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第五十五話 競技祭3 隠れた才能


 コンテストに参加したクラス代表の五人は歓声に包まれながら次の競技の説明を受けていた


 次の競技は魔力飯早食い競争という競技である この競技は魔力を感じ取る能力を競うものであり参加者全員は目隠しをして食べ物に宿る魔力を感じとりそれを食べた量で順位を決定するというものである


 つまり魔力を感じ取る能力に加え食べる量や体力が無いといけない為楽しそうに見えて中々ハードな内容となっている


 カンナ(水着の女の子が五人か……アイドルのバラエティ番組とかでありそうだよな)


 カンナ、シアを含めた代表の五人はそれぞれ目隠しをされて一定間隔で並んでおりその間に魔力を宿している食材が並べられている


 カンナ(成る程 これはルーゼさんとの修行で身に付けたのが役立つかもな 弱い魔力だが大体の位置は分かるけど……場所が高かったりとバラバラだな)


 シア(運動能力などはカンナが上かもしれませんが負けませんよ!!)


 実況「それではよろしいでしょうか? 位置について……よーいスタート!!」


 スタートの合図がなり五人は一斉に走り出す、食べ物はあらゆる場所に配置されており身長が届かない場所にあったりする為全員が飛んだり跳ねたりしている


 カンナ(これはパンか?こんなの一口で……凄く美味しいや)

 

 シア(あと少しで届きそうなのに……)

 


 多くの人は食べ物を食べる様ではなく大きく揺れ動く物に注目しているが目隠しもあり必死な彼女達はその視線に気付いてない


 目の保養になるような光景に異常な量の歓声が上がっている裏でシドウは次の競技に出るリナの控え室に足を運んでいた

 

 リナ「どうしよう……どうしよう……大丈夫かな」


 シドウ「…………」


 本番を前にして不安になっているリナの独り言を聞いたシドウは黙って扉をあける


 リナ「先生!?どうしたんですか?」


 シドウ「少しな 緊張して肩に力が入ってるんじゃないかと思ってよ」


 リナ「……はい、とても不安なんです 現状は三番ですけど私が失敗したら大きく順位が落ちるんじゃないかって……」


 シドウ「そうか……今カンナが早食い競争で一番になったみたいだな」


 リナ「えっ!? だとしたらこのクラス初の一番が出たって事ですね」


 実況「この対決を制したのはEクラス代表のカンナさんになります素早さ食べる量のどれをとっても文句なしで他の追随を許さずぶっちぎりの一番です!! ここでEクラス初の一位を獲得し現在の総合順位は二位となりました」


 実況「やはりAクラスがずば抜けてますがこれから流れに乗って最初の宣言通りAクラスを倒せるのか見ものですね!!」


 耳を澄ますと実況の声が聞こえておりこの事がリナにとってはさらなるプレッシャーとなってしまう


 リナ「……このままの勢いで……か Cクラスをやっと追い抜いたけどまた追いつかれちゃうかも……」


 シドウ「水魔法が得意なサリーって奴がいるからか?」


 リナ「はい……あの人は優秀で学園一番の水魔法の使い手ですから」


 シドウ「確かにあいつはレージュ先生の所で一番優秀な生徒みたいだから手強いのは確かだろうな」


 リナ「せっかく一番をとって勢いづいてるのに私が失敗したらみんなガッカリしちゃうかも……」


 オドオドしているリナに対してシドウは軽くデコピンを喰らわせる


 リナ「あぅっ!? 痛いですよ先生」


 シドウ「ったく……フレイが言ってた事をもう忘れてしまったのか?」


 リナ「えーーっと……」


 シドウ「もしもクラスの誰かが一生懸命やって失敗しても文句を言わずにエールを送る!!」


 リナ「……そうでしたね 忘れていました」


 シドウ「それでもし嫌味を言う奴がいたら?」


 リナ「カンナの拳骨!!」


 シドウ「そうだろ?だが今のクラスは他クラスと違って一生懸命頑張るリナに文句を言うやつは一人もいないぞ!! 先生の俺が言うから間違いない」


 リナ「…………」


 シドウ「全力を尽くせばカンナを中心にして明るく迎えてくれるはずさ ここ1ヶ月頑張ってきたのは俺も知ってるから自分に自信を持つんだ」


 リナ「はい!!自分の全力を尽くして一位をとってきます!!」


 シドウ「よし その勢いで行ってこい!!大きく成長したところをあのサリーって奴とパックに見せてやれ」


 シドウはリナの背中を軽く叩いて気合いをいれさせさっきまでは曇っていたリナの表情は笑顔になっていた


 そして実況から声がかかったのでリナは覚悟を決めて控え室から出て行きシドウも見送りを済ませて観客席にもどっていった


 観客席に戻るとクラスで初の一位を取ったカンナを中心に盛り上がっている


 カンナ「クラスの初一位をとったぞー」


 カリータ「やりましたね!!流石です」


 カンナ「食べるのは好きだからね まだまだ食べれたと思うよ」


 グライス「本当に? だとしたら凄いな」


 マリア「そーね、でも他の五人のペースが落ちる中でむしろ上がっていたのが凄かったよ 流石に毎日の食堂で爆食いしているだけはあるね」


 カンナ「ははっ ありがとう おかげさまで丁度いい昼飯になったよ それで次はリナの番だよね?」


 マリア「はい……ですが相手が手強くてですね」


 グライス「そうだな 水魔法が一番得意なサリーが出場してるからなー」


 カンナ「あいつか……でも一生懸命にやってたリナなら大丈夫さ」


 シドウ「当たり前だろ リナが一番この競技に向いているから出てもらってるんだからな」


 カリータ「先生!?」


 マリア「さっきまで何処に行ってたんですか?せっかくカンナが一位を取ってきてこれからって時に」


 シドウ「ちょっとばかりリナの背中を押してきただけだ」


 カリータ「やっぱり……」


 シドウ「まあ静かに見守ろうじゃないか」


 実況「続いては幻影魔術コンテストです 出場者はどのようなアートを見せてくれるのか楽しみです」


 クラスの代表となる五人がグランドの中心に集まっておりその中には学年一の水魔法の使い手と同じゼミに所属するパックがいる


 このコンテストは水魔法を使った幻影を観客やゲストに見せる事によって点数を競う種目である


 先ほどと同様にゲストを含めた百点満点のうちの点数を競い一番高かった点数をもつ者が勝者となるのだ



 実況「それでは最初の出場者はDクラス代表のパック君です!!よろしくお願いします」

 


 パック「おし……やってやる(俺もリナに負けないように頑張るぞ)」


 カンナ「パックのやつもこれに出てるんだったな……これは手強いぞ」

 

 カリータ「二人共頑張ってほしいですが今はリナさんの味方です」


 同じゼミに所属する仲間として応援したい気持ちを持ちつつもパックがこれから見せる魔法に注目する


 パックは両手を地面に向けてかざし呪文を唱え始めるとグランドの中心に白い龍が出現する


 カンナ「すげえードラゴンじゃん!!」


 シドウ「あれは聖龍ホーリアーの幻影だな 中々やるじゃないかパックのやつ」


 カリータ「白く眩しい翼を持ち聖なる光で傷ついた人を癒していたとされている龍ですね……数十年前にその姿を見たと噂がありましたけど本当なのでしょうか?」

 

 カンナ「その龍は死んでしまったって事なの?」


 カリータ「知らないのですか!? 説明しますと龍族は長寿で聖龍ホーリアーはまだ生きているはずなのですが姿を見せない為伝説となっているのですよ」


 シドウ「それこそ千年以上前の時代はたくさんの種類の龍がいたとされているが大規模な戦争が起きてダイナ族、龍族、魔神族が大幅に数を減らしてしまったからな 今ではかなり珍しいだろう」


 カンナ「そっ そうなんですか…………パックは八十九点みたいですよ」


 話しているうちにパックの点数がでており高得点を叩き出しDクラスが盛り上がっている



 シドウ「魔法に関しては俺のゼミで一番だったから流石といったところだ」


 パック「結構良かったと思いたいけど後がどうなるのか……」


 リナ「凄い……でも私も負けない」


 サリー「あいつ 結構やるじゃない でも私の敵ではないわ」


 実況「お次はサリー選手の番です よろしくお願いします!!」


 名前を呼ばれたサリーは自身に満ち溢れた態度で真ん中に立ち呪文を詠唱し始めてしばらくすると神々しさを放つ人型の何かが出現する


 カンナ「何だこれ?ドラゴンの方がかっこいいじゃん」

 

 カリータ「何を言ってるんですか!? あれは千年以上前の記録で有名な神の姿ですよ」


 シドウ「学長の講義や数少ない記録からあれを作り出すのは至難の技だろうしかなりの努力をした事は伝わるぜ」


 カンナ「少し嫌な奴だけどちゃんと努力はしてるんだな……」


 実況「おおーっと ここで先ほどのパック選手を上回る九十五点の点数が叩き出されました!!」


 シドウ「おお……Cの奴らが盛り上がってるな」


 カリータ「それはそうですよ 誰が見ても文句を言えない完成度ですから……」


 サリー(勝ちは貰ったわ……そしてこの勢いのまま優勝するんだから)


 サリーの後に引き続いてA.Bクラスの生徒も審査されるが八十六点、八十八点とサリーの点数を超える者は現れずに次はリナの出番となってしまう


 カンナ「やっぱり九十点を超えるのも難しいんだね」


 シドウ「なーに心配するな リナのは更に凄いと思うぞ」


 カンナ「……そういえば先生とリナはずっと二人きりで教えてたな 見た事ないけど先生とリナを信じるよ」


 シドウ「まー見ておけ」


 自信溢れるシドウを見てクラスメイト全員がリナに注目し実況の声が響く


 実況「それではEクラスのリナさん!!お願いします」


 リナ「はい……」


 静かに返事をしたリナは中央に立ち雑音も聞こえない程の集中し呪文を唱える


 全員が見守る中呪文を唱え終えると人型の神々しい何かが現れるのだが


 サリー「フッ 私の劣化じゃない これなら一番は貰ったわ」


 カンナ「あれは……サリーって奴と同じのじゃないか」


 カリータ「ですけど 完成度がサリーさんと比べると粗い感じがします……」


 シドウ「よく見ろ まだ終わってないぞ」


 リナ「そうですね……まだあります!!」


 リナが片手を上に上げたので皆が注目していると


 カンナ「なんかあれ動いてないか?」


 違和感に気付いたカンナがカリータに話しかけるがカリータは「ただの幻影がそんなはずないですよ」と否定するがすぐに固まってしまう


 サリー「嘘よ……」


 リナが出現させた神々しい幻影は動きだして映像のように滑らかである


 カンナ「あれは……神が人を助けてるのか?」


 カリータ「そのようですね、あの生き物は恐らくダイナ族だと思われるので大昔の人間とダイナ族が神から力を授かる瞬間のようですね……記録の中からこのようなものを創造するとは流石リナさんです」


 シドウ「そうだな 想像力に優れ沢山の本を読んで知識があるリナだからこそできる事だからな」


 カンナ(確かに凄いな 人がどうやって動くとかどんな気持ちなのか風景やら色々と細かく作りこんでるのが俺でも分かるぞ……後あの男がパックに似てるところも面白いな)


 リナが創造した映像の中にはパックに似ている男がいるがそれに気付いたのはカンナとパック本人だけのようである


 グライス「確かに凄いけどあれは戦いじゃ使えないしなー」


 シドウ「確かにな だが失った者や忘れ去られた者達がたくさんいるこの世界ではリナのような人間や魔法が必要となってくると俺は思う」


 グライス「はい……俺には到底できないような魔法だしリナさんにこんな才能があるなんて気が付かなかったですよ」


 フレイ「ずっと一緒に過ごしてた私達が気付かなかったのにそれに気付くなんて流石のシドウ先生ですね」


 マリア「そうね……幻影を動かすだけでも相当なのに創造したものを作って違和感なく動かすなんて才能でしかないと思う」


 シドウ「だからリナをこの勝負に選んだんだこれで一位は間違いないだろう」


 シドウの言う通り九十八点の点数を叩き出したのでこの勝負はリナが一位となりAクラスに大きく近づいた


 あまりの点数に実況は言葉を失い代わりにEクラスの歓声だけが会場に響いている


 リナ「良かった……クラスの役に立てて良かった」


 サリー「こんなの認めない……だって私があんな奴なんかに」


 リナに歓声が送られる中サリーは挫折を経験してしまった


 そしてその事実を認めたくなかったのか気付くとリナに向かって手をかざし攻撃魔法の呪文を唱えていた


 カンナ「あいつまさか!? リナ!!危ない!!」

 

 リナ「えっ……」


 次の瞬間サリーが無意識に放ってしまった水魔法が大爆発を起こしてしまい会場がパニックになってしまうのだった……

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