第九十九話 盗賊のアジトへ
アリス「今日は盗賊をやっつけに行くんだよね?」
海斗「あぁ そうだぞ」
時刻はお昼で朝ごはんを食べ終えたアリスと海斗は東門の少し離れた位置で待機しており斉藤達を待っているのだが
海斗「何でお前がここにいるんだ?」
タチ「お願いだ!!俺も連れて行ってくれ」
何故かタチも着いてきており海斗も困惑しているがアリスは歓迎しているようである
アリス「多い方が心強いよ」
海斗「いや……俺は別に構わないけど いきなりだから他の人が何と言うか分からないぞ」
タチ「だって昨日は盗賊を倒しにいくって聞いてびっくりしたんだよ、頼むから何とかしてあんたの仲間を説得してくれよ」
海斗「俺は海斗だ名前くらい覚えてくれよ 足手纏いにならないなら連れてってくれるはずだと思う(アリスの名前は覚えてるのにな)」
タチ「ごめんなさい……海斗さん」
海斗「……盗人にさん付けされるのはモヤモヤするな 呼び捨てで呼んでくれ」
タチ「なっ!?……分かったよ……海斗」
海斗「なんならお兄ちゃんって呼んでくれても」
タチ「それは嫌だ!!(何でお兄ちゃん呼びはいいんだよ)」
海斗「冗談だよ……だけどどうして着いてくるんだ?」
タチ「……会いたい奴がいるから」
海斗「……そうか、俺とアリスで説得はしてみるけど作戦のリーダーが駄目だと言ったら諦めろ それで良いか?」
タチ「…………」
海斗「……まぁお前は駄目だと言われても勝手に着いてくるか」
タチ「俺だって少しは強くなったんだ足手纏いにはならないぞ」
海斗「分かってる だがそうまでして会いたいやつって誰なんだ?」
タチ「お前に分かるわけないだろ」
海斗「……それもそうか」
アリス「あっ クシア達が来たみたいだよ」
海斗「実はどんな作戦か知らないんだよな」
タチ「えっ!? 仲間だろ? あんた仲間外れじゃないか」
海斗「色々あって話す時間がなかったから今から聞くところだって……それに作戦のリーダーに生意気な口聞くんじゃないぞ?理由はお前が一番分かってるはずだ」
タチ「そうなのか……あの人がリーダー?」
海斗「違うあの男はマッシュだその2つ隣にいる女の子だ」
タチ「あの人が?」
こちらに歩いて来ている斉藤達は海斗とアリスに手を振っているが1人多い事に疑問を抱きながらも話しかける
斉藤「福田君とアリスさん 少し遅くなってごめんなさい それとそこの獣人の方は誰ですか?」
海斗「自己紹介しろ」
タチ「えっと……僕は……獣人のタチです…………盗賊団に会いたい奴がいるから貴方達の作戦に参加させてくれ……じゃなくてください!! お願いします」
エナ「君は確か……」
工藤「海斗のお金を盗んだ子だよね?」
斉藤「盗んだ!? 貴方も盗賊と同じじゃないですか」
タチ「あれは……本当にごめんなさい……ワガママかもしれないけど貴方達に着いていきたいです……」
斉藤「……分かりました(もしかしたら盗賊の子達と打ち解けてくれるかもしれませんね)」
態度から根はいい子で悪いやつではないと感じとった斉藤は不安もあるが連れていく事に決めたのである
タチ「やった ありがとう!!」
斉藤「しかし自分の身は自分で守って下さい 私もフォローはするつもりですが完全に面倒を見れる訳ではないので」
タチ「わ、分かりました!!」
海斗「斉藤さん こいつはそれなりにタフだからそんなに心配しなくても大丈夫だよ(説得するまでもなかったか)」
タチ「あんた……」
斉藤「福田君がそう言うのなら信じるしかありませんね」
タチ「精一杯頑張る……それで作戦があるって聞いたんだけど俺はどう動いたらいいの?」
海斗「そういやそうだったよ 俺とアリスは何も知らないんだった」
アリス「緊張する……」
斉藤「単純な作戦です 福田君と私だけで多くの獣人を相手にするつもりでしたが獣人のタチ君も入れた3人で盗賊を足止めします」
海斗「たったの3人で!?というよりタチが居なかったら斉藤さんと2人だけだったの!?」
斉藤「私ならいけると思いましたし他の皆さんも賛成してましたのですが……」
海斗「敵の規模とかも全然知らないし」
クシア「敵は全員子供の獣人です それに今回の作戦は倒すことではなく捕獲ですのでなるべく傷付けないようにして欲しいです」
海斗「……了解 俺達で引きつけてる間に他の人達でマザーサルビアを捕まえるって事なのかな?」
斉藤「はいその通りです 映像を見る限りだと全員が慕っているようなので人質にとってしまえば恐らく手を出せなくなるはずですので」
海斗「人質か……まるで悪役のようだな」
斉藤「そんな事言わないで下さいよ!!傷付けずに済む方法と言って下さい」
海斗「ごめんよ……とても優しい作戦だと思う」
タチ(コイツらやっぱり変わってる)
斉藤「という事ですタチ君 よろしいですか?くれぐれも勝手な行動はやめて下さいね」
タチ「分かりました(俺はあいつに色々と言いたいんだ)」
斉藤「お願いします、それでは盗賊が住処にしている山へと行きましょう 福田君、アリスちゃんとタチ君には道中で作戦の詳細を伝えますので覚えて下さい」
タチが加わる事は予想外ではあったが斉藤は3人に作戦の詳細を伝えながら目的の場所へと移動する
重要な作戦でありそれが上手くできるか不安になる者が居たのだが当初の人数よりもケレノアやタチが加わり人数が増えた事からほとんどの人は安心している
そしてその勇者の集団を監視している影があるのだが本人達はそれを知る由もなかったのだ
?「あいつらは確か……」
?「恐らく例の勇者ですね 異世界から召喚されたという」
?「いや違う あの小さい奴さ」
謎の威圧感を放つ男は遠くからアリスを見つめている
?「もしかするとあの子は……」
?「まぁ良い、いずれにせよ楽しみがまた一つ増えたからな」
?「同族としてという事ですか?」
?「そんな所だな、今日は引き上げるぞ」
?「了解です」
二人の男はそう言い残してその場を立ち去ったが見られていたアリスと海斗は何かを感じとっていたのである
アリス「…………何だろうこの感じ」
海斗「視線を感じたような気がしなくもないな」
アリス「レクスおじちゃんの感覚と似てる……」
海斗「そうなのか」
タチ「アリスちゃん何かあったの?」
アリス「分からない……」
斉藤「何の事か分かりませんが今は作戦の話に集中して下さい」
ハキハキと話す斉藤に海斗とアリスは小さく返事をして再び作戦の内容を確認する
斉藤の説明によりある程度理解できたのでその後はアジトまでの道のりをお話ししながら進んでいた
海斗「アジトの構造とかも全部分かってるの?」
斉藤「はい、山のとある場所に入り口があるのでそこからは何と言ったらいいのでしょう……簡単に言えば蟻の巣のように複雑な道になっていますね」
海斗「成る程ね、それでサルビアとかいう奴の部屋とかは分かってるの?」
斉藤「寺山さんや上野君が覚えているので心配ないです」
海斗「二人共暗記するのが得意だったよな確か」
そしてどこから聞いたのか寺山が割って入ってきて煽るように話しかけてくる
寺山「単細胞と一緒にすんなよ」
海斗「んだと!?久しぶりに話したと思ったらそれかよ」
寺山「悪かったよ、 カンナちゃん」
海斗「それは……言うな」
寺山「いくら潜入の為とは言えその行為は犯罪じゃないのかなー?」
海斗「テメェ……さっきから言わせておけば、お前こそソルセリにいた時に一人で夜の繁華街の方に……」
寺山「海斗 ちょっとこっちに来い」
寺山は慌てて海斗の首を絞めて斉藤達から遠ざかり小声で海斗に話しかける
アリス「二人共行っちゃったよー」
タチ「ヒソヒソ話してるな」
斉藤「気にしなくて大丈夫ですよどうせ下らない事でしょうから」
タチ「喧嘩か?」
アリス「そうなの?でも海斗お兄ちゃんは喧嘩するほど仲が良くなるって言ってたよ」
斉藤「お兄ちゃん!? ちょっとアリスさんこちらで話しましょうか(福田君……貴方という人は)」
アリス「ん?」
タチ「待てよ」
斉藤は海斗がアリスにお兄ちゃんと呼ばせている事に何かを感じ取ったのか色々と質問を始めタチもアリスが気になるのか斉藤の後を追って行ったのである
寺山「お前 何故その事を知ってるのだ」
海斗「街を見ている時に見かけたんだよ おまけに一人でビクビクしていただろ お前がよくやるエロゲーの主人公のように堂々としてれば良いってのに」
寺山「馬鹿野郎!! あれはエロゲーじゃなくてギャルゲーだと何回も言ってるだろうが」
海斗「モエモエwars だったか?」
寺山「そうだよ、というよりお前よくあのセリフ覚えてたな」
海斗「あの時は勝つ為にどんな汚い手でも使うつもりだったからな、てかかなり同様してたぞ」
寺山「当然だろ 一言一句同じセリフを言われたらそうなるわ」
海斗「あの時のお前の顔は面白かったぜ」
寺山「言い返せねーな……でもお前も他のAクラスの人と真剣勝負とは思えない勝ち方をしたそうじゃないか」
海斗「勝てばいいんだよ」
寺山「ゼルには下着を見せびらかしリザさんにはスカートを風魔法でめくっていたとか? 変態野郎」
海斗「チッ……クラスの人に聞いてやがったか」
寺山「お前が俺らの得点を大幅に下げたから当然だろ、それよりもお前リナさんやカリータさんと仲良かったが気まずくねーのか?」
海斗「最初はカリータが恥ずかしがってたけど……今は気にしてなさそうだな……というよりもカンナになってくれって頼まれるくらい」
寺山「そうなのか……」
海斗「多分だけど過去の歴史で自由に性別変えられるようになってそこら辺が寛容になってると思うぜ」
寺山「お前にしては考えたな 少し納得したわ」
海斗「それなりに勉強したからな」
寺山「アホTOP 3に入るお前だったってのに」
海斗「……まー王宮でやられてからマジで危機感持った感じだな、色々大変だったんだぜ」
寺山「そうだったな……でもそのおかげか知らんがお前は変わったと思う」
海斗「そうかなのか?例えばどこら辺が?」
寺山「自分の頭で考えろよ」
海斗「面倒くせー奴だな」
寺山「そういう事だ、少し話が逸れたがさっきの事をバラされたくないならさっきの件はお互いに秘密だからな?良いな?」
海斗「分かったよ、お互い様って事で」
寺山「おう……で後一つお願いがあるんだが」
海斗「なんだよ」
寺山「もう一回カンナちゃんになって俺と……デートしてくれないか?」
海斗「はあっ!?」
謎の事を言い出す寺山に海斗は動揺して変な声を出してしまうが彼は真面目に話している
寺山「すまないがクシアさんに女体化の魔術を受けて俺を女の子に慣れさせて欲しいんだ」
海斗「えぇ……てかお前学園でモテてただろ、というよりも他のクラスの女子とかもお前の事話してるの結構聞いたぜ」
寺山「だって……あんなにチヤホヤされた事なんてないし」
海斗「それもそうか……てっきり好みの女の子と付き合ってると思ってたよ 異世界に来ても寺山は寺山って訳か」
寺山「うるせ 扱いがいきなり変わると変な気分になるだろ お前は俺の仲間だと思ってたのにな、エナさんと付き合ってんだろ?」
海斗「まー色々あったけどな……ふざけた内容だけどお前は真面目そうにしてるから考えといてやるよ(あれだけアニメの女の子にしか興味ないと言ってた寺山が……お前もかなり変わったよ)」
寺山「ありがとな……」
海斗「取り敢えず今は目の前の作戦を終わらせる事だな、足引っ張るんじゃねーぞ」
寺山「お前こそ子供が相手だからって油断すんなよ」
海斗「お前こそな」
そうして離れていた二人は再び全員の輪の中に入っていき目の前の山を前にして気合を入れるのであった




