第二十二話 新たな目的
お互いに首飾りをつけた二人の心の距離は大きく縮まり村の中で幸せな時間を過ごしていた
日が沈んできたのでまだ明るかったが二人はルーゼから紹介された宿に戻る事にして歩く
宿屋に到着し部屋にはいると先にアスフェアとクシアがフェンリルを甘やかしており幸せそうにしていたのだが
アスフェア「ちょっとあんた達 そういう事するなら他の場所でしてもらわないと」
扉を開けたのでアスフェアがこちらに気付いたが驚いており色んな事を想像してここから出て行くように言う
エナ「ちょっと!!まだそういう事は……しないから」
アスフェアの言葉の意図を読み取れたエナは慌てて否定をしている、恥ずかしさのあまり今にも顔が爆発しそうである
しかし海斗はどんな事か分かっておらずポカンとしていた、この男にはハッキリと伝えないと分からないようである
クシア「何か分かりませんが二人とも落ち着いて下さい それと今からこれからの目的について話したいのですが」
今までは情報を集める、怪我を治す、手紙を届けるなどの目的に向かって行動しており手紙を渡してからは特にこれといった目的がなくなっていた、しかし何も考えてない海斗は取り敢えず王都に戻ろうと考えていたのだが
クシア「それでこれからについてなのですが……」
クシアがこれからの目的について話そうとしていると部屋の扉が勢いよく開く
ルーゼ「おい お前達全員いるな!?」
先ほど手紙を渡したルーゼがいきなり宿屋へと入ってきた
海斗「あなたはルーゼさんじゃないですか どうしたのです?」
いきなりやってきたルーゼに驚き質問する海斗だが
ルーゼ「全員いるのなら良い 俺に着いて来てくれないか?」
突然のことに全員が疑問をもったが特に用事もないので着いていくことにした、海斗達はルーゼの後を着いて行きルーゼは海斗達と会ったお屋敷の前まで行くと
ルーゼ「お前は異世界から召喚された勇者でこっちが天使か?それとお嬢ちゃんがフラガの店で働いてた娘であってるのか?」
海斗「そうだけど 何故そのことを?」
隠さなければいけない正体を見破られ海斗とクシアは戸惑ってしまう
クシアは(隠さないといけないのに色んな人と会う度にバレている気がします……)と心で落ち込んでいる
ルーゼ「フラガからの手紙でお前達のことが全て書かれてたからな」
エナ「店主の手紙で」
海斗「店主の手紙だったのか‥ そういえばどんな内容が書かれてたんだ?」
忘れていたが初めはどんな手紙の内容なのか気になっていた海斗達はここで手紙の内容を知ることとなる
ルーゼ「まー 要約するとだなお前らのことを宜しく頼むってことだ」
海斗「えっ!」
エナ「私達のことを?」
衝撃の内容に驚く海斗達しかしまだまだ内容は続く
ルーゼ「そこの海斗とかいうやつ一回俺と戦ってみろ 実力を見たい」
海斗「えええ!?いきなりどうしたのですか?」
ルーゼ「フラガの手紙によるとあいつはお前を俺に鍛えて欲しいとのことだ」
海斗「店主!? 一体どんな意図があるんだよ」
ルーゼ「意図など俺には分からん でもお前は強くなりたいのだろ?」
海斗「そうだな でもあんたはそんなに強いのか?」
ルーゼ「こう見えても元はプラチナランクの冒険者としてフラガと一緒に旅をしてたんだぜ」
エナ「ルーゼさんがプラチナランクの冒険者!?という事はフラガ店長も……」
エナの質問に「そうだ」とルーゼは答えたので身近に最高ランクの冒険者がいた事に衝撃をうける
アスフェア「あれって適当な嘘だとおもってたけど本当のことだったのね」
ルーゼは古びたプレートを見せながら自慢げに話した、そのプレートをみたエナとアスフェアは実力と経歴は本物だと確信する
海斗「そんなに強い人から教われるのは良い機会だな(プラチナランクとかの意味は分からんが)」
ルーゼ「俺も異世界から来た勇者のことは気になっていたんだ、どんな戦いをするのか見せてもらおうか さぁかかって来い」
海斗「 それならいくぞ!!」
海斗は脚に力を入れ戦闘体制に入りルーゼに正面から突っ込んでいく
相手が剣を持っていない事を考慮してか拳を握りしめて正拳突きをする
ルーゼ「ほーう」
海斗の拳を受け止めたルーゼは見定めるように海斗を見る、そして一切反撃することなく時間は過ぎて
海斗「はぁっ あんた反撃しないのか?」
ルーゼ「そこまでだ 」
攻撃をし続けて息切れをしている海斗に対してルーゼは余裕の表情を浮かべている
海斗「それでどうなんだい? 異世界の勇者ってのは?」
ルーゼ「お前‥ センス無しだな」
まさかの評価に海斗は同様してしまう
ルーゼ「第一にお前は魔力を全く使えていない勇者の高い身体能力で暴れているだけだ、後お前には素早さが無いなパワーならかなりあるがそれまでの動きが遅い お前の大まかな課題はこれだ」
そう指摘されて過去の戦闘を振り返って見ると自分一人の力で倒せたというのがほとんど無く仲間ありきの連携で敵を倒してきたという事に気がつく
海斗「魔力が全く使えてないのか……くそ」
この魔力が扱えてないというのは王国軍隊長のティトスから指摘されていたのだがティトスが(魔力操作は致命的だが身体能力だけが特化しているタイプか……弱点を克服させるべきか長所を伸ばすのどちらかだな)と悩みに悩んだ結果長所を伸ばす事にして主に体力を使う訓練を多く受けていたのだ
自分はある程度強いと自惚れていた海斗だが格上から現実を叩きつけられ自信を無くしてしまう
ルーゼ「逆にいえば魔力を使えるようになれると大幅に強くなれるということだ」
海斗「でも……やり方が分からねえんだよ」
海斗自身も弱点を克服しようと絵美や武など他のクラスメイトにコツを教えて貰おうとしていたが全員が感覚でできていたので海斗にどう教えたら良いのか分からない部分もあってか一人だけ基礎スペックが高いが魔力を全く扱えない勇者が誕生したのだ
ルーゼ「やり方を俺が教えてやるからまずはニ週間ここの屋敷に泊まるんだ」
海斗「ここにニ週間?」
ルーゼ「そうだ ニ週間ここで警備の仕事をしつつ俺と特訓だ 金も稼げて一石二鳥だろ?」
海斗「でもその二週間で魔力は扱えるようになるの?」
また二週間の訓練を受ける事になるかもしれないが王宮でできなかったのに今更教わっても習得できるのか自信が無い
ルーゼ「心配するな 特訓はお前の飲み込み次第かもしれんが俺もお前と全く同じだったからだ」
まさかの事実に衝撃が走る、しかし先程は勇者である海斗の攻撃を軽々しく受け止めていたので身体能力は相当なものだと分かる
海斗「分かったよ……あんたを信じて全力で頑張るよ」
海斗はルーゼを信じて特訓を受ける事を決めるがその後ろからエナとクシアがひょっこりと顔を出して
エナ「海斗が特訓するのは分かったけど……私達はどんな特訓をするのですか?」
クシア「そうですね こちらも強くならなければいけないのは事実なのでお願いします!!」
強くなるという新たな目的ができたので色々話そうと考えていたクシアはルーゼの特訓を受ける気満々である
ルーゼ「残念だが俺は魔道士じゃないから的確なアドバイスはできないなそれに3人の面倒なんて見ることができん」
エナ「そうなんですか……私達なりに強くなるしかなさそうだね 魔導書を読んだりと色々と方法はあると思うから」
適切な指導をできないと感じたルーゼはエナとクシアの特訓を断るが
ルーゼ「いや 君たちもこの屋敷でメイドとして働いてもらうよ」
エナ「私達が!?」
クシア「メイドですか?」
突然ここで働いて欲しいという事を言い出すルーゼに二人は理解が追いついていないようだ
ルーゼ「そうだ 実はここで働いてるメイドが体調不良になってしまって、っと良いタイミングだな」
エナ&クシア「???」
海斗と離れ離れになると思ったエナとクシアだったがどうやらこの広い屋敷で働くメイドがいないらしいのだ
そしてルーゼの方を振り向くと綺麗な洋服を見にまとった女性がいる
女性「あら ルーゼそこで何をしてるの?」
海斗「(なんだ……この違和感は)」
女性からは上品な雰囲気を感じとると同時に海斗はただならぬ気配を感じるが気にしない事にする
ルーゼ「マール様お帰りなさいませ 少々急用ができてまして」
エナ「(マールって確か……この村の村長って最初に会った人が言ってたような)」
ルーゼが礼儀正しく挨拶をしているのでこの人が雇い主だという事は全員が理解できていた
マール「そうだったのね急用だったのは理解したけど代わりはきちんと見つけてきたのでしょうね?」
ルーゼ「はい もちろん見つけてきましたよ 今目の前にいる三人がメイドの変わりです」
体調不良のメイドの代わりを探していたルーゼはエナとクシアの許可も取らずに村長であるマールにそう伝える
エナ「ちょっと!?私達はまだやるなんt」
マール「ふーん まあ今回は代わりだから最低限の家事ができれば問題ないわ」
エナの主張も虚しくほぼ強引に屋敷のメイドをやることが決まってしまったのだ
アスフェア「突発的なことをいきなり言い出すなんてやっぱり店主の古い親友だね」
エナ「そうだね 真面目だと思ったけどこういうところは店主に影響受けてそう」
エナとアスフェアは苦笑いをしながらどこかに店主の面影をかんじながら納得する
カイト「クシアさんも強制的にやることになってるけど大丈夫なの?」
クシア「私は大丈夫ですよ、それに楽しそうです」
カイト「そっか それなら良かったよ」
クシアは特に否定するそぶりもなく納得していたようだエナとクシアは2人ともしっかりしているのでメイドの業務をこなすのは問題ないだろう
マール「ここで話すのもあれだから早く中に入りましょう これからニ週間よろしく頼むわね」
ニ週間という短い時間ではあるがこれから新たな生活の始まりに皆ワクワクしている、しかしそのワクワクの半分以上はこの村で一番大きなお屋敷に無料で泊まることができるという感情からだが例外が1人だけいるのだが彼はそれを知らずにワクワクしていた




