔法が思った以上に効いておりクラスの勝敗に影響したのだが少しだけ申し訳ない気持ちがカンナにはあった
リナ「そう言えばカンナは何勝なの?」
カンナ「運が良くて四勝できたかなー」
カリータ「凄いわね……私達で合わせて九ポイントで後はグライスさんとマリアさん次第ってところね」
リナ「凄いじゃんカンナ それで相手は……」
リナは少し落ち込んでいるようにも見えたが強い人と戦えて学ぶ事が多かったと考えているようで前向きになっているようだった
またリナの勝った人にマルク王子も含まれておりカリータも同様にマルク王子には勝つ事ができていたようでこのマルクも学園一番の実力を持っていると言われているが上野と同様にイマイチ実力を出しきれてなかったらしい
カンナ(Aクラスの人には勝つのは難しいって思ってたけど案外勝ててるな)
理由は定かではないが強敵に上手く勝てているので優勝の希望が見えてきた頃に所でグライスとマリアの決闘も終わったようであり待機場所へと合流する
マリアは三勝しグライスもカンナと同様に四勝できたようであり合計十六ポイントとなったのだ
五人で対戦相手の事などを仲良く話しながらまだ終わってない決闘を眺めていると時間はすぐに経ち終わりの時間がやって来て結果発表の時間となった
実況「代表の皆様お疲れ様でした それでは結果の発表です……」
静まり返る会場の中で実況の声が響いており緊迫した空気がながれる中でしばらくしたら後に実況の口が開く
実況「個人戦で最も多く勝ち越したクラスは…………なんと 十七勝しているCクラスです!!」
Aクラスのいないまさかの結果に会場が驚いている様子が伝わってくると同時に大きな歓声が上がってくる
マルク王子が悔しがっている様子が見えるAクラス悔いの残る表情をしているB、Dクラス やり切った感じを出しているEクラスに異世界の勇者がいないのにも関わらず勝つ事ができた喜びで舞い上がっているCクラスと反応は様々だ
カンナ「後少しだったなー」
リナ「……そうだね」
カリータ「リナ……そんなに落ち込まなくても大丈夫よ シドウ先生も言ってたでしょ? 負けて悔しいなら次の糧にしろ!!と」
リナ「そうだね 引きずらない事が重要だもんね」
マリア「リナさんが全力で戦った事は皆分かると思うしそれにあのマルク王子に勝てたんだから自信を持ってもいいと思うよ」
マリアとカリータがリナを励ましているのを他所にカンナはグライスに話しかける
カンナ「グライスは誰に負けたの?」
グライス「最初に戦ったエナって子に負けたかな」
カンナ「そうなんだ(エナってそんなに強くなってたのか)それで勝った相手は?」
グライス「後はDクラスの人とAクラスの上野って勇者の人と……マルク王子にも勝てたけど 何か様子がおかしかったような気がするんだよ」
カンナ「あー(上野君は俺のせいだけど マルク王子ってやつは学園一番じゃなかったか?)マルク王子はリナも勝ったみたいで調子が悪そうな感じだったらしいじゃん」
グライス「やっぱりそうなんだ……俺と戦ってる時は何か違う事を考えてたような感じがしたな 上手く言えないけど焦ってるような感じ?」
カンナ「どうなんだろ……本番で緊張してたとかじゃないの?」
カンナとグライスはマルクの様子を軽い感じで受け流しているがその裏では大きな影が動いていた事をほとんどの人が知らないまま閉会式を迎える事となる
閉会式の為に一旦観客席へと戻っていくとシドウを中心にして全員が励ましの言葉を貰い笑顔になった
シドウ「お前達 よく頑張ったな 開会式のようにはいかなかったがこの頑張りは決して無駄ではないぞ」
カリータ「はい……ありがとうございます」
シドウ「(少し落ち込んでるな……こうなったら)まあ……頑張った褒美にいい所の店に連れてってやるから堂々と閉会式をやってこい」
カリータ「いいお店ってことは お金が……」
シドウ「大丈夫だ 俺が全てだすから心配するな」
この言葉を聞いた全員が元気よく返事をして閉会式のグランドへと向かっていき切り替わりの速さにシドウは違和感を感じていたが気にしないことにした
カリータ「人の好意を利用したみたいで少し嫌だったのですが……」
グライス「大丈夫だって 今のうちに大人に甘えとくべきだと思うよ」
グライスとマリアの入れ知恵でシドウに落ち込んだ雰囲気を見せて奢りにさせるといった作戦は成功したが真面目なカリータは納得していない様子をみせていた
そんなカリータを全員で眺めながらもグランドへと向かい閉会式が始まる
まず最初に順位の発表が行われ一位はCクラスで二位がEクラスとなり優勝候補だったAクラスは三位となっていた
三位までのクラスが表彰されて代表の生徒がそれぞれメダルを受け取るがマルク王子の納得してなさそうな顔をカンナは気になって見つめていた
表彰が終わると朝のような盛り上がりはなく会場にいる人は静まり返っており夕日に照らされたジックを見つめており全員が彼の言葉を聞いていた
カンナが一番聴きたかったのは天空城にいける優秀な人だったのだが勇者と編人生の十人は一週間後に見学で必ず行くことがジックの言葉で明らかになった
カンナ(そんなに活躍しなくてもあの城には行けたのかい でも強くなろうって頑張れたからいいか)
この事にカンナは拍子抜けするが前向きにとらえつつジックの話を聞いていると最後の挨拶となって閉会式が終了し最後に花火が打ち上がって競技祭は終了となった
カンナ(とうとう終わったかー……後あれかルーゼさんに会いに行かないと)
リナ「考え事してる? 二時間後すぐに打ち上げだから早く準備して一緒に行こうよー」
カンナ「そうだね……少しだけ用があるから先に行ってていいよー」
盛り上がっていた昼とは違い夕日で静まり返った会場を背にしながらリナと話し一緒に行く約束をして別れを告げルーゼと約束した場所へと向かっていく
場所へ向かうとルーゼとアリス、マールの三人が集まっておりマールとルーゼから色んな話を聞いていくが色々と信じられない事実をカンナは告げられる
ルーゼ「…………という訳だ エナにも色々と聞いておくんだ」
カンナ「……はい」
アリス「カンナお姉ちゃん……大丈夫?」
カンナ「心配ないよ ちゃんと話してみるから」
マール「私達は帰るから もし何かあったらこれで連絡しなさい」
カンナ「分かりました……」
アリスに心配されるカンナを見たマールは赤い魔石がはめてある腕輪をカンナに渡してアリスとルーゼと共に帰っていきカンナはその後ろ姿を見送った
カンナ「…………おや」
三人を見送ったカンナは準備する為に寮へと帰ろうとするがその途中でパックとリナが二人きりでいる所を見つけたので素早く身を隠す
カンナ(誰もいないって思ってるのか分からんけど手を繋いでラブラブだな……あーあれはキスするやつだ 回り道して帰るか そして打ち上げの時にリナに聞いてみるか)
気まずいと感じたカンナは回り道をして帰り打ち上げの準備を済ませてリナとカリータと集合して一緒に向かうと高そうな店の前でクラスメイトの皆とシドウが待っていた
一つだけ気掛かりな事は斉藤が打ち上げには参加できないという事でシドウが言うには具合が悪いという事で最初は心配していたが打ち上げが進み酒を飲むにつれてそんな事は忘れてしまい楽しい時間を過ごしたのだった
楽しい時間は一瞬で過ぎていき辺りも暗く夜中になったので最後はシドウの言葉で締めくくりその日は解散となりカンナはリナとカリータと一緒に夜の道を帰っている
リナ「今日は本当に楽しかったねー」
カリータ「はい……少し名残り惜しいですけどまたこんな風に楽しくできたらいいですよね」
カンナ(……もう少しでリナとカリータ共お別れになるのか……それにもしかしたら……)
リナ「カンナ?また考え事してるの?」
カリータ「悩み事があるんなら相談して欲しいものだけど……」
カンナ「……悩み事といよりはさっきのお店でもっとたくさん食べれたかなーってね それよりもリナはパックと付き合う事になったのー?」
リナ「ちょっと!?何でそれを知ってるのよ」
カリータ「リナ!?本当なの」
本当の事は言わずに話題を変えるとリナは赤面してカンナの服を引っ張りカリータは驚いている様子だ
リナは隠すつもりだったようだが焦っている様子はもても可愛らしい
そんな事を話していると分かれ道が来たので三人は別れを告げてそれぞれの場所へと帰っていった
カンナ(明日は一応休みだから……明日エナに色々と話してみるか ちょうどいい所にシアがいる)
寮への帰り道を一人歩いていると同じ打ち上げの帰りであろうシアが疲れた様子で歩いているのが見えたので話しかける
シア「!? カンナですか ビックリしました」
カンナ「疲れてるね エナはいないの?」
シア「はい エナはまだクラスの方と飲んでくるそうです」
カンナ「そっか……もし起きてて部屋にエナが帰ってきたら明日学園の広場に来るように言っといてくれない?」
シア「……分かりました 私も……いえ 二人の方が良さそうですね」
シアは事情を察したのか頷いて自分の寮へと帰っていった
カンナもシアに色々と確認したいことがあったのだが疲れている様子だったのでそれを辞め部屋へと戻っていく
カンナ「斉藤さんは……いないな 具合が悪いって言ってたけどどこに行ったのかな?」
楽しい時間もあったがこれからを考えるとカンナは不安がありそんな気持ちを抱えながら眠りについて次の日の朝を迎えたのだった




