第百二十一話
アリス「んんん…………はっ!?」
静かな森の中でアリスは驚いたように目を覚ます、上を見るとホーリアーとクシアが優しい顔でこちらを覗き込んでいたのだ
クシア「アリスさんおはようございます」
アリス「おはよう……もしかして寝坊しちゃったかな?」
ホーリアー「単刀直入に言うとそうなりますが気にしないで下さい」
クシア「はい、昨日は全員が相当疲れてたみたいですからね 一応向こうには連絡しておきましたので大丈夫ですよ」
アリス「ごめんなさい……」
クシア「気にしないで下さい私達も数分前に起きたのですから、それよりも朝食を食べましょう」
朝の時間は過ぎて時計は10時を回ろうかしていた、アリスは重い体を動かして朝食を食べようとクシアについていく
クシアの後ろをつけるとエナと海斗が朝食を作っており良い匂いが森の美味しい空気と共に鼻に入ってくるのを感じ取る
アリス「感謝を込めて……頂きます」
海斗「頂きます……」
アリスは食材を前にして手を合わせ祈るようにを瞑ってしばらくの間沈黙が続く
全員がアリスに合わせて食材に感謝して日頃の感謝をした所で朝食を食べ始める
そして全員残さずしっかり食べ終えると王国に向けて出発する
本当は朝から斎藤達と合流する予定だったがクシアがゴーレム越しに連絡しており斎藤に怒られるかとおもいきや
どこか安心した様子で声をかけられたようであったそうだ
海斗「えーとクシア以外はレクスの所に行けばいいのかな?」
クシア「はい、斎藤さんからはそう伺いました場所は海斗とアリスさんなら分かるとの事です」
海斗「て事はあそこか」
エナ「どこなの?」
海斗「うーん……秘密基地みたいなところかな」
エナ「何それ」
アスフェア「ガキじゃないんだから、てかまだガキだったわね」
海斗「チビ助め」
エナ「もーう二人とも!!」
アリス「確かに秘密基地かも」
ケレノア「そう言われるとワクワクしますね」
エナ「どんな所だろう」
クシア「行ってみなければ分かりませんが私も少し気になりますね……行ってみたいです」
何気ない会話をしながら一同は森を出発し王国の方へと向かっていった
全員が王国にたどり着いていつもの門番と目を合わせて国へと入りクシアと別れて海斗とアリスを先頭にして町中を歩いて行く
斎藤の指示によるとクシアだけは王宮の方に来て欲しいとの事だ
クシアと別れて歩き周りを見渡してみると住んでいる獣人達の活気があまりなさそうに感じ取る
昨日のことが大きく影響しているのか怯えているようであり何とかしたい思いが一層強くなったのだ
エナ「ここってお金盗んだあの子が逃げたとこ?」
海斗「よく覚えてたね」
エナ「そうかな?割と最近な気がするけど……」
アリス「お金盗まれたの?誰に?」
海斗「そりゃー……犯人が出てきたな」
アリス「タチ君が!?」
前にある古い扉からは犯人であるタチが出てきたのでこちらに向かって歩いてくる
タチ「随分遅かったじゃないか」
海斗「寝坊しちまった」
タチ「しっかりしてくれよこの国をどうにかしてくれるんだろ?」
アリス「ごめんタチ君……私が起きれなかったから」
エナ「アリスちゃんだけのせいじゃないよ」
アリスが一番最後に起きたのは事実であるがエナとクシアは気持ち良さそうに寝ているアリスを
無理やり起こすような事はしたくなかったのでそのままにしたのであった
タチ「そうなんだ……まぁいいやそんなことよりも面白い奴が来てるぜ」
海斗「面白い奴?」
タチ「人間なんだけど何か明るくて面白くてスゲー奴」
海斗「獣人じゃねーのか?(この国にいる数少ない人間か)」
タチ「レクスのジジイみたいに変な構えをして戦うけどもしかしたらあんた並に強いかもね」
アリス「それは凄い、どんな人なんだろう?」
タチ「リンリンって名前だよ確か、変な名前だけど強いし良い修業相手だぜ」
海斗「へー会うのが楽しみだな(変な名前だけど何か聞いたことあるような)」
エナ「可愛い名前だね、女の子かな?」
アリス「リンリン、リンリン♪」
可愛い名前にそれぞれの感想を抱きどのような人なのか気になりながら地下への階段を降りていく
エナ(アリスちゃん……少しだけど元気になってよかった)
無邪気な笑顔を浮かべたアリスは楽しそうに階段を
降りておりそれを見た海斗とタチも嬉しそうにしている
海斗とアリスにとってはこの国で一番馴染みのある場所であるがエナにとっては初めてで少し緊張していた
エナ「凄い……こんな地下があったなんて」
階段を抜けると想像以上の大きさの地下を見たエナは辺りを見渡して驚いている、中央にはレクスが獣人達を指導しておりその中にはミラとマッシュもいる
アスフェア「訓練してるわね、見ない顔がチラホラいるけどさっき言ってたリンリンって奴はどれよ?」
海斗「あれは……」
タチ「あの人だよ」
海斗「ソウナノカ?」
アスフェア「何よその反応」
タチの指さす方を見るとレクスとは別に獣人と組手をしている女の子がいるのが見える
海斗の気の抜けた反応にアスフェアが突っ込むがその人物は海斗の知り合いであるのだが……
海斗「鈴木さんだよな?……多分」
普段の学校とは違う様子に戸惑いを隠せずに自分を疑っているようだ
タチ「取り敢えず俺は行ってくるよ、後はレクスに話を聞いてくれ」
タチはそう言い残してレオスとタイガの元へと走っていく
エナ「あの子が工藤と仲良い子なの?」
海斗「そうなんだけど……雰囲気が違い過ぎて」
エナ「そうなんだ……」
ホーリアー「活気があって良いですね」
辺りを見れば大人から子供まで見え全員が組手をしたり呼吸方の練習をしたりしているようだ
そしてこちらに気付いたレクスが組手の相手を辞めこちらに近付いてくる
レクス「よう遅かったのう」
アリス「寝坊しちゃって……」
レクス「聞いておる、とにかく無事で良かったぞ」
海斗「まーね、で俺達は何するんだ?」
レクス「単純明快 強くなって貰うただそれだけじゃ」
海斗「だと思ったよ」
エナ「だね」
レクス「個別に別れてこやつらの相手をするのじゃ」
ケレノア「組手ですか……あまり得意ではありませんがやるしかないですね」
レクス「エルフの嬢ちゃんは武器の扱い方を教えてやってはくれぬか?向こうに武器をもった人間と獣人がおるじゃろ?」
レクスの指さす方を見るとマッシュとミラがおりその周りには武器をもった獣人が打ち込みをしている様子が目に入る
レクス「指導方はそなたにまかせるぞ」
ケレノア「承知しました、それでは向こうに行ってきますね」
ケレノアは張り切っているのか嬉しそうにしながら向こうへと走っていく
レクス「聖竜どのは怪我や疲れを癒してもらえぬだろうか?」
ホーリアー「任せてください」
レクス「向こうの方に空いてる場所がるじゃろ?そこに待機していてもらえれば」
ホーリアーはゆっくり頷き羽を羽ばたかせて指定された場所へと行き周りの獣人達を見守る
海斗「俺らはひたすら実戦だな」
エナ「もっと私も強くなる!」
レクス「エナの嬢ちゃんはアリスと共にワシの所へ来るのじゃ」
名前を呼ばれた2人は返事をしレクスは嬉しそうにしている
レクス「後フェンリルもじゃな」
海斗「俺はどうするの?」
レクス「お主は…………ちょうど終わったようじゃな」
レクスはその相手を呼ぶとその子は一蹴りでこちらに素早く飛んできたのである……が
海斗「ええっと……鈴木さん?」
鈴木「えっ……嘘 福田君!? こんなの聞いてな……」
しかし海斗が恐る恐る話しかけると鈴木は顔を赤くして走り去ってしまったのだ
海斗が無事だった事の嬉しさとありのままの自分を見られてしまったという
グチャグチャな感情を抱いたまま裾の短いドレスを纏った彼女は駆け出していた
海斗「あらら」
エナ「取り敢えず追いかけた方がいいんじゃないのかな?」
海斗「だね」
アスフェア「もーう 何なのよ」
追いかけることに決めた海斗は鈴木の後を追って走っていきアスフェアもそれについて行った
レクス「あり……伝え忘れてたかの?」
エナ「そうなのですか?」
アリス「??」
海斗が来ることを伝え忘れていたのは事実でありレクスはそれを覚えていないようでありアリスはその光景を不思議そうに見つめているのであった




