第十一話 見えてきた希望
海斗とクシアの二人はフラガが経営する酒場で一週間の時間を過ごしとある情報と世界情勢についてなどの情報収集を行っており目的のものが手に入ったのかとても嬉しそうにしていた
クシア「はい!! 上手くいけば海斗様の手足が治るかもしれません」
両足と左手を失ってしまった海斗は生活にかなり困っておりまず最初に手足を再生させないことには目的を達成するどころの話ではないのでそれらに関する情報をあつめていた
海斗「それでその人達は誰でどこにいるんですか?」
クシア「聞いた話によりますと妖精族の長を務める大妖精という方が手足を再生できるほどの治癒魔術を扱えるらしいのです」
海斗「そこに行って大妖精って人に……あれ?妖精といえばアスフェアが」
妖精と聞いて海斗はアスフェアに詳しく聞こうと提案するとクシアもそれに賛成している
クシア「海斗様……本当に良かったです……」
海斗がこうなってしまったことにかなり責任を感じているクシアは涙目になりながら海斗の手を握る
海斗「何言ってるんですかクシアさん……まだまだこれからですよ」
クシア「そうでしたね……まず妖精族の出会い方と……」
海斗「ここでお世話になったエナやフラガさんとのお別れもだね……」
短い時間ではあるが楽しい時間を過ごしたこの酒場とお別れしなければならない事をクシアに伝えると彼女は静かに頷き寂しそうな表情をうかべている
しかしこの会話をずっと盗み聞きしている者がいたのを二人は知らずお別れのことについて話していると突然勢いよく部屋の扉が開きエナが現れる
クシア「!? エナさんこんな夜中にどうしたのですか?」
エナ「…………二人ともどこかに行っちゃうの?」
エナは胸に手を当てて二人に質問するその表情はどことなく寂しそうにしており三人の間に沈黙の時間が続く
しばらくした後に海斗が頷いてここから出て行くことを伝える
エナ「……そうなんだ」
クシア「エナさん……私は弟を再び動ける体にしてあげたいの」
エナ「それは嘘でしょ? 」
姉のフリをするクシアだったが嘘だと指摘されて焦ってしまう
エナ「二人は姉弟でもなくて異世界の勇者と天使様なんでしょ? 」
的確な言葉に二人はしらを切ることもできずに素直に白状するしかなく
海斗「……騙していてごめんな」
クシア「本当にごめんなさい……エナさんの言う通り私が元天使で海斗様が異世界から来た勇者になります」
エナ「……一週間前から知ってた……」
海斗「それなら何故黙っていたの?」
エナ「だって……私を助けてくれたし……それに良い人って思ったから……」
ここ一週間で勇者の存在が公になったとはいえ最初からバレていたことと今までの演技が全て見透かされていたという事実に二人は恥ずかしさが込み上げてくる
海斗「……ごめんエナ……騙していたことは悪かったけど俺たちは行かないといけないんだ」
エナ「別にそんなことしなくてもここなら安全だしわざわざ危険な目にあう必要なんてないじゃん!!」
エナの言うことも最もであるが海斗は続けて
海斗「そうかもしれない……けど俺は元の世界に帰らないといけないんだ……だから」
エナ「そうなんだ……それなら…………私も」
海斗「ん??」
エナは何か言っているようだが声が小さくクシアと海斗はききとれずに何を言っているのか聞き返す
エナ「私も一緒に行くって言ってるの!!」
まさかの発言に二人は目を大きく開いて驚いてしまういくら一週間同じ場所で過ごしたとはいえ店を捨ててまで着いてくる理由が不明で何故なのかを聞くと
エナ「だって…………仮にも海斗は恩人だし……もし死なれたりしたらなんか後味が悪いから」
エナは恥ずかしいのか小声で理由を話すがまだ他にも理由がありそうな感じだが二人はそんな事にも気付かずに
クシア「海斗様が心配だというのは分かりましたが……」
海斗「今の俺が言うのもなんだけどエナは戦えるの?最初みたいに守ってあげることは出来ないかもしれないよ?」
海斗の言ったことにクシアは頷いている、この世界では一般人であるエナは足手まといになると二人は感じている
エナ「確かに二人からしたら私は一般人だけど……少し前までギルドで依頼を引き受けていたことがあるの」
予想外なエナの過去に驚くが嘘の可能性もありイマイチ信じることができずにいると……
フラガ「海斗!!エナの言ってることは本当のことだぞ」
声がする方を振り返るとフラガを含めた全員の姿が見え一つの部屋に全員が集合する
海斗「このタイミングで入って来たってことはあんた達も」
海斗は察したのかとくに驚くことなくフラガ達に質問を返す
フラガ「確信したのは先程だが最初から怪しいとは思っていた」
ニコス「だって……」
ミリア「姉弟には見えないし 全然似てないのに」
アスフェア「姉弟というより他人って感じをすごい感じたのよね」
まさかの事実に二人は顔を赤くして黙り込んでしまう、二人は一般的な姉弟を演じていたつもりだったが他人から見てみれば違和感の塊だったようで
クシア「嘘でしょ……カイちゃんって言って甘やかしてたのに……」
海斗「俺だって「クシアお姉ちゃん」って甘えてたってのに全部怪しい目で見られてたのかよ……」
クシアはともかく海斗にとってはとてつもない黒歴史を作ってしまったのかもしれないがここの誰かが言いふらさなければクラスメイトに知れ渡ることはないので少し安心する
エナ「あのー……」
話が少し脱線してしまいエナが気まずそうにしていたので話をもどし一呼吸おいてフラガが話しだす
フラガ「全部話すと長くなっちまうから簡潔に言うとエナの言ってたことは真実で魔法をある程度使える魔導士でギルドのシルバーランクの冒険者ってことだ……これならある程度信用できるだろ?」
フラガがそう言うとエナは我に返ってギルドに所属していた証明になる銀のプレートを見せる
名前もきちんと書かれていることをクシアは確認すると嘘ではないと確信する……しかし海斗は何のことか一切分かっておらずクシアに流されるように適当に返事をする
クシア「エナさんがシルバーランクの冒険者で着いて来てくれるのはとても心強いのですが……その……店の方はよろしいのですか?」
今の人数でも結構忙しかったのにそれよりもさらに人が減ってしまい大変になる事をクシアは心配する
フラガ「そんな事気にするな!!俺の店に縛られずに自由にしてほしいんだ……それに……」
店の心配は特にしなくてよさそうなのだがフラガ、ニコス、ミリア、アスフェアの四人とも顔を合わせてニヤニヤしておりエナの旅立ちに背中を押しているようだ
エナ「全くもう……でも皆ありがとう」
海斗とクシアの二人は周りが何故ニヤニヤしているのか分からなかったが心強い仲間が増えありがたいと感じていた
話し合いの結果明日に出発することが決まりエナは明日に向けての準備をするため早めに寝室へと向かっていき他の皆もつられるように部屋から出て行き部屋には海斗とクシアの二人っきりとなっていた
今日はとてつもない黒歴史を作ってしまった海斗だが彼は後にこれよりもさらに恥ずかしい体験をすることとなってしまうのだが…………




