第五十一話 特訓の日々
時間は朝の7時で街が賑う前の時間帯の街中を三人の学園生徒が走っている
カンナ「リナ パック 大丈夫か?」
その三人はカンナ、リナ、パックの三人でシドウのゼミに所属する生徒で一週間でゼミで行っていたトレーニングの量に慣れてきたので朝から早く起きて三人で学校が始まるまでトレーニングをするのが日課となりつつあったのだ
リナ「大丈夫 まだいける」
パック「段々とカンナのペースに着いて来れるようになってきたぞ」
カンナ「それじゃ俺は先に行ってるぞー二人共自分のペースで頑張って(中学の部活を思い出すな)」
リナ「行っちゃった……速いね」
パック「確かにそうだね……でも段々と着いて来れるようになってきたんじゃない?」
リナ「まだ合わせてくれてる部分もあると思うから私達ももっと頑張らないと」
パック「そう思えばカンナってかなり変わってるよね 魔法が少し使えて後は体術とかで戦うし時々口調が男みたいになるし」
リナ「確かに変わってるかもね……最初から私みたいな暗そうな感じの人間に構わず話しかけてくれたし」
パック「そうなんだ……それでリナも変わる事ができたのかい?」
リナ「うん……それまでは一人でいる事がほとんどだったから少しは変われたかも」
パック「いや……かなり変わったと思う」
リナ「そうなんだ……でもパックだって人と関わるようになったりしてかなり変わったと思う」
パック「それは……リナのおかげかもね」
リナ「えっ!? それってどういう……」
パック「いいから 無駄話せずに早く行くよ」
リナ「ああっ 待ってよー」
パックが話を途中で切り上げで先に向かったので後を追うようにしてリナはパックを追いかけていきゴールへと辿り着くとカンナが待っていた
カンナ「二人共お疲れ 水買っといたよ」
パック「ありがとう」
リナ「ハァ……ハァ……助かるよ」
リナは水を受け取ると地面に座り込んで休憩している
カンナ「そういえばパックはDクラスだったよな?競技祭に向けての雰囲気はどんな感じなんだ?」
パック「皆合宿のために心を一つにしてるよ そっちもいい感じ?」
カンナ「俺らも一緒だな、競技は何に出るの?」
パック「幻影魔術コンテストに出るつもりだよ、カンナは確かカリータと融合魔術に出るんだっけ?」
カンナ「それじゃリナと一緒なんだな、それと一対一の決闘のやつに出るよ」
パック「そうなんだ 特に決闘のやつは一番盛り上がるやつだからな 頑張れよ」
カンナ「うん、後そっちのクラスは誰が出るの?」
パック「別に教えてもいいか……勇者が二人と後は…………の三人が出るよ」
カンナ「そりゃそうだよな……優勝狙うなら勇者の人達を出すに決まってるよな」
パック「不公平だから そっちも教えてくれよ」
カンナ「そうだな、こっちは勇者の斉藤さんとカリータ、グライス、マリアの五人だけど斎藤さんが遠慮して他の人に譲ってたから分からないかも」
パック「そうなの!?偶然か分からないけどこっちのクラスの勇者の人達も何か遠慮してたんだよ」
カンナ「そうなんだ(何故だろう)」
パック「皆も勇者達の魔法とか見たいだろうにな」
パックの言葉に適当に相槌を打ち何故出場を拒否するのか考えるが分かるわけもなかった
そして時間は八時を回ったのでキリの良いところでトレーニングを切り上げて三人は直接シドウの教室へとむかっていった
シドウ「全員いるみたいだな、ならいつも通りのメニューをやるぞ 後カンナとカリータは普段よりも回数を増やしているからな」
教室には全員来ており少しだけ雑談しているとシドウも来ていつものように外に出てトレーニングが始まる
勝手に回数を追加され文句を言いたくなる二人だが何も言わずに回数をこなしていき全て終えると両腕を組んだシドウが待っていた
シドウ「カリータの体力がかなり上がったみたいだな」
カリータ「ハァ……ハァ……ありがとうございます」
シドウ「しばらく休憩したら二人で融合して俺にかかって来い」
カンナ「……上手くいくかな」
カリータ「とにかくやってみないと分かりません……が融合前の動きが少し恥ずかしいです……」
カンナ「そう?でもリナが考えてくれた動きが息を合わせやすいから仕方ないよ」
カリータは小さく頷きシドウが「まだか?」と圧をかけてきたので融合魔術の準備をする
カンナ「準備はいい?」
カリータ「はい……私から詠唱するので着いてきて下さい」
ゆっくりと頷き一呼吸おいてカリータが呪文を詠唱し始める
カリータ「我々は肉体と魂を一つに繋ぎ更なる力を望む者なり」
カンナ「二つの存在が一つなぎとなり生まれる命は人知を超えた存在となりて敵を蹴散らすであろう」
カリータ「魂の交錯よ!!」
カンナ「肉体の結合よ!!」
カンナ&カリータ「か弱き我らに大きな力を与えたまえ!!」
距離を取った二人は呪文を詠唱しながら綺麗に踊り最後の詠唱に合わせて背中合わせになり片手を繋いでその手を遥か上へと掲げる
そうすると二人は白い光に包まれ二つあった影は一つとなって気付くと一人の人間が立っていた
?「成功……したのかな?」
短い青髪と瞳を持ち服も青色と白をベースとした構成で白いマントを羽織っている姿が特徴的な女の子は試しに体を動かしている
シドウ「成功だな……それにしても凄い迫力だ」
?「おおー!! 体が軽い感じがします それに二人の能力を足しただけではなさそうですね」
シドウ「そういう事だ、取り敢えず時間が無いからかかってくるんだな」
?「いーや まず先に名前を決めないとですね」
シドウ「……そうか」
融合した姿でしばらく悩みカンナとカリータの二人の思考があるのか独り言を言い続ける
カリーナ「私はカリータとカンナでカリーナです!!」
シドウ「フッ……ならかかってくるんだ、もちろん全力でな!!」
融合で生まれたカリーナは返事をしてシドウに攻撃を仕掛けて四十分程度の模擬戦を行った
シドウ「ぐおっ!?……そろそろ時間だろうからここまでだな」
カリーナ「まだ時間は……」
シドウが最後の一撃を止めた所で時間がきたのか二人の融合は解かれて元に戻る
カンナ「ハァ……結構疲れたな」
カリータ「はい……息を合わせて攻撃するのは中々難しいですね」
シドウ「そうだな、中々難しい事だが最後の五分くらいからは結構良かったからその調子を一時間続けられれば最高だな」
カリータ「……恐らく私がカンナさんの思考に着いていけてないからですね……頑張ります」
カンナ「そうなのですか?でも確かに動きずらい時もあったような感じがする……」
シドウ「そうだな、カンナに違和感があるならカリータが合わせられてない証拠だ まだ時間はあるが無駄にはできないぞ」
カンナ「だな、それに決闘もあるしもっと特訓していかないと」
カリータ「はい!!クラスの優勝の為に頑張りましょう」
シドウ「それじゃ引き続き融合魔術の練習と自身の特訓も忘れずにな、俺は今から他の生徒に教えてくる」
そうして特訓の日々が続いていくにつれてカンナとカリータの融合魔術は完璧に近付いていきそれに加えて自身の特訓も行なっていった
特訓の内容は斉藤に魔法で強力な魔物を作ってもらうように頼みこんでひたすらその魔物と戦うという単純なものだったが沢山の数をこなしたカンナとカリータは大幅なパワーアップを遂げる事ができたのであった
斉藤「一応作った魔物には大怪我させないように命令してたけどこんなに強くなるなんて思ってなかった」
二人が作った魔物を倒したのを見て斉藤は驚いている
カリータ「手加減させてたのですね……それでも強くて硬くて手強かったです」
カンナ「確かにそうだね……それで斉藤さんは決闘には出場しないの?」
斉藤は申し訳なさそうに「はい……」と答える、理由は定かではないが決闘はせずに他の種目に出たいと理由をつけて本人は魔力障害物競争に出ることを希望したのだった
本人が無理だというなら強制させる訳にもいかないがクラスメイトが言うには決闘で貰える得点は高いので優勝を狙うなら斉藤には絶対出て欲しかったのだろう
斉藤「すみません 私のワガママを聞いてもらって」
カリータ「いえいえ 勇者の斉藤さんが出れないのは痛いですが私達で頑張るしかないですね」
カンナ「そうね(何でだろう……何かあるのかな)」
カンナは斉藤を怪しく思うがガレオスの城に行くことしか考えていなかった
本来なら決闘はカンナ、グライス、マリア、カリータ、斉藤の五人のつもりだったのだが斉藤が抜けた場所にはリナが入ってもらうことになった
リナは最初は自信が無さそうにしていたが「挑戦してみたい……」と言い決闘に出る事に決めたので決闘で戦う五人の生徒が決まり本番に向けて準備を進めていった
始めはフレイの名前が挙がっていたが「私は既に沢山の種目にでているから」と言い皆に見せ場を作る為かリナを指名した事によりリナの出場が決まったのだ
リナ「私も……役に立てるように頑張ります」
グライス「俺も負けないように頑張るよ」
マリア「グライスは男として勝たないと駄目だけどリナちゃんは精一杯やれる事をやれば大丈夫だよ」
リナ「でも……それだけだと優勝が」
フレイ「大丈夫です 私たちのクラスにそんな事で文句を言う人はいませんから自分の全力を尽くしてください」
マリア「そーよ もしそんな奴がいたら私が……いいやカンナの鉄拳制裁よ」
カンナ「フッ……その時は任せてくれよ(どんな汚い手を使ってでも勝つからな)」
グライス「マリアは自分の手を汚したくないだけなんじゃないのか?」
マリア「な訳ないじゃない!!カンナの拳骨が痛いからに決まってるじゃん」
カリータ「とにかく私達に優勝がかかってますので張り切っていきましょう!!」
こうしてそれぞれの魔法の特訓に明け暮れているとあっという間に三週間が過ぎていきいよいよ魔術競技祭の日となる




