第百六話 隠し事
王宮の中心でサルビアは横たわっておりクシアとホーリアーが治癒をしており工藤とラクンと呼ばれる側近はその手伝いをしていた
レオス「……私が不甲斐ないばかりに」
海斗「…………」
海斗はもしもの襲撃に備えてレオスを守るために側にいるがレオスの落ち着かない様子を感じとっていた
海斗「大丈夫さ 天使と聖龍がいるんだから」
レオス「いえ……私がしっかりしていればあの方が国を見限る事はなかったのですから……」
海斗「…………過去に何かあったのですか?それにタチとタイガとの関係も気になります」
レオス「先代国王の事はご存知で?」
海斗「……結構前に暗殺されたとだけ知ってます」
レオス「はい……私の父は何者かに暗殺されてしまいまして息子である私が急遽この国をまとめる事になってしまったのです」
海斗「そうなんですね……私が言うのもあれですけどレオスさんはまだ子供のように感じます」
レオス「はい……それまでは父が上手くやっていた外交や取引も全て背負う事になってしまい当然ですが上手くいくはずもなく貧しい国になってしまったのです」
海斗「側近の人とか周りが手伝ってはくれなかったのですか?」
レオス「もちろん最初は周りの助け等があって何とかやれていました……しかし妹が病にかかり私に王としての器が無かった為か次々とこの国を去る者が増えていったのです」
海斗「……ガノトとか言うダイナ族が去って治安が悪くなったとは聞いています」
レオス「はい……当時私の外交が上手くいかずにソルセリやジュエリーナから獣人が酷い扱いを受ける事になってしまってそれに痺れを切らしたのでしょう……」
海斗「難しい話ですね……確かにこの国は貧しいと感じましたが皆一生懸命に生きている、そう感じます」
レオス「私が器ではないばかりにそうなっているのです、民は全く悪くありません」
海斗「…………王様も王様なりに頑張ってるんだろ?全部が全部悪い訳じゃないと思いますよ」
レオス「ありがとうございます……」
海斗「国を背負う重みとか俺には分からないけど……この国を良くする為に俺達は来たのですからどんどん頼って下さい」
レオス「はい!! やはりタチが言ってたように貴方達は変わっていますね」
海斗「あいつも初対面の時にそんな事を言ってましたね タイガとタチとは友達だったのですか?」
レオス「二人とも私の大切な親友です」
海斗「親友ですか……過去に三人で色々やってたりしたのでしょうか?」
レオス「はい……タイガ、タチ、レオナを含めた四人で何も考えずに生きていました」
海斗「フッ……良い思い出というわけですね」
レオス「勿論、正直にいうと今の地位を手放してあの頃に戻りたい……そう思ったりもします」
海斗「そうなのですか……少し俺達に似てますね」
レオス「貴方もですか、私ばかり話していてはあれですし貴方の事も聞かせて下さい」
海斗「…………私の事はいいですよ」
レオス「なぜですか?私は貴方達の事をもっと知りたいです」
海斗「………私の親友はもう手が届く場所に居ないのです……だからレオスさんが少し羨ましくて」
レオス「すみませんでした……何も知らずに」
海斗「気にしないで下さいよ、それよりもあの二人と過去に何かあったのですか? サルビアを捕まえる時に貴方の事で二人共ぶつかっていましたよ」
レオス「そうですね……数年前まだ私のお父様が生きていた時の話です」
海斗「是非聞かせて下さい」
レオス「分かりました、数年前は私と妹のレオナは身分を隠しタイガ達と過ごしていました」
海斗「出会った時は二人とも貴方が王族だと知らなかったと?」
レオス「はい、私が望んだ事なのです。」
海斗「何故そのような事を?」
レオス「王宮に留まるだけではなく国を隅々まで見たいと思ったからです」
海斗「王族だからと変に威張るよりレオスさんのやってる事が素晴らしいと思いますよ」
レオス「ありがとうございます、それで最初の出会いはタチからお金を奪われるとこからですね」
海斗「あいつ……変わって無かったのか」
レオス「そうなのですか……ですがその時に私のお金の感覚が大きくずれている事に気付いたのですよ」
海斗「成る程」
レオス「当時も色々あって貧しかったので仕方ないですよ」
海斗「でも楽しかった、そうなんですよね?」
レオス「そうですね、父上のおかげもあってか全員一生懸命生きており活気に溢れていたと思います」
レオス「タチとの最初の印象は本当に最悪で…………」
レオスは思い出を話す、タチと一番最初に出会い喧嘩しそこから色んな物を見て思うところがあったようである
タチとは最悪の出会い方をしたがその後に体の不自由な獣人に少しでも良い飯を食べさせたかった為だと知り強く責める事はできなかったのだ
レオス「それで色々あってタイガに出会いました」
海斗「俺から見ると兄貴って感じだったな」
レオス「タイガは子供達の中で一番強くリーダー的存在でした……おまけに優しかった」
海斗「盗賊のリーダーやってましたからね、腑に落ちます」
レオス「はい……ほぼ毎日誰が一番強いかを競い合っていましたよ」
嬉しそうに話すレオスに海斗は優しく頷きながら話を聞いている、レオスが言うには最初こそはタイガに全く勝てなかったが回数を重ねるごとに少しだが勝つ事があったそうである
海斗「それでレオスさんは二番目に強かったって事なんですね?」
レオス「私かタチのどちらかって言う感じでしたね……あの時間は確かに楽しかった……ですが」
レオスは少し悲しそうな表情をして口を開く
レオス「私は周りの子達と明らかに違う点が一つだけありました」
海斗「どこがです?」
レオス「私とレオナにはお母様が着いて来ておりタイガやタチを含む多くの子達は母親が居なかったと言う事ですね」
海斗「………………当たり前じゃ ないですからね」
レオス「その通りです、だからこそ私がみんな笑顔になれるような国を作らなければならないと思ったのですよ」
海斗「貴方は良い人すぎるよ……」
レオス「タイガとタチにも同じ事を言われました」
海斗「皆そう思ってるはずですよ」
レオス「ありがとうございます……ですが父上が死に国を滅茶苦茶にしているので私は良い獣人とは決していえませんよ」
海斗「父の死から何かあったのでしょうか?」
レオス「はい……」
レオスが言うには父上の死は突然告げられた事であると同時に同じ日に母も殺されてしまった事を海斗に話す
何も反応できない海斗にレオスは続けて話し、父と母の死後に突然王宮の側近らがレオスとレオナを迎えに行きその事がきっかけでタチとタイガには王族である事がバレてしまったそうだ
その当時タイガは何も言わなかったがタチは今までレオスが身分を隠していた事に心のそこでは見下されていたと感じ嫌な別れた方をしたようだがタチは心の底ではレオスがそんな事をする人物ではないと分かっているつもりではいたのだ
だが言葉にしなければ伝わるはずもなくその事が原因でタチとタイガの喧嘩が多くなりタイガはサルビアの方を信じる事にしてタチは強くなる為にこの国に残る決断をして今までやってきたようである
海斗「そんな過去があるなんて知らなかったです」
レオス「聞いてくださりありがとうございます……」
海斗「いいえ、こちらこそできる事を尽くしたいと思います」
レオスは精一杯の感謝の気持ちを海斗に伝えると海斗は純粋な言葉に照れくさそうにしており王宮の壁を見つめていた
工藤「ふぅ……大分落ち着いてきたかな」
そこにタイミング良く工藤が現れてレオスと海斗にサルビアは今の所一命を取り留めている事を伝えにくる
レオス「本当ですか!!」
工藤「安心して下さい、死ぬ事はありません…………が目を覚ますのに時間がかかるとは思います」
レオス「ありがとうございます!!」
工藤「お礼ならクシアさんとホーリアーさんに言って下さい 私はただ手伝っていただけですから」
工藤の言葉を受けたレオスは頷いてすぐ様クシア達の方に向かっていく
走るレオスを海斗は止めようとするが疲れている工藤を気遣い肩を支える
海斗「工藤は平気? サルビアが無事なら本当に良かったよ」
工藤「うん何とか……あの人は子供達の拠り所だったから……絶対に救いたかった」
海斗「ひとまずは安心して良いって事だね、良かったよ」
工藤「だね…………ううっ……」
工藤は動き周り魔力を使い果たしてしまったのかフラフラになっておりそれを見た海斗が正面から支える
海斗「やっぱり無理してるじゃん」
正面から支えられた工藤は顔を赤くし心臓の音がや速くなるのを感じている
工藤「海斗…………もう少しこのままでいい?」
海斗「良いよ、頑張ったんだし」
エナに申し訳ない気持ちがあった工藤だがそれよりも疲れが酷くそんな事を気にしている余裕は無かったのである
速くなる鼓動を抑えながらも王宮で斉藤らを待つ事に決めて数十分の時間が経つが斉藤らは帰ってくる気配がなかった
海斗「王宮は大丈夫そうだし俺が様子を見てこようかな?」
工藤「はっ!? これで斉藤さんに連絡できるの忘れてた」
工藤は思い出したかのようにしてスカートのポケットに手を入れて道具をとりだす
それは海斗がよく目にしている物であり驚いていた
海斗「それはスマホか!!…………そういや天矢のやつが改造して使えるんだったっけ?それで魔族領に行った人達とかも連絡取れるの?」
工藤「うん、だけど範囲が決まってるみたいで近くないと連絡はとれないって天矢君は言ってた」
海斗「流石にか……何か光ってない?」
工藤の明るい色のスマホを見ると光っており次の瞬間に音楽がなり始める
海斗「着信かな?」
工藤「そうだね、丁度斉藤さんからだよ 海斗が出てみる?」
海斗「良いの?」
工藤「最近触ってないでしょ?」
海斗「だな、なら遠慮なく」
工藤の携帯を受け取りボタンを押して画面に向かって話しかける
海斗「あーあー……聞こえますかー?」
久しぶりの感覚に感動を覚える海斗だったが斉藤はかなり焦っているようで
斉藤「はぁ……はぁ……工藤さん!? って貴方は福田君!?」
ただならぬ様子を感じとった海斗は一瞬で切り替えて何があったのかを斉藤に聞く
海斗「何かあったの!?今すぐに助けに……」
工藤「そんな……」
斉藤「私たちの事は気にしないで!!何よりも王宮の方が危ないです!!それにアリスさんが……」
工藤「斉藤さん!!何かあったのですか!?教えて下さい」
斉藤「何と言ったら……」
エナ「そっちが危ない 気を付けて」
工藤「一体どういう……」
海斗「工藤……危ないから下がってた方が良い」
工藤「…………何か来るの?」
海斗「あぁ……クシアとホーリアーのそばにいた方が良いかも俺はレオスさんを……何か来る」
何かを感じとった海斗は王宮の外にとびだす、工藤は力が残ってないがレオスの側に寄ってクシアとホーリアーに状況を伝える為に走り出す
海斗「…………ん?」
外に飛び出した海斗は帰って来た道を睨みつけながら構えている
海斗「あれはアリ……」
彼方に何か飛んできている物を確認した海斗はそれを弾き返そうとするがそれを辞めて受け止める事にしたのだ
何故ならそれは原因不明ではあるが吹っ飛ばされたであろうアリスだったからである
アリス「痛いよ……」
海斗「アリス!?大丈夫なのか!?」
アリス「海斗お兄ちゃん……あまり大丈夫じゃ……ないみたい」
吹っ飛ばされたアリスを受け止めると衝撃で後ろの王宮の壁が破壊されてしまい工藤やクシア達が丸見えになってしまう
クシア「アリスさん!?一体何が」
工藤「誰かいる」
工藤がアリスを抱えている海斗の後ろを指差すとそこには体格が人の3倍ほどある大男が立っており只者ではない雰囲気を出しており海斗もアリスを素早く降ろして構えをとっていた
海斗
何もしてこない大男に海斗は最大限に警戒して牽制していたが
ラクン「貴様は…………ふざけるな!!」
しかしレオスの側近であるラクンが怒りの感情をあらわにしてその大男に立ち向かって行ったのである




