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シガマツ 「転移転生移動可動」   作者: 佐藤サイトウ
第一部
8/11

死ノ八

ネタバレ

9 嗚呼


「なんで起きてるの!?ていうかなんで生きてるのかなぁ!?」

ピンク髪の少女が落下中の私に向けて右腕を構えながら叫ぶ。

まずい。

あれがどういった原理なのかは不明だが、焰の頭はあれで消された。

回避ができるかはわからない。射出系の能力であれば回避の算段は立てることができるが、因果律的なイートであれば私の死は確定する。

嗚呼、声の主が誰なのかは不明だが、後で私が生きていれば必ず殺す。

そう固く誓い、目の前の忌々しいピンク髪の死についての対策を頭で考える。

やはりあの子の能力が回避可能であると願って、回避行動を行うしかないねぇ。

そう結論づけるとともに、舌打ちをする。

「可能性とかいう不確定極まりないクソビッチに今日だけで二回も頼ることになるとはねぇ。今日は色々思い知らされるねぇ〜私自身の無力さってやつを」

今日は弾を胃に数発しか入れていない。昨日の依頼を終えた後、ちゃんと補給するべきだったねぇ。

そして彼女は、朱色の銃をどこからともなく取り出し、なにもない空中に構える。

「逃げないでよ〜殺さなきゃじゃん」

シャエルが腕の狙いを私に合わせる。焰をひしゃげたときと全く同じ動作をしている。

私の読み通りであってくれ。

彼女がイートを放つ前に、黒い弾丸を空中に放つ。

銃弾は音を立てずに明後日の方向へ真っすぐ飛んでいく。そしてそれと同じように、幼女の体が、飛んでいった。明日の方向に。



ーーーーーーーーーーーーー・?



「それで?え、終わり?そんだけ?報告以上なの?」

不気味なくらい白いオフィスで、書類まみれの机に腰を掛けている男が素っ頓狂な声をあげる。

「以上で〜す」

だらりとやる気のない姿で堂々と不遜にも寝そベりやがったクソ兎ことシャエルが言う。

「いや、いやいやいやいやシャエルさん???俺、確かに言ったよね?あの島の名称不明を回収してくるまで帰ってくんな、って」

シャエルの報告に苛立ちを隠せない、不健康そうな男が続ける。

「なんでお前普通に帰ってきてんの?しかもわざわざ俺にブライダルポートまで使わせて。俺てっきり、連絡くんが「シャエルさんすぐに帰りたいみたいなので社長テレポートで呼んであげてくださいよ」って言ってきたから、あぁ、仕事終えたんだなーおつかれー報酬に茶菓子でもやろう、ってわざわざ菓子用意してやったのに!てめぇ俺の親切心返せよ!!」

「お菓子くれるんですか!?」

「やるかボケ!!ネズミでも食ってろ!」

目をキラキラさせて馬鹿なことを抜かす部下に罵声を飛ばす。

「はぁぁぁぁ、、、、、ただでさえイリアスとやりやったばっかでうちは疲弊してんのによぉ、、なんでうちの部下共はどいつもこいつも戦闘以外能がないんだよ!!」

シャエルが頭に手を当て

「テヘッ☆」

とクソみたいな決めポーズを取りやがった。

ブチッ、と堪忍袋の緒が切れる音がする。いやもうそんなもんはとっくに切り刻まれているが。

「てめぇシャエル!!今回ばかりは許さねぇからなこの野郎!!そこに直れ!!社長直々に制裁を加えてやる!!」

そう、この目の下に深いくまができ、清潔感が微塵も感じられないヨレヨレのシャツを身につけ、威厳のかけらもなく部下に切れ散らかしている男、これこそがイリアスに並ぶ財力と武力を保有している、現オオカミ社の社長である、黒川綾である。

「社長、追加の書類です。主にそこのクソバカ兎が道中ぶち壊しやがりやがった同盟組織、山からの被害請求書です」

ブチギレ、机の上に乗り出した黒川は、おそらく秘書であろう女性が運んできた書類の山を見て、動きを止める。そしてそのまま、安らかな顔をし

「すまん、サーフィス、後は頼んだ。俺はこのまま朽ち果てるとするよ」

春の小川のような爽やかな顔をして、親指を立て、机に倒れ込む。

「だめです、一緒に死にましょうか。社長♡」

机に倒れこんだ社長の頭を力強くつかむ。

「いだだだだだだだだだ痛い、痛いって!!!た、助けてシャエル!!!さっきのこと不問水に流してやるから、、、っていねぇし!!」

そしてしばらく、一棟のビル全体に響き渡る声で、助けを求める黒川の声がこだました。

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