第百話 作戦開始!!
斉藤達はマザーサルビアが率いる盗賊団を捕まえる為に山の麓へと来ている
海斗「今更なんだけどクシアとホーリアーはいないんだな」
エナ「クシアと聖龍さんは王国の方で王女様の面倒を見ているの」
海斗「レオナ王女だったか?病気か何かだったか?」
斉藤「いえ 元々は元気だったそうですが数年程前から原因不明の病で弱ってしまったそうなのです」
海斗「そうなのか……だからクシアとホーリアーで面倒見てるって事か」
斉藤「そうなりますね、それにこれだけの人数がいれば問題ないと思いますので安心してて下さいとは伝えてきました」
海斗「斉藤さんがそう思うなら大丈夫だね」
斉藤「ありがとうございます、ですが油断はしないで下さいよ」
海斗「うん、頑張るよ」
エナ「海斗と斉藤さんの負担が大きいけど頑張って、私達も速く終わらせるようにするから」
海斗「大丈夫だよ、信じてるから」
エナ「うん」
そうしてしばらく経って全員が立ち止まって作戦の再確認を行う
斉藤「皆さん準備は良いですね?」
斉藤の声に全員が頷いて深く深呼吸をする
斉藤「それでは作戦開始です!!」
掛け声と同時に全員が真剣な表情となり目標の地点に向かって走りだして作戦が始まった
斉藤「福田君とタチ君はここを真っ直ぐ進んでください」
海斗「確か広間のような場所があるんだよね?」
斉藤「そうです、私達も準備して待機してますので合図は福田君がお願いします」
海斗「了解、タチ!!着いてこい」
タチ「分かってるよ」
海斗とタチの二人は先行して山を登っていく
海斗「恐らく向こうも気がついてるはずだ」
タチ「何人か偵察してたのは俺でも分かるよ」
海斗「そうか」
すると二人は平たい場所へと辿り着き目の前には扉があってアジトへの入り口があるのだがその目の前には見覚えのある獣人がいたのであった
フォクス「侵入してきた人がいるって聞いたけどまさかお前だったか」
海斗「お前は…………」
タチ「? 知ってるのか?」
海斗「まーな 確かお前はナグマだったな?」
以前会ったことのある獣人で名前は覚えていたのだが誰がどの名前かまでは覚えていなかった
フォクス「ちげーよ俺はフォクスだ!! それであんたはここに何の用だ?それにチビの獣人を連れて説得にでも来たのか?」
タチ「誰がチビだ!!」
海斗「お前ら誘拐犯の親玉に会わせろ そうすれば痛い目に合わずにすむ こちらの要求はそれだけだ」
フォクス「……その気はないと言ったら?」
海斗「力ずくで捕まえる」
タチ「そうするしかないよな……」
フォクス「お前ら人間は信用できない みんなあいつらを追っ払うんだ!!」
海斗「そうか……許せよ」
海斗「全員突撃ー!!」
海斗は深く深呼吸をして大声で叫ぶと周りにいた全員が飛び出す
フォクス「こんなにたくさんいたのか!?」
海斗「たったの二人で突っ込んでくると思っていたのか?」
フォクス「チッ……母さんの所に行かせるわけには……」
ナグマ「大丈夫だ タイガがいるから何とかなる」
フォクス「そうだな それに俺らでも何とかできるさ」
タチ「タイガ……俺は あいつに」
海斗「…………エナ サルビアの捕獲は任せたよ」
エナ「うん……海斗もしっかり持ち堪えてね」
海斗「大丈夫、心配しないで」
工藤「頼んだよ」
フォクス達は石を投擲して攻撃してくるが海斗はそれらを弾き飛ばしその隙をついてエナ達は中の方へと入って行ったのである
フォクス「入られてしまったけど ここの作りは複雑なんだぜ」
ナグマ「一生彷徨い続ける事になるだろうし帰り道が分からなくなって死んじゃうかもよ」
海斗「さーそれはどうかな? 俺達はお前らを足止めしなきゃいけないからな」
タチ「…………そうだよな」
斉藤「私達が相手ですよ!!」
斉藤は呪文を唱えて大量の魔物を召喚する
海斗「なんだ? クラゲとスライムか?」
青色で触手を持って宙にユラユラと浮いているクラゲのような魔物と偵察で使った時と違って人の腰あたりまでに大きくなったらスライムを半分ずつ召喚して獣人達に圧をかける
斉藤「そうです、獣人達をこれで拘束します」
海斗「抜けられたりはしないの?」
斉藤「フフフ、いくら力が強くても柔らかいものには敵いませんよ……多分」
タチ「ウネウネしてて変な感じだけど取り敢えずあんたがその変な生き物で捕まえるって事で良かったよな?」
斉藤「変なのというのは一言余計ですがその通りです、ボディガードお願いします」
海斗「そういう事だ、分かったか?タチ」
タチ「分かってるよ 間違えて俺を捕まえないでくれよ」
斉藤「勿論です」
フォクス「くそ 何なんだこれは」
獣人は得体の知れない物に翻弄されてしまい海斗とタチも上手く隙をついて獣人を追い込んでいき次々と斉藤のクラゲやスライムに捕獲させていくのだが……
「嫌ーー!!」
「離して!!」
斉藤も複数の魔物を操作して捕まえているのだが海斗は何か異変を感じ取る
海斗「……おい斉藤さんよ、さっきから気になってんだけど獣人の女の子ばっかりあれで拘束してないか?」
斉藤「はっ!? 何を言ってるのですか 私は決して女の子が拘束されてるのを見たい訳ではないですからね?」
海斗「そうですか……(早く捕まんねーかなこの人)」
斉藤「信用してませんね……福田君だって私と一緒に色々と……」
海斗「ちょっと待ってくれ 今は関係ないだろ」
タチ「あんたそれ浮気じゃないのか?流石の俺も浮気が罪になる事はしってるぞ」
海斗「ややこしくなるな……一応お前も金を盗んでるからな?」
タチ「……まあ犯罪者チームって事で仲良くいこうぜ」
斉藤「なっ!?一緒にしないで下さい!!」
海斗「フッ……犯罪者トリオか」
斉藤「三馬鹿トリオみたいに言わないで…………すみませんやっぱり何でもありません」
海斗「謝らないで斉藤さん 少し懐かしいって思ったからさ……」
斉藤「そうですか……」
タチ「?」
海斗「取り敢えず集中するぞ」
タチ「お おう」
色々と思うところはあるが海斗は懐かしむような素振りを見せており斉藤は事情を知っているのか口を滑らせてしまった事を謝っている
何も知らないタチは疑問を抱くのだが海斗に指示を受けて集中する事に決めて獣人を作戦通りに捕獲していき目に入る者は全員捕まえる事に成功する
海斗「随分と時間が経ったけどまだなのか?」
タチ「さー」
斉藤「分かりません……迷ってしまったのでしょうか?」
タチ「途中でやられたんじゃないのですか?」
斉藤「…………そんな事はないと信じたいですが」
海斗「ここにいる奴らのほとんどは斉藤さんが拘束してるから突入してもいいんじゃない?」
斉藤「そうしたいのですが……すみませんが道は覚えきれてないのです」
海斗「そんだけ複雑って事か…………タチは鼻が効くんだったな?」
タチ「まーそれなりには」
海斗「俺と斉藤さん以外の誰かの匂いは覚えてるか?」
斉藤「成る程、獣人のタチ君に匂いをたどってもらうという事ですね」
タチ「えーと……アリスちゃんの匂いなら覚えてる」
海斗「そうか、辿れるか?」
タチ「うん……」
フォクス「クソ お前らを行かせるわけには」
海斗「そこで大人しくしてるんだ、タチ頼むぞ」
タチ「おうよ(タイガはいないか……)」
タチを頼りにして3人は進んでいく、中の作りはかなり複雑になっており無数に道が別れている為初めて見た海斗は迷ってしまうのも納得したのである
海斗「これは……迷うのは仕方ないんじゃないか?」
斉藤「ですから上野君と寺山君にお願いしたのですよ」
海斗「単細胞には厳しいな……それに」
複雑な道を行く中で敵である獣人を何人か見かけるのだがその獣人はあまりにも幼く怯えている者もいればこちらに興味を示している者と様々である
海斗「敵意はほとんど感じない」
斉藤「そうですね……人間を嫌っていて攻撃してくるものだと思ってたのですが」
海斗「幼すぎる……コイツらが悪い奴には思えない」
斉藤「私もそう思います……だからこそ確かめないといけないのです」
タチ「匂いが強くなってきた……段々と近づいていると思う」
斉藤「頼みます」
2人はタチを信じてひたすらに進んでいく、そして大きな広間に辿り着くと先に先行していたエナ達の後ろ姿が目に入る
海斗「エナ達だ 流石だなタチ」
タチ「タイガ……」
褒めてもらったタチだがエナ達の前にいる獣人を見つけて真剣な表情で見つめている
海斗「確かあいつはここのリーダーだったはずだ」
タチ「タイガを知ってるのか?」
海斗「一瞬だけな、あいつと会いたかったのか?」
タチ「ああ そうだよ あいつには色々と言いたい事があるんだ」
斉藤「…………行きましょう」
近づいて行き声をかけるとエナ達は驚いた表情でこちらを振り返る
エナ「海斗!?どうしてここに?」
海斗「ある程度拘束して動けなくしたから突入したんだ ここがサルビアって奴のいる部屋?」
エナ「うん、映像で見た部屋と一緒だし間違いないと思う」
海斗「そう……それであいつはどうしたの?」
エナ「あの子はここのリーダーだよ 覚えてる?」
海斗「覚えてる 何もしてこなかったの?」
エナ「それが……母さんに会いたいならここで待ってろって」
海斗「?」
しかし座っているタイガに対してタチが声を大きくして話しかける
タチ「タイガ!! こんな事をしてどういうつもりなんだ」
タイガ「誰かと思えば タチか、何の用だ?」
タチ「お前に言いたいことがたくさんあるんだ」
タイガ「何だ?説得でもしに来たのか?」
タチ「あぁそうだよ 今俺たちの国が大変な事になっているというのに何でお前がこんな事をしてるんだ」
タイガ「お前に話した所で何も変わらん」
タチ「レオスもレオナも苦しんでるだぞ!!」
斉藤「タチ君!?王子と王女と知り合いなのですか!?」
この言葉に何人かは驚いた表情でタチを見つめている、衝撃の事実ではあるのと同時にタチとタイガの関係性の謎が深まったのである




