第百三話 一握りの良心
斉藤「確かに揺れが凄いですがそんな風には感じませんよ?」
海斗「いや 勘だけどこのままアリスと戦い続けると崩壊する可能性が高いと思う」
斉藤「…………」
海斗「誰も死なせないようにするんだろ? このままじゃ全員生き埋めになってしまうよ!!」
斉藤「でも……どうしたら……」
海斗「あの馬鹿を説得させるしかない 俺はなるべく衝撃が伝わらないように戦か……ぐぅっ」
斉藤「福田君!!」
途中でアリスの拳が飛んできて海斗は吹っ飛ばされるが踏ん張って壁のギリギリの所で立ち止まる
斉藤「早く話し合わないと……」
海斗「斉藤さん 頼んだよ」
ケレノア「こちらは私に任せてください 危ない状況なのでしょう?」
状況を察したケレノアも勇者の相手を引き受ける事に決めて二刀流となって寺山達に突っ込んでいく
斉藤「はい お願いします!!」
斉藤は2体の魔物を召喚してリナを守るように伝えてサルビアの元へと走って行く
走る斉藤を操られた溝上が魔法で攻撃しようとするがカリータが間に入って防ぐ
カリータ「行ってください斉藤さん!!」
斉藤「必ず説得させてみせます!!」
ケレノア達を信じた斉藤はサルビアの元へと走っていき大きな声で呼びかける
斉藤「マザーサルビア!!お願いがあります 早く私達の仲間の洗脳を解いて下さい」
サルビア「何を言い出すかと思えば……できる訳ないでしょう」
斉藤「そうしないとこのアジトが崩壊して貴方の大切な子供達が死んでしまいます!!」
サルビア「くだらない冗談ね ちょっとやそっとの振動で崩壊するとでも?」
斉藤「本当です!!信じてください」
サルビア「…………もうその言葉は聞きたくありません」
斉藤「そんな……皆ここで死んでもいいのですか!!」
サルビア「そうやって脅せば私が大人しく言う事を聞くとでも思っているのか!!もう騙されないわ さぁダイナ族の娘よこの生意気な小娘を排除しなさい」
斉藤の必死の訴えも感情的になったサルビアは言葉に聞く耳を持たず攻撃するように命令する
アリス「分かりました」
海斗「なっ!? 待て」
海斗と見合っていたアリスは目標を変えて斉藤の方へと飛んでいく
斉藤「いやっ……」
気配は感じていた斉藤だったが力を解放したアリスの速度に反応できず海斗も間に合う状況ではなかったのだが
タチ「おい 大丈夫かよあんた?(クソ痛いじゃねーかアリスちゃん)」
そこにタチが割り込んで拳を受け止める、涼しい顔をしているが内心では痛がっている
海斗「でかしたぞタチ、もう行かせない」
その後に駆けつけた海斗がアリスを攻撃して注意を引いて斉藤達から離れていく
斉藤「何とか……大丈夫です……でも」
タチ「ここが危ないんだろ?」
斉藤「聞いてたのですか?」
タチ「まーね 勘だけどこのままだと崩壊するっては思う(あそこの地下と違って補強も何もされてないなら尚更だな)」
斉藤「タチ君もそう思うのですね……」
タチ「俺もタイガと一緒に説得させる」
斉藤「タチ君はあの子と戦ってたのでは?……」
タチ「あいつもそこまで馬鹿じゃない ここが危ない事くらい分かるはずだ」
斉藤「そうなのですね……お願いしても宜しいですか?」
タチ「うん……おいタイガ!! お前らの親玉に今すぐ洗脳を解くように説得するぞ」
タイガ「何だと?」
タチ「あの男とアリスちゃんって言うダイナ族が戦ってる反動でこのアジトが崩壊する、だからあいつに洗脳を解くように言うんだ」
タイガ「………………」
タチ「ここが危ないって事がお前も薄々気付いているんだろ?」
タイガ「それは……」
タチ「迷ってる暇なんてない 全員死んじまうぞ!!頼むから信じてくれ」
斉藤「そうです!! 私達は貴方達を殺す為に来たのではないのです」
タイガ「…………分かった サルビア母さんを説得させてみる」
タイガは少し動揺しつつもかつての友と必死な斉藤をみて信じる事に決めてサルビアの元へと歩いて行く
サルビア「あらタイガ 何をしているの?奴らはまだ残っているわよ?」
タイガ「その事なんだけど……今すぐにあいつらの洗脳を解いてあげれないかな?」
サルビア「何を言っているの!!」
タイガ「サルビア母さんは人間だから分からないかもしれないけど音を聞く感じだとここは危ないと思う……」
サルビア「タイガ……貴方騙されているのよ そこの小娘に唆されたのよね?」
タイガ「違います!!僕はあの人達が嘘をついてるとは思えないのです だから信じたい」
サルビア「簡単に信じちゃ駄目だと何回も教えたでしょ!! そうやってあなた達は騙されて酷い目にあってきたのよ それが分からないの?」
タイガ「でも……母さんと同じように暖かくて優しくしてくれる人が居るかもしれないじゃないですか」
サルビア「…………」
タチ「お願いだ 俺だって同じ仲間が死ぬとこなんて見たくないだよ!!」
斉藤「私達を信じて下さい!!」
サルビア(もう一度…………だけ それにこの子達なら……)
サルビア「分かりました……貴方達を信じてみます」
人間を信じる事に抵抗を持っていたサルビアだか斉藤やタイガの声が後押しをし僅かに残っていた人を信じる心に従う事に決めたのである
サルビアが指輪に魔力を込めると同時に操られていた勇者達の洗脳が解け正気に戻ったので今の状況に驚いていた…………1人を除いては
工藤「エナ!!洗脳が解けたんだね」
エナ「そう……私 操られてたんだね」
工藤「そうだよ サルビアに操られてて私と戦ってたんだよ」
エナ「そうだったんだ……でも幻だったとしてもお父さんとお母さんに会えて嬉しかったな、少し悔しいけど」
工藤「そう……だよね」
エナ「でも工藤の声もうっすらと聞こえてたよ」
工藤「そう……良かった」
全員の洗脳が解けて喜んでいるがそれらをかき消すように衝撃がアジト全体にはしる
工藤「どうして……洗脳は解いたはずじゃ」
海斗「クソ まだか!! もう持たないぞ」
アリス「…………」
何故かアリスだけ洗脳が解けておらずサルビアも焦っている
斉藤「サルビアさん!!どうなっているんですか?」
サルビア「私にも……分からない 何でよ 確かに解除したはずなのに」
海斗「(後はアリスだけか?でも何故)何か理由があるのか?」
斉藤「分からないみたいです!!」
海斗「…………だったら全員ここから避難させるんだ!!俺はアリスを抑えとくから」
斉藤「しかし……全員間に合うのかどうか……それに道も複雑ですし」
海斗「寺山と溝上と上野君が覚えてるんだろ? お前らは操られてて良いとこ無しなんだから少しは働きやがれ」
寺山「言ってくれる」
溝上「言い方はムカつくが事実みたいだし否定できねーな」
上野「福田君をしんじるしかないね」
寺山「だが……お前は大丈夫なのか?」
斉藤「そうですよ、また福田君に背負わせる訳には……」
工藤「海斗がアリスちゃんを上手く外に出すとかは無理なの?」
エナ「……海斗とアリスちゃんから大丈夫 早く子供達を避難させよう」
クラスメイトと反対にエナは海斗の事を信じておりその言葉を聞いて皆は海斗に託す事にしたのだ
海斗「そうだ、信じてくれ!!」
斉藤「わ……分かりました サルビアさん早く子供達に指示を出して下さい」
エナ(海斗……アリスちゃん…… 信じてるから)
サルビア「えぇ……分かりました」
サルビアやタイガが的確に指示を出し上野や寺山達も残っている子供達がいないかをしっかり確認して周るなど役割を細かく分担する事で迅速に避難させる事に成功した
タイガ「急げ」
タチ「分かってるさ コイツらで最後だろ?」
タイガ「あぁそうだ……後はあいつだけだな」
タチ「まぁ大丈夫だろ」
タチとタイガは最後の子供を抱えて脱出し2人を最後にして少しの時間を置いて凄まじい衝撃と共に入り口が完全に崩れ去ってしまいアジトが崩壊したのである
サルビア「私があの魔法を使ったばかりに……」
斉藤「あの洗脳は解けないのですか?(外で子供達を拘束していて良かったです)」
サルビア「分かりません……どうして……」
アジトの崩壊や子供達の鳴き声を聞いたサルビアはパニックになっており普段とは違う姿にタイガはかなり心配している様子である
斉藤(今はそっとしておいた方が良さそうですね)
工藤「海斗は……無事だよね?」
エナ「大丈夫 耳を澄ましてみて」
タチ「だな」
次の瞬間に崩れ去ったアジトの山のてっぺんからメイスを持った海斗が飛び出してきてそれを追うようにしてアリスも後を着いてきた、しかし洗脳はまだ解けていない様子である
海斗「天空城の床に比べれば柔らかいもんだぜ」
工藤「良かった……」
エナ「海斗!!でもアリスちゃんがまだ」
海斗「分かってる、洗脳はどうにもならないの? ぐぉっ」
アリスは喋る余裕を与えてくれそうになく海斗を攻撃し続けており海斗もメイスを投げ捨ててアリスとの拳のぶつけ合いがはじまり中にいた時よりも数倍大きな音が崩壊したアジトの上から響いている
斉藤「魔法道具に何か秘密があるとしか……」
サルビア「………………」
ケレノア「黒魔力」
サルビア「っ!?……」
ケレノアの言葉にサルビアは思うところがあるのか動揺する
ケレノア「やはりそうですか となると貴方はデストリンガーと繋がっている」
マッシュ「ケレノアさんは分かるのですか?」
ケレノア「実際見た事はないけど特徴として黒く禍々しい魔力という事は知っています この方の反応を見るに当たっているようですがね」
リナ「という事は解除する事ができないって事?」
工藤「上野君と寺山君がやったみたいに聖の魔力を流し込めば何とかなるはずです」
斉藤「そうしたいところですが2人とも疲弊していてとてもじゃないですが厳しそうです」
エナ「それなら、クシアと聖龍さんに来てもらおう」
斉藤「そうですね、今すぐに連絡してみます 他の人は福田君の邪魔にならないように安産な場所へ」




