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第三十話 姉妹喧嘩




 昨夜にアリスと遊んだせいで夜中に寝る時間が少なくなってしまったエナとクシアは寝不足の朝を迎えていた


 エナ「うぅ…眠いなぁ」

 クシア「おはようございます…確かに眠いですね…」


 早起きなこともあり3時間ほどしか寝ることができず何とか起きることができた二人だが海斗の姿が見当たらない


 クシア「……まだ寝てるのでしょうか?」

 エナ「おそらく…」

 



 二人は起こしにいこうとするが今から起きて準備しても間に合わないことは分かっていたので諦めて先に行ってしまう


 ――2時間後――

 海斗「んん…よく寝たぜ…………あっ」


 時間を確認すると就業時間から一時間も過ぎている、しかしギリギリだと慌てるが大きく寝坊をするとかえって冷静になり


 海斗「……そーだ エナかクシアさんのどっちかが寝坊してる……かもしれない」


 一緒なら怖くないの精神で二人の部屋を期待を込めて入るが期待は外れ渋々ルーゼの元へと向かう、一時間の遅刻でかなり叱られて最悪な一日のスタートを向かえる


 ルーゼ「昨日から気が抜けてるんじゃないか?」

 海斗「ははは……すいません」



 ルーゼから叱られてしまうが苦笑いで誤魔化す、朝飯を食べる余裕などなかったので腹ペコのまま過ごして昼の時間になる


 



 エナ「アリスちゃんは来ないのかな……後起こせなくてゴメンね……」

 海斗「俺が起きれないのが悪かったんだから気にするな………アリスはきっと来るよ」


 昼ご飯の時間にエナが話しかけてくる、昨日は姉と話し合いを恐れている様子だったが海斗には信じて待つことしかできなかった


 そして時間が経ち夕方になって日が落ちようとした頃にアリスはやって来る


  アリス「……マールお姉ちゃん」


 全員が夕食を食べている時間にアリスは現れる、海斗達は頑張るアリスを優しく見守るがマールはかなり動揺しておりルーゼとベルは事情を知っているのか驚いている様子だった


 マール「何故ここにいるのかしら、出てはいけないと言ったはずよ」


 皆の目も構わずにアリスの言葉を遮り睨みつけながら質問を返す


  アリス「うっ…私は外に…出たいの……あんな小さな部屋なんかじゃなくて色んなとこに行きたい」


  震える声で自分の意思を示すアリス、この様子を心配そうに見ていた海斗達だがこの瞬間にガッツポーズをする、しかし……


 マール「………… 駄目よ」

 アリス「……それでも私は」


  マール「何度言ったら分かるの!!駄目って言ってるでしょうが 大体あなたは人前にでてはいけない存在なの

に」


 海斗(人前に出たらいけないだと!?一体どういうことだ……でも)


 マールはらしくない大声でアリスを怒鳴る、しかしその言葉を聞いた海斗が……


 海斗「おいあんた…いやマールさん アリスは妹なんだろ?何故あんな場所へ閉じ込めてる?それに人前にでてはいけないってどういうことだ?」


 マール「何よあんたは……妹ですって?私とアリスが?そんな訳ないじゃない」


 アリス「えっ…………」


 堪らず姉妹の間に割り込むがどうやらそうじゃないことにアリスは驚いている


 マール「…………成る程ね大体のことは分かったわ、あんたがアリスに余計な入れ知恵をしたのね? そうでしょ?」


 海斗「あぁそうだよ夜中に泣いてる少女の声が聞こえたから事情を聞いて外に連れ出したんだ」

 エナ「(最初は幽霊と勘違いしてたくせに)」


 マール「外に連れだしたのか…もうお前は殺さないとな」


 ベル(散々入るなって警告したのに……全くあいつは)

 

 外に連れだした事実を知った瞬間にマールは海斗を殺そうと魔力を使い海斗に攻撃する、海斗は咄嗟にガードするが屋敷の壁を突き破り外の平原まで吹っ飛ばされてしまう




 マール「おい!!そこの小娘二人も同伴か?」


 鋭い眼光で二人は睨みつけられるが二人は恐れずに首を縦に振り本当のことを話す


 マール「まあいい お前ら二人はそこで大人しくしていたらここでの記憶を消すだけで命は助けてやる さっきの奴の死によってな」


 エナ「そんな……少し待っ」


 止めようとするエナだったがそれを無視してマールは海斗を殺すために平原へと飛んでいく


 エナ「ルーゼさん!!どうにかならないんですか?」

 ルーゼ「ハハハ 君達!!アリスを連れ出したのか」


 必死にエナは訴えるがルーゼは笑っている


 エナ「何で笑ってるんですか!!」


 ルーゼ「失礼、何だか君達を見てると昔を思い出してしまったよ」


 似たような過去があるのか海斗達に自分の影を重ねて懐かしんでいる

 


 ルーゼ「俺とベルが過去に何回もマール様に言ってきた事を躊躇いもなくやったのか……でもこれはチャンスかもしれないな、もしもアリスがマール様を説得できれば可能性はあるかもしれないな」


 アリス「……そんなこと……」


 アリスが説得できれば可能性はあるかもしれないが本人は自信を無くし落ち込んでいる


 クシア「大丈夫 今さっき気持ちをきちんと伝えることができたのですから今度はもっと大きい声でハキハキと言ってみましょう そうすればきっと分かってくれるはずです」


 アリス「……そうなのかな……」


 エナ「お願い!! 海斗を救えるのはアリスちゃんしかいないの……どうかお願い」



 アリス「そっか……ぶつかってみないと分からないってお姉ちゃん達に教えてもらったから……頑張る」


 クシアの励ましとエナのお願いを聞いたアリスは外へ飛び出し平原めがけてひたすら走る


 クシア「私達も行きましょう」


 ルーゼ「アリス!!自分の精一杯の気持ちをマール様にぶつけてみるんだ」



 アリスの後を追うようにしてルーゼ、エナ、クシアも平原へと向かっていく……一人のメイドを残して


 ベル「全く……派手に壊しましたね」


 その一方で海斗はフェンリルと散歩した平原まで猛烈な勢いで吹っ飛ばされたが上手く着地してあたりを見回す



 海斗「やっぱりマールって奴はただものじゃなかったな…だとしたらアリスも」


 しかし考え事をする暇もなくマールが飛んでくる


  海斗「やってくれたな村長のマールさん……いいや魔族め」


 マール「へぇー 気がついていたのね」


 海斗「会ったときから違和感があったからなそれにアリスも」


 初めから気付いた訳では無かったようだが今の禍々しい魔力を放つマールを見たことで確信に変わったようである


 マール「気付いていながらどうしてアリスを外に連れ出した?貴様もアリスを奴隷として高値で売る気だったのだろう?」

 海斗「奴隷?そんな馬鹿な事やる訳ないだろ!!この世界にきて同じ妹を持つ者としてあんたのやっている事が気に入らなかっただけだ!!」


 マール「(この世界に来ただと?まさかこいつは……)」


 海斗「事情があるのかもしれないけど十年間もあんな狭い部屋に閉じ込める姉がいるか」



 マール「ふん たったそんなことで私を分かった気になるなんて馬鹿馬鹿しい それに妹ではないと言ったはずよ」


 マールは鼻で笑い再び海斗に魔力攻撃を仕掛けてくる


 海斗「ぐっ!! 強いな」


 黒い魔力弾をガードするが直撃するたびに大爆発を起こし平原の至る所に大穴が空く



 マール「あなたもただの雑魚って訳じゃないようね」

 海斗「どうも(浮いてるやつはどうやって攻撃すれば)」



 空中から魔力弾を一方的に撃たれるばかりで何もできない状況が続く、赤雷を上手く使って何とか避けるがマールの攻撃は激しくなるばかり


 マール「さっきからチョコチョコと鬱陶しいやつ、これで突き刺して終わりにしてあげる」


 マールが手をかざすと魔力によって黒い槍が現れる、武器を手にしたマールは海斗めがけて槍を突くが海斗は影からセルク村で五ゴールドで購入していた剣を取り出して防ぐ


 マール「その程度の武器なんかすぐに壊れるわよ?」

 海斗「クソッ!!たったの一撃で(安物なんて買うんじゃなかったな)」


 受け止めたのは良いが一回の攻撃で取り出した剣に割れ目ができてしまい安物を買ってしまったと後悔するが今しても遅い


 次の攻撃には耐えられそうにないと判断した海斗はヤケクソで剣を投げるがマールに弾かれる




 マール「あらら粉々になったわね」


 武器を無くした海斗にチャンスとばかりに攻撃を仕掛けるマール、しかし武器を無くしても何とか避け続け反撃のチャンスを伺っていた


 海斗「(相手の槍は長いから懐に入ってしまえば)」


 槍の弱点をついて懐に入り攻撃をしようとするがマールの反応が早く蹴り飛ばされてしまい



 マール「悪くはないけど 相手が悪かったわね  バイバイ」


 蹴りとばされて倒れた海斗に向かってトドメを刺そうと心臓めがけて槍を突く


 咄嗟に素手でガードしようとすると手に魔力が宿って纏う事に成功し攻撃を防ぐことに成功する


 海斗「これは……ルーゼさんと同じ」


 死にかける思いが力を引き出したのか海斗の手の周りにルーゼが以前見せた時と同じように魔力による剣ができている


 マール「そんなことが出来たところで結果は同じよ」

 海斗「やってみなきゃ分かんねえだろ」


 新たな武器を手にマールと斬り合いを続ける、魔力を纏った海斗の手刀はさっきの剣よりも丈夫で自身の思うように動かせるのでマールと互角に戦い続けているとアリスが到着する


 


 アリス「お姉ちゃん辞めてよ……これ以上海斗兄ちゃんを傷つけないで」


 マール「アリス……」


 アリスが来たことによってマールは攻撃を止めアリスに注目する




 アリス「こんなことしてても意味ないよ……」

 マール「何を今さら……これは全てあんたのためなのよ」


 アリス「本当は分かってる……けど私のことをきちんと受け入れてくれる人がいるかもって思ったらまだ希望はあって……外にでても良いって思ったの」


 マール「何でわからないの!!あなたは外に出ると人間から迫害を受けて辛い思いをするのよ、そうなるくらいならあの部屋で震えて泣いていた方がまだマシじゃない!! 」


 感情的になって声を荒げるマール、過去に何かがあって苦しい決断をしたということが伝わってくる


 海斗「………………」


 アリス「でも震えて泣いていた私を見つけてくれて連れ出してくれたのも人だよ!!」


 エナ「アリスちゃん……やっぱり」


 エナもアリスの正体に違和感を持っていたのでこの会話を聞いて確信を得る


 マール「…………そう 分かったわ」

 アリス「……お姉ちゃん分かってくれたの!?」


 マールの言葉に目を輝かせるアリスだが……

 マール「その希望を無くしてあげる」

 アリス「えっ…それってどういう……」


 アリスの言葉を聞くこともなくマールは強力な魔力弾を次はエナに向かって放つ


 エナ「えっ……」

 海斗「しまった」


 完全に油断していたエナは魔力弾を避けることができず目の前で大爆発が起きる


 アリス「エナお姉ちゃん!!」

 マール「大人しくしてろって言ったのに、あなたの料理は美味しかったけど……残念だわ」


 しかし間一髪の所でギリギリ間に合った海斗が体で盾になって弾を防ぐことに成功した


 エナ「うっ…ゴメン完全に油断してた」

 海斗「良いって……直撃じゃなくて良かったよ」


 ルーゼ「ふっ……やはりな(こいつは危機的な状況だと潜在能力が引き出されるタイプか)」



 しかし爆風に巻き込まれてしまい海斗とエナは傷ついて倒れてしまう、ルーゼはエナの隣で海斗の能力の引き出し方を完全に理解したようだ

 

 マール「しつこい奴ね」

 アリス「嘘……海斗お兄ちゃんとエナお姉ちゃんが……」


 海斗とエナが傷付き倒れたのを見てアリスは「死んでしまったの……マールお姉ちゃんが二人を殺した……」と勘違いしてしまい生まれて初めて怒りの感情が湧いてくる


 アリス「救ってくれたお姉ちゃん達にあんな事するなんて……絶対に許さない」

 マール「救ってくれた?あんたふざけてるの?」


 アリス「うるさい!!お姉ちゃんにも痛い目にあってもらう」


 マール「……ふっ あんたも生意気言うようになったじゃない」


 怒りの感情を覚えたアリスは大地を蹴り上げ凄まじい速度でマールに突っ込んでいきその場所には大穴が空いていた


 クシア「あれがアリスちゃんなの……でもあの覇気と魔力はもしかしてダイナ族の……」

 

ルーゼ「そうだな、アリスは古の時代の……この話はまた今度だ」


 アリスの豹変ぶりにクシアは驚いてそれに対してルーゼは意味深なことを言おうとするが途中で辞める


 ダイナ族と呼ばれたアリスは怒りのままに叫んでマールを攻撃する


 アリス「うああああっ!!」

 マール「あうっ!? さすがはダイナ族、とてつもない強さね」


 怒りのままにマールに攻撃をするアリスはとてつもないスピードとパワーでマールを圧倒している、まるでその戦い方は本能のままに動く獣のようだった


 マール「ティラ…ゴメンねあなたの妹を傷つけてちゃった……」


 アリス「お姉ちゃんなんて嫌いだあーーー!!」


 

 マールは泣き目になって誰かに謝るがそんな事も聞かずにアリスが渾身の力でマールを殴ろうとすると


 ルーゼ「アリス!!落ち着きなさい」


 間一髪のところでルーゼが助けに入りマールを抱いてアリス拳を避ける事に成功する


 アリス「何で!!海斗お兄ちゃん達を殺したんだよ!!」


 ルーゼ「大丈夫、海斗とエナは死んでない それにあのまま殴って下手したらマールお姉ちゃんは死んでたかもしれないよ」


 アリス「はっ!!」


 フルパワーで殴った地面には隕石でも落ちたかのような大穴が空いておりそれを見たアリスは怒りで自分を制御できてなかった事に気付く


 ルーゼの言葉によって冷静さを取り戻したアリスは普段のオドオドした様子に戻り


 クシア「はあっ はあっ 大丈夫ですか?」

 アリス「うあああーーん」


 後を追ってきたクシアに泣きながら駆け寄るそれを見たクシアは優しく受け止めて頭を撫でる


 クシア「よしよーし…はっきり言えた?」

 アリス「うん でも海斗兄ちゃんとエナ姉ちゃんが……」


 ルーゼ「さっき……死んでないって言ったじゃないですか……ほら海斗寝てないでさっさと来い」


 クシアに抱きついたアリスはさらに泣き続ける、どうやら死んでしまったと勘違いしているみたいである


 海斗「全くもう……アリス 何で泣いてるんだ?」


 アリス「……あれ?生きてる?でもさっき倒れて……もしかして幽霊!?」


 海斗「何で幽霊なんだよ」


 エナ「アリスちゃーん 私達は少し寝てただけだよ」

 アリス「本当に?」


 本当なら幽霊ということにしてアリスの反応を見たかった二人だがキラキラした笑顔を見ると良心が痛んでしまい逢えなく断念する


 マール「ルーゼ……ありがとう」


 ルーゼ「いえいえ  マール様もう一度考えてみませんか?私もこれまでの行いがアリスのためになるとはとても思えませんし本当の姉のティラもこんな事は望んでないはずです 」


 マール「そうねもう一度向き合ってみるしかないわね……後この騒ぎの事も住民にも詳しく伝えないとね」


 


 ルーゼ「ですね……それであのもの達はどうするんです?」


 マールをお姫様抱っこしたルーゼは海斗達とアリスの方をみる、目線の先には泣いているアリスと海斗達がそれを必死に慰めている様子が目に入る

 

 マール「……それは……明日決めるわ今日はとりあえずいつも通り泊まるように伝えてくれないかしら」


 初めてアリスと衝突したことで気まずくなり自信を無くしたのかマールは小声で指示を出す


 ルーゼ「なんか色々あったが後はいつも通りに過ごしてくれ 以上だ」


 ルーゼは大声で話し全員がキョトンとしている中マールだけいじけた様子で屋敷へと戻っていった


 海斗「なんか色々と納得できないけど」


 エナ「まあいいんじゃない?生きてるし」


 アリス「気持ちは伝わったのかな……」

 クシア「大丈夫ですよきっと」


 ルーゼ「取り敢えず明日話したいことがあるそうだから昼に食堂に集まって欲しいそうだ……後明日は全員休みだ」


 本当に色々あって言いたいことがたくさんあるのだが何とかなったので特に気にしない事にした


 海斗(何とか上手くいったかな……でも屋敷って派手にぶっ壊れていたような……)


 海斗「えぇ……」

 エナ「あれ?」


 しかし派手に壊れていたはずの屋敷は何故か何事も無かったかのように元通りになっている、ルーゼも驚く様子がなく当たり前のようにしていたので特に突っ込むこともせずにその日は地下室で海斗、アリス、エナの三人で川の字になって寝ることにした

 

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