第九十五話 地下での戦闘
海斗（今回バレたのは俺は悪くないよな……）
アリスとレクスが構えているのをみて考え事をするが今はそのような状況ではない
海斗「おい爺さん本当にどういうつもりなんだ」
レクス「静かにしておれ タチもこの戦いをみておくのだ」
海斗「まじでなんなんだよ……」
タチ「クソジジイが」
タチもその場を離れて海斗の隣に移動する
海斗「アリス！！ 無理に戦う必要はないと思うけど……」
アリス「……確かにそうだけど 私はこの人と戦わないといけない そんな気がするの」
海斗「そうか……（構えを見るだけで分かる あの爺さんは只者じゃないな）」
普段とは違うアリスだというのは海斗が一番分かっておりアリス自身も何かの衝動に駆られたようにして構えている
海斗「凄い気迫だな」
タチ「なんだ お前にも感じ取れるのか」
海斗「なんだ 隣にいたのか」
タチ「馬鹿にしてんのか？」
タチはイラついた様子で海斗に文句をいうが次の瞬間に轟音が鳴り響く
海斗「……ここは大丈夫なのか？」
タチ「余程のことがない限りは地上に響く事はないけど……これじゃ分からないかな」
海斗「戦いを止める方が難しいからな、そん時はそん時だ」
突然の戦闘が始まり両者がぶつかるたびに地下の空間が揺れて色々と心配する海斗だが開き直って二人の戦いを見学する事にする
タチ「……くそ 速すぎて見えねぇ」
しかしタチは二人の動きが全く見えておらず空気の波動だけを感じとっていた
海斗「……危ないぞ！！」
タチ「！？」
海斗はタチの目の前に立ちはだかり吹っ飛んできたアリスを受け止める
海斗「大丈夫か！？アリス！！」
アリス「大丈夫だよ海斗お兄ちゃん」
海斗「そーか……おいあんたあんまりアリスを傷つけると姉のマールの野郎がだまってねーぞ！！」
レクス「マール？ この子の姉はティラじゃろ？それにこの子はアリスじゃなく……」
しかし次の瞬間にアリスが一瞬で距離を詰めてレクスに殴りかかる
レクス「ほほー さっきよりも良くなっておるぞ」
海斗（こいつ アリスを知ってる？）
一撃を軽く受け止め再び戦闘が始まりアリスが攻撃するたびにとてつもない音が鳴り響いている
タチ「なぁ あんたはあの戦いが見えているのか？」
海斗「みえてなけりゃお前は吹っ飛んだアリスにぶつかってたぞ」
タチ「……そうだよな 何かコツとかあるのか？」
海斗「……コツとかは無いな ひたすらに集中する事が大事なんじゃないか？ 」
タチ「……やっぱりそうか」
海斗「後は目を慣らしていけば自然と追えるようになるんじゃないのか？ その為にレクスはお前によく見ておくように言ったと思うぞ」
タチ「分かった……ありがとう」
海斗（こっちも色々と聞きたい事があるが今は集中だな）
そしてしばらくの間アリスとレクスの戦闘が続き圧に圧倒されながらも海斗とタチは戦いをみとどけると激しい戦闘は終わりアリスが両手を地面につけて息を切らしているのに対してレクスは余裕そうにしている
アリス「ハァ……ハァ……この人……強い」
レクス「パワーとスピードは相当なものじゃがやはり力の使い方と戦闘経験が足りておらんのう」
海斗（アリスもやっぱり凄いけどあの爺さんも相当だな）
タチ「……あんなに小さな子が俺よりも強いなんて」
海斗「ダイナ族で超強いんだからそれは仕方ないだろ」
タチ「最初は嘘だと思ってたけどあれを見て確信したよ……」
レクスはアリスに対して色々と指摘をするがアリスは不満そうにしている
アリス「戦い方なんて……知らないもん」
レクス「そうじゃろうな」
海斗（それに普段はおとなしいアリスがあんなになるなんてな……本能的な何かを感じとったのか？）
レクス「まぁまぁ、少し休んでおれ 次はお前さんじゃかかってこんか」
レクスは海斗に向けて言い放つ
海斗「俺もか、見た感じあんたは余裕そうだな」
レクス「経験が違うからのう ほれさっさと構えろ」
海斗「……やってやるよ」
立ち上がったアリスはタチの隣に移動して次は海斗とレクスが構えている
アリス「うぅ……疲れたー」
タチ「あんた小さいのに強いんだな」
アリス「自分でもよく分からない……けどあの人はもっと強い」
タチ「レクスはあらゆる体術を熟知してるから仕方ないよ、それよりもあの人間はどうなの？」
アリス「海斗お兄ちゃんは私より強いけどあの人に勝てるのかは分からない」
タチ「そっか……あんたより強いのか」
アリス「うん……」
そして次の瞬間に海斗がレクス目掛けて突っ込んでいきお互いの拳がぶつかる
海斗（何だ？ 変な感じがするな）
レクス「ほう、人間のくせに獣人よりもスピードとパワーを持っとるとはな」
海斗「どうも！！」
拳に違和感を感じるが気にせずに次の一撃を叩き込むと華麗に受け流されてしまう
海斗「完全に見切ってるな」
レクス「ほれほれ どんどんこんか！！」
海斗「言われなくても」
拳と拳が激しくぶつかり合ってその度に大きな音と衝撃が走って地下が揺れている
タチ「あいつ……あんなにすごかったのか 全然見えない」
アリス（私の時よりも数段早く動いてる）
海斗「あんたにならこれを試せそうだな」
離脱した海斗は魔力を操る為に集中するのだが
レクス「おいお主、今更言うのもなんじゃが魔力は使うでない」
海斗「何でだ？」
レクス「後で教えてやる それよりもお主はその程度なのか？」
海斗「余裕そうだな オラァ！！」
レクス（こやつ さっきまで加減しておったな）
さっきよりも威力が上がった事に気付いたレクスだが攻撃を当たり前のように受け流し続けて海斗の息が少しあがってくる
海斗「ハァ……あんたは防御が上手いんだな」
レクス「気付いたか、力の流れを理解できれば簡単じゃぞ もうバテたのか？」
海斗（攻撃が全て流されるのなら……そういやこれ背負ってたな）
何かを思いついた海斗は背中にあるメイスの持ち手を握る
レクス「素手相手にその武器を使うのはフェアではないのう」
海斗「何言ってんだ ただのオモリを外すだけだよ」
海斗はメイスを放り投げるとメイスはとてつもない音を立てて地面に落ちる
レクス「成る程な その背中のメイスは相当な重さのようじゃな」
海斗「今まで気にしてなかったからな」
オモリを外して身軽になった海斗は再びレクスに突っ込む
レクス「ぬっ！？」
先程よりも数倍の速さに驚いたレクスは反応が遅れてしまい腹に強力な一撃を喰らってしまう
レクス「やるようじゃな」
海斗「やっと一発入った」
レクス「フッ……図に乗るでない」
距離をとったレクスは集中して息を吸い大きく呼吸をして構える
レクス「来い！！」
海斗「言われなくても！！（何か変わったな）」
レクスの体の所々に赤い線が浮かび上がっている事に気付いた海斗だが気にせずに向かっていく
そして互角の戦いがしばらく続くのだが先に海斗の方が根をあげてしまったのである
レクス「そこまでじゃな こんなに疲れたのは久しぶりじゃぞ」
海斗「ハァ……あんた強いな」
レクス「当然じゃ何年生きとると思っとる」
海斗「年寄りには見えないけどな」
レクス「そうか」
海斗「…………そろそろ色んな事を教えてくれないか？」
レクス「良かろう、そっちに座るといい」
レクスはタチとアリスの真横を指差して座るように指示すると海斗は素直に従って座り込む
アリス「海斗お兄ちゃん凄く強いね！！」
海斗「アリスがそう言うのならそうなのかもな」
タチ「素直に受け取れよ嫌味にしか聞こえないぞ」
海斗「んな事言ってもお前の師匠はまだ余裕そうにしてるじゃねーか」
タチ「確かにそうだけど……」
レクス「お主らは聞きたい事があるのではないのか？」
この一言で我に返ったアリスが質問をする
アリス「何で貴方は私をダイナ族と見抜けたのですか？それとティラお姉ちゃんを知ってるのですか？」
海斗「それは俺も気になるな普通にしてればバレないはずなのにいきなり見抜かれて冷や汗かいたよ」
レクス「ほとんど勘じゃったがなそれにティラとは知り合いのようなものよ」
海斗「勘かよ……でも拳を交えて分かったあんたも……」
その時にアリスが割って入ってくる
アリス「おじさんもダイナ族なんでしょ？だからティラお姉ちゃんと私を知ってるんでしょ？」
レクス「まー半分正解と言ったところじゃの」
海斗「半分？どういう意味だ」
レクス「言葉の通りじゃよ ワシはダイナ族と獣人のハーフで純粋なダイナ族ではないのじゃよ」
アリス「同じ雰囲気を感じてたけど少し違和感があったからそういう事だったんだ」
レクス「そういう事じゃな」
海斗（だから普段は大人しいアリスも何かを感じとって戦ったのか）
アリス「ティラお姉ちゃんの事も教えて欲しい……」
レクス「ラノ……じゃなくてアリスじゃったな 今のワシでもティラが生きているのか死んでいるのかも分からないのじゃ」
海斗（ラノ？）
アリス「そうなんだ……レクスおじさんも分からないんだね でも生きてる可能性もあるって事でしょ？」
レクス「希望は薄いじゃろうがな」
アリス「希望があるなら……信じる」
レクス「そうか……（やはり似ておるな）」
海斗「…………それであんたは何でいきなり戦い方を教えてくれるんだ？それに魔力を使うななんて言い出すし」
レクス「なんじゃそんな事か、お主は強くなってエナを守りたくはないのか？」
海斗「そんなの……守りたいに決まってるだろ」
レクス「だからワシが強くしてやろうと言っとるのじゃ」
海斗「……分かった（エナを知ってるのか？）」
海斗「それであんたは魔力が使えないのか？」
レクス「使えん事はないがワシや獣人は生まれつき魔力の量が少ないのはお主も知っておるじゃろ？」
海斗「……そうだったなその代わりに元の身体能力が優れているって事だったよな（クシアに教えてもらったの忘れてた）」
レクス「そういう事じゃな」
海斗「それなら使わずに魔力を全身に巡らせればいいじゃないのか？」
レクス「確かにその方法もある、だがワシらにはその魔力の量すらないのじゃよ」
海斗「そんなに少ないのか……であんたは俺たちに何を教えてくれるんだ？」
レクス「それは簡単な事じゃ、お主らには獣人ならではの魔力を使わない戦い方を教えてやる」
