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第百一話 サルビア


 タチとタイガの2人は真剣な眼差しで互いを見ておりその他の人はそれらの様子を見守っている


 斉藤「タチ君!?王子と王女の知り合いなのですか!?」


 タチ「答えろタイガ!!どうしてこんな事をしているんだ」


 

 タイガ「何回聞こうが一緒だ お前に教えた所で無駄だ」


 タチは斉藤の質問を無視してタイガとのやり取りに集中している、しかし無視された斉藤が無理やり話を聞こうとするが


 海斗「斉藤さん 今は口を出したら駄目だ」


 斉藤「…………分かりました」



 タチ「お前の事だから理由があってこんな事をしてるんだろうけど……友達が苦しんでるのにお前が側に居てやらなくてどうするんだよ!!」


 タイガ「そう言うお前こそ何故レオスの側に居なかった」


 タチ「俺は……弱いから あいつのそばに居ても何もしてやれないから」


 タイガ「お前もあいつとは友達じゃなかったのか?」


 タチ「だから俺には……その資格がないんだよ」


 タイガ「お前が勝手に思い込んで離れて行ったんだろうが!!あいつはそんな奴じゃない」


 タチ「そう信じたいさ……けど王族でもなければお前みたいに強さもない俺は何もしてあげられない」


 タイガ「だったら何だ」


 タチ「だから俺はお前をあいつの元へと連れて行く……」


 タイガ「断ると言ったら?」


 タチ「……力づくでも」


 タイガ「ほーう 言うようになったじゃないか ならかかって来い 喧嘩の続きだ」


 タチ「あぁ」

 

 睨み合っていた両者は戦闘態勢に入りタチの方から先に突っ込んで拳と拳がぶつかり合う



 斉藤「なんか勝手に始まってしまいましたがマザーサルビアはどこなのですか?」


 エナ「その事なんだけど……」


 工藤「今戦ってるタイガって子がここで待ってたら会えるって言ってた」


 斉藤「……それは信じても良いのですか?」


 リナ「でもここがあの人の部屋でしょうし……待つしかないんじゃないですか?」


 カリータ「私もあの子が悪い子には見えないですし信じても良いと思います」


 ケレノア、マッシュ、ミラの3人も頷いて同意しておりサルビアがここに来るまでタイガとタチの決闘を見守る事に決めたのである


 アリス「タチ君……大丈夫かな」


 海斗「……まだタイガとかいう奴の方が押しているな」



 タイガ「少しは強くなったようだがまだまだだな」


 タチ「あぁ……そうだな」



 マッシュ「あいつ 押されてるぜ」


 ミラ「あのタチって子もやるみたいだけどあの子には厳しいんじゃないかしら?」


 マッシュ「海斗 あいつは大丈夫なのかよ」


 海斗「そろそろ巻き返しだすんじゃないか」

 

 ミラ「本当なの?結構ボロボロよあの子」


 ケレノア「2人共あのタチという子をよく見るのです」


 マッシュ「何で?」


 ミラ「何かあるのですか?」


 ケレノア「ほんの少しですが変化があります」


 海斗「さすがゴールドランクの冒険者だな分かるのか?」


 ケレノア「彼の筋肉の動きと呼吸が変化しているのは分かります」


 マッシュ「…………あーよく見たら顔が少し赤くなってる?」


 ミラ「うーん……全然分からない」




 カリータ「そう言えばシドウ先生が獣人は魔力を使わずに身体能力を底上げすることができると言ってましたね」


 リナ「そうだったね、先生もできない事は無いって言ってたしサブナック君とパックには教えてたみたい」


 海斗「まじでか!?知らなかったよ」


 カリータ「……何故私達には教えてくれなかったのでしょうか?」


 リナ「先生は体がある程度頑丈にならないと上手く扱えずに体を傷つけるだけって言ってたし私達の体を心配してたんじゃないかなって思う」


 海斗「そうだな、身体中の血液を加速させるから実際の体の負担は凄いからね」


 エナ「凄い、海斗はできるの?」


 海斗「少しならって感じかな」


 カリータ「出来るのなら私達にも教えてくださいよ」


 海斗「これは元々体が頑丈な獣人だからこそ出来る技だからオススメはしないし難しいと思う」


 カリータ「そうなのですね……」


 海斗「その代わりに魔力を上手く扱う事が重要だと思うよ」


 エナ「人と獣人で色々とやり方が違うって事だね」


 カリータ「分かりました、ありがとうございます」


 リナ「勉強になったよカンナ」


 海斗「どうしたしまして」


 寺山(こいつが解説してるだと!?ありえねー)


 海斗は最近教わった技を解説しているのだが寺山や斉藤からすると今までの海斗からは信じられない事であるのは間違いなかった



 タイガ「ほー 身体能力を強化する技かそんなものを覚えていたとはな」


 タチ「お前を倒すために修行し続けてきたんだ もうあの頃の俺じゃないぞ」


 タイガ「面白い そうなら一回くらいは俺に勝ってみろ!!」


 2人の獣人は互いの気持ちをぶつけ合いながら互角に戦っているが徐々にタチの攻撃が当たり出して押し始めていたのだが


 ?「タイガ 随分と苦戦しているようね」


 海斗「……お出ましか」


 斉藤「貴方がマザーサルビアですね」


 タイガ「すみませんサルビア母さん」


 タチとタイガは距離を離し部屋の一番奥に注目すると綺麗な赤髪をしている大人びた女性が現れる


 


 サルビア「いいのよ その子は貴方の友達なのでしょう?」


 タイガ「……まぁ はい」


 サルビア「お互いに思う存分ぶつかり合うと良いわ、私はお客さんの相手をしておくから」


 頷いたタイガはタチと再び戦闘を始め2人の戦いを背景にしてサルビアは海斗達に話しかける


 サルビア「それで貴方達は私に何か用かしら?」


 海斗(人間か……てっきり獣人が指揮をとってるのかとおもってた)


 斉藤「単刀直入に言います、何故王国の子供達を攫っているのですか?」


 サルビア「そんな事を聞きにきたのですか……貴方達ならばあの国の現状が分かってるはずでしょう?」


 エナ「貧しいのは知ってます……でもそこからさらに悲しみを生むなんて間違ってます」


 サルビア「悲しみ? あの国にいる事自体が悲しい事ではなくて?」


 エナ「そ……それは」


 サルビア「先代の国王が暗殺され貧しい獣人が増え更にジュエリーナやソルセリからは差別されてしまう状態である国に獣人の子供がいるのが悲しい事であると思わないのですか?」


 海斗「あんたの理屈は分かるがジュエリーナのカネリア王女が言ってたがビスト王国との差別を無くしたいと言っていた」


 サルビア「所詮は綺麗事です、それにたかだか王女如きにそんな事ができるはずがありません」


 エナ「でも……差別せずに歩み寄ってくれる人だって……」


 サルビア「そんな事は百も承知ですよ、しかし現状をみなさい!!多くの人間が歩み寄ってくれるのならば今のビスト王国はこんなに貧しくなってないでしょう?」


 寺山「難しい……よな」


 上野「だからと言って貴方が行っている行動が正しいと言うのですか」


 サルビア「私は自分が正しいとは思っていないわよ」

 

 エナ「だったら何で……親がいるかもしれない子供を攫うの」


 サルビア「でもここの子供達は最初こそ寂しがっているけど今は楽しそうにしているわよ?貴方達もこの部屋に来るまでに見たでしょ?」


 工藤「……確かにそうですね」


 工藤達はここに来るまでの間にほとんど攻撃されておらず子供達が工藤らに怯えていたのを思い出す


 サルビア「こっちから言わせてもらえば貴方達が私達の幸せを奪いにきたようなものよ それが分からないのかしら?」


 誰も言い返せずにいると海斗が口を開く



 海斗「……大人しくする気はないみたいだな」


 サルビア「えぇそうよ」


 海斗「だったら力ずくでもお前を連れて行く」


 サルビア「子供達は望んでここにいるというのに私を捕まるのね」


 斉藤「福田君……」


 海斗「お前がここでどんな信念を持ってこんな事をしているのか俺には分からん、でもお前達を捕まえてあの国に連れて行くそれが王様の命令だからな」


 サルビア「全く聞き耳を持たない子供達ですね……貴方達なら私の行いを理解してくれると感じたのに残念です」


 ケレノア「仕方ないですがそうするしかありません」


 アリス「…………」



 サルビア「力では貴方達に敵わない事など分かっています」


 海斗「なら大人しくするんだ」


 サルビア「これだけは使いたくありませんでしたが……仕方ありませんね」


 サルビアは手の甲を海斗達に見せてはめている指輪に魔力を込める


 リナ「まさか」


 カリータ「皆さん!!あれを見ては駄目です!!」


 サルビア「もう遅いわ イマーネ デレット」


 リナとカリータは何かに気付いて全員に呼びかけるが遅く辺りは白い光に包まれてしまう


 サルビア「この光を見れば幻術にかかって私を母と勘違いし命令を聞くようになるのよ……貴方達もまだ子供 母には逆らえるはずがないわ」


 


 タイガ「おいタチ!!お前が連れてきた奴らはもう終わりだぞ だからこんな事は辞めろ そして俺たちと一緒に来い!!」


 タチ「…………よく見てみるんだな」


 タイガ「何?」



 ケレノア「全く……私がまだ哺乳瓶を咥えるようなお子様に見えたのでしょうか?」


 サルビア「流石はエルフ、長生きのようですね しかしこの人数を相手にどうするのですか?」


 ケレノア「私だけではありませんよ」


 サルビア「何?」

 

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