第百二十二話 自信
海斗「鈴木さん……だよね?」
鈴木「うぅ……見ないで下さい!!」
海斗「えぇ……」
鈴木は普段の生活では大人しいというイメージが海斗に刷り込まれていたが今は素手で獣人の相手をしておりそのギャップに何をいえば良いのか分かっていない
海斗「何か……こう、学校の時のイメージと全然違うから……」
鈴木「忘れて……忘れて下さい!!」
アスフェア「随分と恥ずかしがり屋さんなのね」
鈴木「よ、妖精さん?福田君の知り合いですか?」
アスフェア「知り合いというよりも第2の相棒的なやつね」
海斗「へーそんな事思ってたのか」
アスフェア「そうよ!悪かったわね私にこんな事言われてあんたもさぞ嫌でしょうね」
海斗「よく分かってるみたいだな」
アスフェア「あら奇遇ね私もそう思っていたわよ?」
鈴木(何だろう……亜紀ちゃんとの会話を聞いてるみたい)
アスフェア「て違う!今はあんたと話してる場合じゃないわよ 工藤の親友に話してるんだった」
海斗(お前がふっかけてきただろうがよ)
鈴木「わ!私!? それに親友って……なんか恥ずかしいです」
アスフェア「あんたも勇者なんでしょ?」
鈴木「はい……一応そうですが……」
アスフェア「今の雰囲気は前の工藤に似てるわね」
鈴木「前のって……2人とも静香と長く過ごしたのですか?」
海斗「そうだねー1ヶ月くらいかな?多分」
鈴木「1ヶ月?その時期は学園に潜入してたのでは?」
海斗「そうだね…………あっ……」
鈴木「報告ではピンチのところを福田君が駆け付けてくれたと聞いているのですが……」
アスフェア「ヒーロー扱いされてるじゃない」
海斗「えーと……」
海斗は思い出す、その時期は女体化して潜入していたのである
斎藤が気を使い鈴木達には上手いこと嘘をついていたのだがその気遣いもこの会話で水の泡だ
リナ「カンナ!!来たんだね」
カリータ「海斗さん?も来るとは聞いてましたが少し遅いですよ」
海斗「あはは……全然海斗で呼び捨てでいいんだよ?」
そこにタイミングが良いのか悪いのかカリータとリナが来てしまい鈴木は更に謎が深まる
鈴木「えーと……リナさんとカリータさんは学園出身ですよね?」
聞かれた2人は頷いて海斗もといカンナとは仲良しだと伝える
鈴木「何か斎藤さんからの報告とは異なる点がいくつかありますね どういう事なのでしょうか?」
海斗「うーん……」
リナ「はわわわ……」
カリータ「もしかして秘密にしている事だったのでしょうか?海斗」
アスフェア「どうするのよ?(言うか言わないかはあんた次第よ)」
海斗「まぁ別に良いか、鈴木さん疑わないで聞いて欲しいんだけど……(天雷にバレるよりかはマシだな)」
鈴木「はい」
海斗「本当は俺も一緒に潜入してたんだ」
鈴木「推測するにそうだろうとは感じましたが……何故斎藤さんは嘘を?」
海斗「そうだねー…………」
海斗はゆっくりと口を開き大雑把に説明する、幸いにも地頭の良い鈴木は歴史や魔術の説明も少しだけすればある程度理解できたようで
まさか自分のクラスメイトが女体化の魔術を受けているとは思うはずもなくかなり驚いているようだ
色々あったようだが親友の工藤が殺されていたかもしれない事を考えると海斗には感謝の気持ちが出てきたのである
海斗「以上が俺の黒歴史です……」
鈴木「正直驚きました……ですが皆の命を救った事は確かですからそこまで恥ずかしがらなくても」
海斗「鈴木さん……」
鈴木「でも着替えとかは……」
海斗「だよね……やっぱりそうなるよね」
カリータ「大丈夫ですよ、海斗ではなくカンナからは変な視線とかそういうのを一切感じなかったですよ」
リナ「カリータの言う通りです!!最初はビックリしたけど私達を差別から救って自信をつけさせてくれた優しい人だって思いますから」
鈴木「分かっていますよ、福田君は犯罪の気持ちがあってやってた訳では無い事くらいは」
2人の言葉に嘘偽りの無いことを理解した鈴木は笑みを浮かべている
海斗「ありがとう……でも超恥ずかしい」
鈴木「元はと言えば私が変に推測してしまったからですし……すみません」
海斗「斎藤さん以外と抜けてるとこあるから」
鈴木「そうなのですか!?」
海斗「うん、まーこれから色々と協力していくだろうから隠し事みたいなのはあまり良くないと思うからさ……気にしないでよ」
鈴木「はい……(私の悩みなんて福田君のに比べたら……)」
海斗「そういえば鈴木さんは何故ここに?」
鈴木「えーとですね……」
今度は鈴木が話し始める、園田達と一緒に行動しているが自分はあしでまといだと感じており
その事を王宮で特訓をしている際にもっと力をつけたい事を騎士のティトスに言うとレクスの事を紹介されたとの事だ
海斗「そうなんだね、レクスから色々教えて貰うためにね」
鈴木「ですがレクスさんは今日くる人と何度も戦って実戦をやるように言われたのですよ、まさか福田君とは思いませんでしたが……」
海斗「俺もリンリンって聞いた時は誰か分からなかったけどまさか鈴木さんとは思ってなかったよ」
海斗「……取り敢えず組手でもしてみる?」
鈴木「えぇと……はい、分かりました」
言葉に迷った海斗は取り敢えずレクスの言われた通りに組手を提案し鈴木も了解して構える
2人を見たリナとカリータは距離をとり海斗は体制を低くして構える、鈴木も構えるがそのポーズは何かしら見覚えがあった
海斗「何か見たことあるような……」
鈴木「…………やっぱり無理、恥ずかしい……」
しかし海斗が見つめたせいか片足立ちをしていたが降ろしてしまい縮こまった体制をとる
海斗「(変わった?)行くよ!!」
そう言って海斗は踏み込んで接近する、鈴木は想像以上の速さに驚いて体制を崩してながら後退する
海斗はすかさず発勁を叩き込む、が様子見で手加減したつもりが鈴木を大きく吹っ飛ばしてしまった
鈴木(うっすらと聞いたけどかなり強くなってるみたいね)
鈴木は綺麗に受け身をとって着地して反撃しようと再び構える
鈴木は一蹴りで距離を詰めて拳を突き出して反撃して連打を浴びせる
リナ「さっきと全然」
カリータ「どうしたのでしょうか?」
高速の鈴木の連打であったが全てを見切って防ぎきると海斗は違和感を感じる
海斗「鈴木さんもしかして無理して戦ってる?」
学園でシドウやカリータ達と組手をしていた海斗は攻撃する鈴木をみて重心や動きが合ってない事に気付く
当然リナとカリータも気が付いておりその言葉を聞いた鈴木は図星なのか攻撃を辞めてしまった
鈴木「分かり……ますか?」
海斗「体術は学園で少しやったからね……何か変だなって思ってさ」
鈴木「そうなのですね……申し訳ありません」
海斗「謝らなくても……何か理由があるの?」
鈴木「そう……ですね」
海斗「言いたくない事ってあるよね……」
鈴木「すみません……お見苦しい姿をお見せしてしまいました」
リナ「そんな事無いです!!」
2人の会話を聞いていたリナが大きく否定する、リナとカリータは先程鈴木と組手をしていたのであるが動きが少しぎこちない事を理解していたのだ
そして海斗との戦いを見た事で自信が無いというのが理解できたのだ
鈴木「リナさん……」
リナ「自分を隠す事ってもったいない事だと思います!」
鈴木「でも……変に思われたりしますし……」
カリータ「そうなのですか?私達と先程組手をした時よりも迫力が全然違いましたが」
カリータ「本当の力を引き出せてないのは凄くもったいないですよ」
鈴木「分かっては……いるつもりですが」
リナ「私も学園にいた時は否定されるばかりで自信がありませんでした……」
リナ「でもこんな私でも支えられて友達って呼べる人ができて少しだけど自信を持てるようになりました」
リナ「だからその……私も何か力になりたいです!」
鈴木「リナさん…………」
恥ずかしがっている鈴木に対してリナは過去の自分等を重ねこんな自分も誰かの力になりたいと思っていた
素直な言葉を受けた鈴木は少しだけ前向きな気持ちになれたようである
カリータ「何があるのかよく分かりませんが少しずつやっていけば良いと思いますよ」
鈴木「はい、ありがとうございます」
カリータ「しかしあの構え方はかなり独特ですね、先生や私達とは全然」
海斗(あの構えは確か…………)
鈴木「カリータさん達は基礎に私が変なだけですから」
リナ「変なんて思ってないですよ、鈴木さんやレクスさんから色々学べそうです」
海斗(リンリン…………まさか寺山の!?)
海斗「鈴木さん少しいいかな?」
鈴木「はい、どうされました?」
海斗「さっき言ってたリンリンって名前だけどさ……」
海斗は鈴木を呼んで周りに聞こえないように手を使って鈴木の耳の近くで小声で話す
鈴木「は……はい」
近距離で緊張する鈴木だったがその次の言葉はまさかの一言で
海斗「もしかしてだけどモエモエwarsってゲームのキャラの……」
鈴木「わああああっ!? 言わないでくださいー」
鈴木「というよりも福田君知っているのですか!?」
海斗「鈴木さん 落ち着いて!!」
鈴木の動きが気になっていた海斗は記憶を遡って答えを導くがその答えが良くも悪くもドンピシャだったので鈴木は大きく慌てて取り乱してしまった
大声が響き周りの獣人達がこちらを見られて更に取り乱す鈴木をおかしく思いながら海斗は鈴木を落ち着かせようと謝りながら弁明したのであった




