第二十話 再出発
森の中から小鳥の声が聞こえる、昨夜に宴で盛り上がっていた森のなかは小鳥の声が聞こえるほど鎮まりかえっていた、空気が新鮮で寝心地が良いが朝日が差し込むと共に海斗は目が覚める
海斗「ふわぁーーっ よく寝たぜ 起きてるやつは片付けてるみたいだな 手伝うか」
見渡すと数は少ないが昨日騒いでいた森の住人たちは食事などの片付けをしており海斗もそれを手伝うことにした、食器を片付けている最中に一緒に手伝っているエナを見かける
海斗「エナおはよう 起きてたのか?」
エナ「おはよう海斗 長い時間寝てたから目覚めは最高だよ」
海斗「昨日の疲れが無くなってるなら良かったよ、でも無理しなくていいんだぞ?」
エナ「全然平気よ、それにいつも酒場でやってたし勝手に体が動いちゃうのよ」
海斗「言われてみればそうだな ニコスとミリアも同じことしてるかもしれないな」
エナ「ふふっ そうね あの2人ならきっと大丈夫よ!」
遠く旅に出た2人だが普段の生活と同じ朝に嬉しさを感じながら元酒場の従業員の2人は楽しそうにしている
そうこうしているうちに宴の片付けが終わりこれからのことを決めるためエナと海斗はパーティメンバーを集めて話し合いをすることにした
クシアはミラとマッシュと一緒にいたのですぐに全員集合することができた
まだ宴の余韻に浸りたいとこだが今後のことについて話し合うことにする
ミラ「ええーっと昨日ギルドに連絡を取ったら………」
ミラはギルドに連絡した事と返事の内容について話す、内容は盗賊のお頭を含めた数人を捕まえたことでギルドからは討伐隊が盗賊に捕えられていた妖精や住人を保護することができたらしい
よって今日の昼頃に討伐隊が住人たちを連れてこの森にやってくるのでそれと同時に盗賊の身柄を含めて帰ってこいとギルドから指示があったようだ
海斗「そーか それなら良かった……でも俺たちは一緒に行けないかな」
エナ「なんで? このことをギルドに報告するために王都に戻らないといけないのよ?」
突然変なことを言い出す海斗に全員が驚いていている、エナの発言に全員納得する中で海斗は一通の手紙を取り出す
海斗「この手紙をルーゼという人に届けないといけないんだよ」
クシア&エナ「あっ…」
ミラ&マッシュ「何の手紙よ」
クシアとエナは店主の手紙のことを忘れていた、しかし昨日のような出来事があっては忘れてしまうのも無理がない話しである、かくいう海斗も朝のエナと会話によってこのことを思い出していた
クシア「忘れていましたね、なら近くの村に急いで向かわないと」
エナ「よく覚えてたわね」
海斗「店主に任せられたからな当然だ(実は俺も忘れてたけど)」
アスフェア「絶対嘘だわ」
海斗「何か言ったかい?」
たまたま思い出したことをアスフェアに見抜かれてしまった海斗、ここで事情を全く知らないミラとマッシュが尋ねてくる
ミラ「あなた達に事情があることは分かったけどギルドからの報酬はどうするの?」
マッシュ「そうだぜ 一旦王都に帰らないと金は貰えないんだぞ?」
元々海斗達の目的は妖精の森で治療してもらう事だったのでお金の事については特に気にしていなかった
海斗「そうなのか でも報酬はいらないな、金には困ってないから」
アスフェア「そういえば金は結構持ってるって言ってたわねいくらくらいなの?」
エナ(正直言うと報酬は欲しいかも……)
お金を余り持ってないエナは報酬が欲しいと思うが上手く口に出せずにいる
海斗「確かどれくらいだったかな? 思い出した十万ゴールドだ」
海斗は自身の影に手を突っ込みリリィ王女から貰った袋をメンバーの全員に見せる、そこからは大量の金貨が溢れておりそれを見た皆が固まってしまう
ミラ「あんた……」
マッシュ「金持ちかよ」
エナ「どこでそんな大金手に入れたのよ」
アスフェア「あんた 怪しい金じゃないでしょうね?」
クシア以外の4人は見たこともない金額に怪しい金かもしれないと疑いを持ちクシアは冷や汗をかいて「リリィ王女さま……これはあげすぎです」と小声で呟く
海斗「あれ?」
クシア「海斗さん ちょっと来てください」
思ってた反応との違いに困惑している海斗を見かねたクシアが少し離れた場所へと連れて行く、その他の4人はその様子をポカンと見つめている
クシア「海斗さん お金の単位を知らなかったのですか!?」
クシアは少し顔を赤くして海斗を問いただす、普段は穏やかだが先程の海斗の行動にかなり焦っており必死な顔になっている
海斗「単位?何のことだ 十万円じゃないの?」
それに対して海斗はキョトンとした表情で自身の世界の単位を口にだす
クシア「エンなんかじゃないですよ 何故私が解説したところを聞いてないのですか」
海斗「イヤー だって戦いと関係n」
クシア「何か言いましたか?」
海斗「いえ」
クシア「大体海斗さんは話をきいてなさすぎなのですよ 昨日助けてくれたことには感謝してますが第一授業をした私の身にも‥‥‥」
余程ショックだったのかクシアの説教を兼ねた再履修の授業が始まってしまった、王宮で戦闘に関する授業以外はほとんど寝ていた(とはいえ訓練の疲れを言い訳にほとんど居眠りをしていた)海斗はひどく後悔してしまう何故ならクシアが担当していた授業はほとんど歴史や文化のことでほとんど寝ていた記憶しかないからである
海斗「(たけしやエミに後で聞こうなんて考えるんじゃなかったな ということは地雷を踏んだらまた説教タイムが始まってしまうのか……ヤバいな)」
クシア「海斗さん?? しっかり聞いておられますか?」
海斗「はい……」
口調は穏やかだがどこかしら圧を感じる言い方に素直に返事をする海斗、この様子をその他のメンバーは面白がってみている
ミラ「クシアって最初は穏やかな感じだったけど一気に印象変わったわね」
マッシュ「そうだな でも怒ってる感じはしてもそんなに怖くないというか寧ろ可愛いかも」
これにはエナとアスフェアも苦笑いをするしかない
アスフェア「大体あいつが悪いでしょ」
ミラ「でも気になったんだけど 海斗とクシアってどういう関係なのかな?」
怒っているつもりのクシアは何故か可愛く見えるが、ふと疑問に感じたミラがエナとアスフェアに尋ねる
アスフェア「さー?私達も詳しく無いわ」
エナ「そうね……会ってからそんなに長くないから」
ミラ「ふーん? そうなんだ なら仕方ないわね」
海斗とクシアの身を安じて適当なことを言い誤魔化すことにしミラも疑問が残った様子だが納得してくれたようだ、それと同時にクシアの説教タイムが終了し
クシア「いいですね」
海斗「……はい、分かりました」
ミラ「あんたが世間知らずな阿呆ってことは分かったわ でも本当に報酬はいらないのね?」
アスフェア&エナ「(都合よく解釈してくれた)」
海斗「おう 俺らの分は2人で分けてくれよ」
マッシュ「分かったよ ギルドの人にはそう説明しておくからさ」
エナ「(海斗は冒険者登録してないから報酬は無いんだけどね……)」
海斗の不可解な行動はミラが都合よく解釈してくれ異世界では初となる報酬を受け取らないことにした海斗達は新たな町へ向かうため準備を進めることにする
海斗「よし 準備は整ったな」
エナ「うん」
マッシュとミラを除いた3人は近くの村へと向かうための準備が整い少しの間ではあるがお世話になった妖精達にお別れの挨拶をしている
大妖精「お主ら本当に感謝しておるぞ 改めて礼を言う本当にありがとうな」
海斗「あんたには治してもらったお礼があるし当たり前だよ 後治してもらって本当にありがとうございました」
大妖精「初めて礼を聞いた気がするのう、しかしあのハート型の石に傷をつけたのは許しておらんからのう」
この言葉を聞いた海斗は背筋が凍りついてしまう、完全にわすれていたのでまさか積荷の持ち主が大妖精とは考えてはいなかったからだ
大妖精「といのは冗談じゃ ジルクとやらに事情を聞いておる、それに快感を与えてくれて森を救ってくれたんじゃからおあいこじゃろ」
ジルクが申し訳なさそうにしているが責任者として当然の事をしただけだ、それに大妖精はある程度許してくれているので丸く収まった事なのかもしれない
海斗「マッシュとミラもここでお別れだけど元気でな」
マッシュ「そうだな 俺たちとほここで別れるけど同じ冒険をした仲間だぜ またいつか会って困ってたら助けるし力になるぜ」
ミラ「そうね 何か納得いっていない部分がいくつかあるけど私達は仲間よ せいぜいクシアとエナに迷惑かけないように頑張りなさいよ」
正体を明かしても良かったと海斗は感じていたがさらに混乱するだけだと判断し自分の正体は明かさない事にした
海斗「おう 行動に気をつけるぜ お前達も頑張れよ それとマッシュ また会ったら勝負しようぜどっちが強いのか白黒はっきりさせたいしな 」
マッシュ「ふん よく言うじゃないか 次に会ったときに逃げ出すなよ」
海斗「ほほーう 言うな俺は逃げないぜ漢の約束だ」
マッシュ「約束だな」
ミラ&エナ&クシア「(何か良いわね)」
男の約束をしている二人を女性陣は微笑ましく見守っている
大妖精、マッシュ、ミラ、ジルクとそれぞれ別れの挨拶を告げ、海斗、エナ、クシア、アスフェアの4人は森を出て行く、用心深いミラは海斗達の詳細が気になったが深く考えるのを辞め、漢の約束をしたマッシュはさらにつよくなる事を誓う
それぞれ目的を持った冒険者パーティは解散し盗賊によって荒れた森を後にした




