第三十三話 その名はカンナ
潜入するという目的のため海斗はクシアから女体化の魔術を受けていた
クシアは初めてこの魔術を使い海斗の体の変化にとても驚いているようだ
海斗?「クシアさん…… うわあっ!? 」
女の子のか細い声に違和感を感じながらも立ちあがろうするが上手く立てずに前に倒れてしまう
ルーゼ「重心が前の感覚と違うから上手く立てないみたいだな……」
海斗?「そうなのか…… でもこの胸本当に邪魔なんだけどどうにかならないの?」
何とか立ち上がり大きな胸を揺らしながらルーゼに訴えるが何だか気まずそうにして視線をそらしている
アスフェア「筋肉が全部オッパイにいっちゃったんじゃないの?……なんか女になったあんたが意外と可愛くてムカつくわ」
普段は生意気な口を聞くアスフェアもなんかやりにくそうにしているとクシアが大きな鏡をもってきて全身を見せてくれた
海斗?「………若干妹に似てるようで全然違うな というか面影が全くないぞ」
エナ「お待たせー……ってもう女の子になっちゃったの!?」
エナは何故か海斗が性転換をすることを知っていたようで状況をすぐに理解したが
エナ「とんでもない格好になったわね…… 仕方ないけど取り敢えず着替えたほうが良さそうだね 皆目のやり場に困ってるみたいだから 私の服貸すから着いてきて」
体が大きく変わったからか服のサイズが合っておらずだらしない格好になった海斗?をエナは自分の部屋へと連れて行ったのだが
エナ「少しだけど……もう少しなんだけど…サイズがあわない……というか何で海斗のほうが私よりも色々と大きいのよ」
海斗?「そんなこといわれても仕方ないだろ……」
エナが持つ服を試しに着てみると何とか着ることは可能なのだが少し小さいせいでかなりピチピチである
エナ「それに下着も買わないとね……」
色々と買わないといけない物が増えてしまったのだが何故かエナは少しだけ不機嫌そうにしている
海斗?(トイレがしたくなってきた)
海斗「えっ……まじか」
トイレに行こうとして下半身を意識するとアレが無くなっている、男なら誰にでもついてるアレである
海斗?(ちょっとまってくれ性転換したとはいっても全部女の子になるの?確かにこんな見た目でついてるのは意味が分からないけどまさか体の隅々まで変化するとは思わないだろ)
海斗?「ちょっとトイレに……」
エナ「うん…………着いてきてほしいの?」
モジモジしながらエナを見つめると意図を読み取ってくれたようでトイレまで着いてきてくれた、そしてやり方や処理の仕方などを教わったのでエナには頭が上がらない、しかしこの年になってからトイレのやり方を教わるなんて前代未聞だろう
海斗?「ありがとう エナには何でもしてもらってる気がするよ」
エナ「別に気にしないで……それよりもマールさんが呼んでたから早く行こう」
マールの元へと向かうとクシアが先に来ていて学園で調査する三人がマールに呼ばれているみたいである、マールが言うには推薦で学園に行くために学園の教師達と面接をしなければいけないらしいので今から違和感のでないために一人ずつ軽い質疑応答を行っていがなければならないらしいのだが……
マール「……論外 あなた怪しすぎるわ まずは喋り方を女性らしくしなさいあと 脚は開かず揃える 頭を下げる時の手は横じゃなくて前よ」
エナとクシアは何の問題もなかったのだが中身は男である海斗は不自然な受け答えになってしまうのでかなりダメ出しをくらっている
海斗?「いきなり そんな事を言われてもよー……」
文句を言っていても仕方ないので必死に頭を回転させるマール、クシア、エナの指導もあり何とか最低レベルの質疑応答ができるようになった
最低レベルなのでまだまだ改善しなければならないのだが……
マール「まぁこればかりやっても仕方ないか……そう 後は書類の写真と…… そうだったクシアと海斗は本名じゃなくて偽名を使わないと」
海斗?が指摘されまくって疲れてしまっているのを気の毒に思ったのかマールは別の事をやろうとする
海斗?「確かに女性の名前じゃ無いもんな」
クシア「私も王子に覚えられてますからね……」
マール「そういうことよ 名前を考えたら言いなさい 書類に書くから」
海斗?(女の子らしい名前かー……全く思いつかないぜ……いっそ妹の名前を使うのもいいけどそれだと異世界人ぽくないからなあ……そういえばよく見ると俺らの世界の女優に顔が似てる気がするな……決まったぞ)
海斗?「決まったよ カンナって名前はどうだ?」
クシア「良い名前じゃないですか 私はクを抜いたシアって名前しか思いつきませんでした」
マール「二人とも悪く無いセンスだと思うわ カンナとシアって名前で書類を提出するわ」
カンナ(あっさり名前が決まったな、これからは海斗改めカンナとして学園で生活するのか…… 早く慣れるといいんだが……)
名前が決まり今日はもう解散という事でこの様子を見ていたアリスがカンナに話しかけてくる
アリス「海斗お姉ちゃんになっちゃったね」
カンナ「そうだな……じゃなくてカンナお姉ちゃんだぞ」
カンナ(名前がにていて紛らわしいけど慣れていくしかないか)
なんやかんやあったがこの後はアリスと遊んで明日に備える事にした 女性になったからか知らないがアリスが普段よりも懐いてくれているように感じた、そして次の日
マール「面接は大丈夫ね(多分)というよりこの試験が一番問題な気がするわ」
マールが言うには魔術の適正試験というのがあって基本魔法の出力と自身の得意な魔法を最大で三つまで面接官にアピールするというものらしい……
マール「大体は大丈夫そうね 海斗じゃなくてカンナは風と火意外のもう一つをアピールできたら文句ないわね」
カンナ「これはどうですか?」
カンナは集中して手から魔力による剣を作ろうとするがマールと戦った時ほど大きなものではなくナイフ程度の小さな刃しか出せない
ルーゼ「俺ほどではないがそれなりにできるようになったな、でもそれは魔法とは言えん どっちかと言うと技だな」
マール「そうね……体術と魔力を合わせた専門の技を学ぶ講義もあるけどそれはあまり人気がないわね……まあそんなことはどうでもよくてこれくらいできたら多分大丈夫だとおもうから胸を張って行きなさい」
そうして三日後に三人は面接を受けてセルク村へ戻ってくる、結果は三人とも合格をもらえたようで来週から転入生という形で学園生活を送ることになるそうだ
エナ「いよいよ来週からだね!」
カンナ「(正直落ちるとおもってた 以外とカモなのか?)」
面接での手応えがなかったカンナ拍子抜けしていた、それもそのはず面接での質問の答えは滅茶苦茶で魔法の試験では面接官が頭を悩ませていたからだ
シア「エナさんが楽しそうでよかったです」
エナ「クシア……じゃなくてシア!学園ではさん付けじゃなくて呼び捨てで呼んで欲しいな」
そんな事も知らずにエナとクシアはこれからの学園生活を楽しみにしており盛り上がっている
シア「そーですね さん付けだと怪しいですからね」
エナ「いや……そういう訳じゃなくて今までずっとさん付けだったし 私だけ呼び捨てするのもなんか嫌だから……」
シア「分かりました これからエナって呼びますね それなら海斗様……いいえカンナも私のことはシアと呼んで欲しいです」
カンナ「そーだな 俺もずっとさん付けで呼んでたしこれからはシアって呼ぶことにするよ」
エナ「うん……これから二人ともよろしくね」
学園生活を前にして三人の距離はさらに縮まったようである、そして準備ややることをやっていると時間はあっという間に過ぎてゆきいよいよ明日が学園に転入する日になった
ルーゼ「とうとう明日だな 皆頑張ってくるんだ」
マール「そうね あなた達の目的はソルセリの調査だけど学園生活を楽しむってことも大事なことだと思うわ……後は怪しまれないように」
送り出す二人の言葉をしっかり聞いていよいよソルセリへ出発しようとすると思い出したかのようにルーゼがカンナを呼び止める
ルーゼ「そうだった 海斗じゃなかったな……カンナお前にはこれを渡しておく」
ルーゼは小さな袋をカンナに渡す、中身を見ると大きめのアメ玉が何個かはいっていた
ルーゼ「それを飲み込むと一時間ほどの短い時間だがお前は元の姿に戻ることができる……今のお前は長所の身体能力が並程度になっているからな もしどうしようもない状態になったらそれを飲み込め いいな?」
カンナ「これで戻れるのか でもチャンスはあまりないから使うタイミングは選ばないといけないって事か……」
ルーゼ「そーだ あくまで最終手段としてだからな大事にするんだ」
もう言い残すことは無くなったので三人はソルセリへ向けて出発する
マール「アリス…あなたは挨拶しなくてよかったの?」
アリス「いいの……ずっとカンナ姉ちゃん達に甘える訳にもいかないから」
マール「ふふっ ならこの子の世話をきちんとしないとね……」
マールは微笑みフェンリルを撫でている、カンナ達が調査に連れていくわけにはいかないのでアリスにお世話をさせる事にしたのだ
アリス「私……頑張る」
見送るアリスが寂しそうなのが伝わってくるが我慢して明るく振る舞っていた、マールはアリスの成長を感じ深くは突っ込まずアリスと共に三人の背中を見送る
そして新たな体新たな環境で異世界での学園生活が始まろうとしていた




