第百五話 裏切り者の罰
エナ「そんな……嘘……」
サルビア「…………ぐぅっ………………」
海斗「お前……」
黒いゲートから突然現れた男は一瞬でサルビアに近寄って剣を突き刺し黒い魔力を流し込んでいる
海斗「お前は ソルセリにいたデストリンガーか!!」
?「? 君とはどこかであったかな?」
海斗「知らなくて結構」
一瞬で敵だと認識した海斗は男に飛び掛かってサルビアから引き離して攻撃をしエナ達に向かって指示を出す
海斗「早く治療を!!血を止めるんだ」
エナ「分かった 工藤、手伝って」
工藤「もちろん、死なせたりしない!!」
ミラ「私も」
ケレノア「私は聖龍様を呼んで来ます、あいつの目的はサルビアのようですマッシュは攻撃から皆を守りなさい」
マッシュ「わ 分かりました(相手は海斗に任せた方が良さそうだな)」
呼びかけもあってか今はサルビアを救う事が最優先だと認識してそれぞれ素早く行動する
斉藤「あれは……恐らくソルセリでジックを回収した人物……私も何かできる事は……」
マッシュ「あんたは魔力をほとんど使ってるだろ?」
斉藤「すみませんがまともな援護はできそうにないです……」
マッシュ「俺が盾になるから獣人達の側に固まってて」
斉藤「分かりました」
レオス「ホーリアーさん今すぐに王宮へ!!」
ホーリアー「レオスさんも乗って下さい」
ケレノアがすぐに呼びに行った事もありクシアとホーリアーが慌てた様子で飛んで来るがそうはさせまいと黒マントの男が立ち塞がる
?「させると思いますか?」
海斗「こっちのセリフだ!!」
?「思ったよりもやるな、それに人数も多い」
海斗も同じように立ち塞がって攻撃し男を吹っ飛ばして距離を取らせる
?「そしてあれはザンギャグロスだったものか? 解除に成功したのか?」
ホーリアー「観念しなさい 貴方一人でこの人数を相手にするつもりですか?」
?「別に戦う事が目的ではないからね そいつを始末できれば後はどうでもいいんだ(本来なら突き刺した時点で終わりだったが聖龍がいるとなるとな)」
余裕そうにしていた男だったがホーリアーを見た事でサルビアが死ぬか分からない様子を見せている
タイガ「お前は絶対に許さん!!」
?「単純」
タイガ「うああっ!?」
タチ「タイガ!!」
男は魔力で黒い手刀を作ってタイガを攻撃しそれを回避するタイガだったが手刀に気を取られてしまい蹴っ飛ばされてタチに受け止められる
海斗「剣か……これでどうだ」
同じように魔力の剣を作った海斗は男に斬りかかる
?「へー その技を使うなんて今時珍しいね」
海斗「そいつはソルセリで聞いた」
両者が斬り合っている状況を他所にしてホーリアーとクシアはレオスと大怪我をしたサルビアを連れて王宮へと飛び立とうとしていた
ホーリアー「行きますよ!!」
クシア「はい サルビア様……必ず救ってみせます」
エナ「私も治療を手伝う」
工藤「クシアさん!!何かできる事はありますか?」
クシア「治癒魔術をお願いします」
エナと工藤も一緒に乗ってホーリアーは飛び立って行き海斗はそれを横目に見ている
海斗「頼んだぞ(クシアとホーリアーならきっと治してくれるはずだ……)」
?「逃げるきかい?」
海斗「ああそうさ、あいつらの母親を殺すわけにはいかない」
?「いやいや いつから僕一人だと錯覚してたんだい?」
海斗「何?」
ホーリアーが大きな翼を広げ王宮に向かって進んでいると目の前には黒いマントに身を包んだ謎の人物が浮いていた
ホーリアー「……そこをどきなさい」
?「チッ…………こんなの聞いてないわ それにあの血の量と呪いがあるなら死ぬでしょうけど念には念を入れないとね」
舌打ちをした謎の人物の周りに複数の黒い矢が現れホーリアー目掛けて飛んでゆく
エナ「やらせない 力を貸してアスフェア」
アスフェア「もちろん」
?「邪魔」
背中に乗っていたエナは飛び降りてアスフェアと同化し氷のシールドを展開して攻撃を防ぐ
謎の人物も次々に攻撃を仕掛けるがエナが全てを防いでおり空中で大きな爆発音が鳴り響いていた
エナ「行ってください ホーリアーさん!!」
ホーリアー「…………分かりました」
クシア「みんなを信じましょう」
ホーリアー「そうですね」
レオス「タチ……タイガ」
クシア「心配しないで下さい あの方達がいるから大丈夫ですよ」
工藤(皆……信じてるから)
クシアの言葉にレオスは静かに頷き白き龍は翼を広げ王国の道へと突き進んで行った
?「本当に邪魔 死んで」
エナ「酷い事をする貴方達は許せない」
エナは必死になって守りぬいたおかげでホーリアー達を逃す事に成功する、その反面予想外な事に勇者やその仲間が強かった為ホーリアーを逃してしまったのであった
?「ハァーー…………トルスあいつに逃げられた任務は失敗よ」
エナ(魔法道具? ソルセリで似たようなのを見たような……)
トルス「しくじったのかリリア?」
リリア「あんたが加勢に来れば始末できてたかもしれないのに」
トルス「こっちも敵がしぶとくてな」
リリア「強い勇者は全員向こうにいるって聞いてたけど 話が全然違うじゃない」
トルス「ジックの計画を阻止した奴らだからな 俺の認識が甘かった、ここは退くぞ」
リリア「了解」
エナ「待て!!貴方達も捕まえる」
リリア「邪魔するようなら下にいる獣どもが大怪我するわよ?」
エナ「卑怯な……」
黒い矢を下に向けたリリアは不適な笑みを浮かべて脅した為エナは手を出す事ができない
海斗「戦闘中に会話とは随分余裕だな?」
トルス「脳筋の相手は飽きたからな」
海斗「あいつ 逃げるきか?」
途中で逃げ出し空を飛んでいくトルスを追って海斗も空中を蹴って移動してエナと合流する
トルス「驚いた 脳筋もそこまでいくと空を飛べるとはな」
海斗「この前みたいに簡単に逃すと思うか?」
リリア「それ以上近づけば下にいる奴らはただじゃ済まないわよ?」
逃がさないと向かっていく海斗だったがリリアの一言によって足を止める
エナ「海斗!!邪魔したら下の子達が……」
海斗「…………そうだな」
リリア「いくわよ あいつの急所を突き刺したのよね?」
トルス「まーな、それに黒魔力の呪いもかけてある……が聖龍がいる事が唯一の懸念点だな」
リリア「始末できるに越した事はないけどあいつが知ってる情報なんてたかが知れてるわ、後」
エナ「駄目っ!!」
黒い空間に向かって行く二人だったが最後にリリアが指を下に振ると停滞していた黒い矢が獣人達に向かって飛んでいく
リリア「アハハハ バイバーイ」
海斗「寺山!!溝上!!みんなを守れ!!」
海斗は二人の名前を呼んで集中して全身に魔力を巡らせる、体からは魔力が溢れ白いオーラとなって全身を包み込んでいる
さっきとは比べ物にならない速さで空中を移動して黒い矢に追いつき手刀でいくつか破壊するとその矢が爆発し大きな音が鳴り響いている
寺山「溝上君 行けるかい?」
溝上「もちろん」
全ての矢を破壊することができなかったが残りは溝上と寺山が防護壁を展開して何とか防ぎ切り怪我人は出なかったのであった
海斗「行ったか……あのクソ野郎め」
エナ「ごめん海斗……」
海斗「大丈夫だよ結構ギリギリだったんじゃない?」
エナ「……うん」
海斗「捕まっててよ支えるから」
エナ「ありがとう」
エナは同化を解消し海斗に支えられながらゆっくりと降りていく
アスフェア「あんたの飛び方ってゆっくり着地できなさそうよね」
海斗「俺だって学園で学んだんだぞ 空中に留まるくらいできるさ」
アスフェア「的になるレベルでゆっくりじゃない」
海斗「それは言うな」
かなりゆっくりと降りる海斗にアスフェアは突っ込みつつも静かに着地し魔力をほとんど使ってしまったエナはきつそうにしており海斗はゆっくりと座らせる
斉藤「援護できずに申し訳ありません」
様子を見ていた斉藤達は海斗のそばに駆け寄ってくる
海斗「仕方ないよ みんな魔力を使ってしまってたから エナだってギリギリだったみたいだし」
寺山「そうだな……やっぱり基礎を鍛える事も必要だよな」
斉藤「ですね……」
海斗「斉藤さん!!反省会は後にして今は早く王国に戻らないと」
カリータ「そうですね 早く子供達をサルビアさんに合わせてあげないといけませんね」
リナ「それにデストリンガーが王国に転移した可能性も考えられます」
斉藤「!?たしかに」
リナの一言でまさかの可能性に気づいた斉藤は海斗に指示を出す
斉藤「それでは福田君は急いで王宮に戻って下さい!!お願いします」
海斗「分かった、リナに言われるまでその可能性に気付かなかったよ」
リナ「はい……あくまで可能性ですが」
海斗「0じゃないからね そっちはフェンリルやケレノアさんがいるけど油断はしないでね」
カリータ「大丈夫 私もまだ何とか戦えるからカンナは急いで行ってあげて この子達の為にも」
海斗「分かった(何もなければいいが……)」
フェンリルやケレノアを信用しもしもの可能性がある為海斗は急遽王国に行く事に決めた
海斗「行ってくる 後は頼んだよ」
海斗は深呼吸をして遠くに見える王国を真っ直ぐに見つめて視界にとらえる
次の瞬間に大きな音が鳴り響き王国に向かって走り出して近場には大きな穴があいていたのである
海斗(無事でいてくれよサルビア)
サルビアを心配しつつもどんどん加速して進んでいくと王国の門が近くなってくる
門番「お前は!!止ま……」
勢いよく突っ込んでくる海斗を不審に思った門番は止めようと道を塞ぐが
海斗「今はそれどころじゃない!!デストリンガーの攻撃があるかもしれないから警戒するんだ」
門番「待て!!」
しかし危険かもしれない状況を説明する余裕がない為門の前で大きく跳躍して飛び越えていきその後は空中を移動して王宮へと向かって行った
王宮へ辿り着くとクシアとホーリアーの気配がする方へと一直線に進み二人共サルビアの治療に集中し工藤とレオスが血を止める為の包帯などを必死に準備している様子が目に入ってくる
クシア「海斗!! 無事で良かったです、他の方は大丈夫なのですか?」
海斗「敵は撤退したからみんななら大丈夫 それよりもこっちの方が危ないかもって思ったから」
クシア「そうなのですか?撤退したのならひとまず安心ですよ」
海斗「あいつらはいきなりサルビアの近くに現れて襲って来たから油断はできない」
クシア「そうなのですね……迂闊でした(転移魔術を使ったのでしょうか?)」
ホーリアー「海斗の言う通りですね、私達は治療に専念するので何かあった時の護衛をお願いできますか?」
海斗「了解」
工藤「いざとなったら私も戦うから」
海斗「そうだね、レオスさんは俺と工藤の側に居てくれ」
レオス「しかし……」
海斗「あんたは王様だろ?それに何かあればタチやタイガに顔向けできない」
レオス「……分かりました 手伝いは側近のラクンにお願いします」
ラクン「……かしこまりました」
海斗(なんか不満そうだな……ってそれもそうか)
ラクンと呼ばれた側近は今まで盗賊の居場所などを考えてくれた獣人である
本人は罪人であるサルビアの手当てを良く思っていないのか不満そうな顔をしており海斗もそれを察していたのであった




