第8話 叛乱
<<あらすじ>>
ルイーズと2人での旅をすることになった俺達。
ルイーズが北の神と云うとんでもない事実が分かり
そしてそれが女神騒動となり、大変なことに…
その噂は、領主にも届くことになり、
ある意味、俺たちは目を付けられた
この作品は
・独自のファンタジーの世界観があります。
・また下記の原案のリメイクとなります。
1991/07/19~杖無き賢者 番外編 『伝説』
1996/09/23~旧シャイニングコンタクト
1999/08/06~再編版シャイニングコンタクトHP掲載版
2005/09/06~再々編成版シャイニングコンタクト
を経て、今回の完全リメイクになりました。
ここは鉱山の街リザ…
既にライテシアの先遣隊の騎兵の姿があり、夜明け前に街に入った兵で朝には非常線を張っていた。非常線は街の出入り口と鉱山の出入り口に張られ、検問場所には簡易なテントが設営され、松明を焚きその明かりを元に出入りする人物を厳重にチェックを行っていた。チェックは2人の兵士が順次交代で行っていたが、武器と装備をしたままでの重々しい雰囲気の中で行われていた。
夜が明けた街では、早朝からの戒厳令下に入ったこの騒ぎに、何事かと不安を隠しきれない人々が外の様子を建物の中から見守っていた。
ガルディは街の封鎖の状況の確認に走り回っていた。そして、街の入り口で検問を行っている兵に声を掛けた。
「街は完全に封鎖した、そっちはどうだ」
「はっ、旅の男と女剣士は今のところ発見できません」
騎兵の数は当初ガルディが指定した24騎ではなく12騎しか居なかった。昨日、側近が飲んだくれていると云っていたデアック隊、やはり早朝の出兵には間に合わなかったようだ。予定より少人数での街の封鎖にはやや難があるらしく、ガルディは配置に難儀している様子である。
それにしても、ダリルの水晶には確かにリザの街並みが映っていて、早々にあの2人が街を出たという事は甚だ想定しにくい。だが、もう既に街を出てガーラの街に向かったと云う可能性も無きにしも非ずであった。
「デアック隊とダリルが到着したら、大人しく待っていろと伝えろ!」
「俺は街外れの街道を見てくる…」
「はっ!…」
ガルディはそう云って単騎で颯爽と馬を駆った。そのガルディの姿が見えなくなる頃を見計らった様に後発隊が到着した。後発隊はデアック隊の5騎の騎兵と合わせて12騎の騎兵とダリルの乗った1騎だが、士気が上がらなくダラダラとした行軍だった。
「ホォ~、なんだ、ガルディ様はお留守か…フッファッファッ」
人の頭よりも大きな酒甕を腰にぶら下げた大男は、デアック隊の隊長ギルアだ。昼間から酔いどれ、盟主の不在を嘲笑っていた。
「あ、あの、ギルア様、ガルディ様が大人しく待っていろとの事です」
「お願いですから、指示に従って下さい」
「え~い、うるさぁーい…俺に指図するなってんだ…」
街の入り口で検問をする兵が云った言動が気に入らなかったギルアは、急に暴れ出すと腰の酒甕を振りかざし検問の兵を一撃した。兵士は反動で飛ばされていた。それを見た他のデアック隊メンバーが慌てて止めに入った。
「お、お止めくださいギルア様」
「また、謹慎くらいますぞ!」
このギルアと云う男、図体がデカいため三人掛かりでようやく取り押さえることが出来た。取り押さえた兵からはホッとため息が漏れていた。
デアック隊は以前から命令違反で何度か謹慎処分を受けているから、次に処分を受けると軍からも追放される可能性があり、メンバーはそれに敏感になっていたのだ。そんなデアック隊をガルディが何故に使うのかと云うと、やはり、戦力的な成果を齎す過去の実績だった。
そして、相変わらずな我が物三昧の振る舞いをするダリル。設営されたテント内に無断で入り込むと早速休んでいた。事の一部始終を素知らぬ顔で、聞き耳を立てて聞いていた。
この検問所でのゴタゴタは、検問を通過するチェックに影響を与え、いつの間にか検問待ちの商人達が長陀の列を成していた。
「おらぁ、お前ら検問を再開しろ! こんなに詰まってんじゃねぇか!」
ギルアのその言葉で兵士たちは慌てて検問を再開した。そしてデアック隊の部下が小さな椅子をギルアの前に持ってきた。『こんな小さな椅子に座れるか!』と一喝されそうなミニチュアに見えるその椅子。実は彼の定番なのか、一言も文句を云わず機嫌良く座ったのは意外で驚きだ。収まりきらない尻を少し突き出しては、顎を腕で支え物騒な顔をするその様は子供用に芝居でも見せているような光景だ。
しばらくは検問の様子や長蛇の列を眺めていたギルア。だが、1組の若いカップルが目に入ると表情を少し変えた。そのカップルはベールの様な物を被り、必要以上に顔を隠そうとする仕草が彼の気を更に引き付ける事となった。
それをいち早く察知したのがダリルだ。他人を填めたり陥れて不幸にするためのアンテナは人一倍に発達している。早速ギルアの横にそっと立つと、何やら囁き出した。
「ヒッヒッヒッヒ、隊長殿、あの者達… 何か怪しゅうございますな…ヒヒヒヒ」
ダリルはギルアが疑心暗鬼に陥るようにと、わざと怪しげな様子を告げ口していたのである。ギルアがハッとした表情になり2人に近寄っていく姿を見て、ダリルはまた、気味の悪いあの薄ら笑いを浮かべた。
「おい、そこの2人… ちょっと… 待て…」
「お前たち、何処まで行く?…」
力強く歩み寄って来たギルアが睨みを利かせて、2人のベールを剥ぎ取る。呼び止められた2人は完全に怯えてしまっていて、震えておりパニックになる寸前で何も答える事が出来なかった。
「むぁっ!! 何故黙っているんだ、答えろ!!」
返答しない2人に苛立つギルアは遂に激怒する。怯え切っている者を責めても、増々パニックを起こすのみで埒が明かないのは明白だ。だが、気の短い男が苛立ちを募らせると、やがて一線を超えてしまうのも常。ギルアは脅しのつもりで剣を抜き出すと2、3度程刃をちらつかせた。だが、酔いも合わさってか、そのまま剣を振りかざし女へと勢いよく振り下ろした。鮮血を飛ばしながら女の腹部は完全に破断されその場に崩れ落ちた。
「ミーシャ!!」
「なんてことだ!!」
男がギルアに飛び掛かると、列をなしていた商人達が一斉に雪崩れ込んで来たのである。検問兵とギルアは瞬く間に群衆に飲み込まれていった。それを見た後発部隊の騎兵もその乱闘に交わると、一人の弓兵が松明の火で火矢を作り市民に向かって射ち出した。
街道を見回りに行ったガルディが、ゆっくりとした馬脚で意気消沈した様子で戻って来た。既に街道に出たとの勘は当てが外れたのか、2人は見つけられなかったという事だろう。
ところが、街の入り口に差し掛かったガルディは、あり得ない光景を目にするのだった。街の様子は一変していて、ここはリザの街なのかと驚く程である。街では騎兵隊と街の人々が乱闘しており、市民達が大勢倒れていた。ガルディは馬を降りると両手を握り締め、悔しさの余りに地を何度も叩きつけた。
燃え盛る街の光景を暫く呆然と見つめるガルディ… やがて彼は己の不幸な運命と向き合う事を決意をする。
…ならば…
「この国、ワシが統治する…」
ガルディは、棒キレを拾うと大きな布をそれに結び付けた。それはライテシアの紋章でも軍旗でも国旗でもない。剣に蛇が絡んだ領主の家紋であった。それを高々を掲げると、それに気づいた兵士から大きな声が次々と上がった。
「ウォォォォォォォー!!」
ガルディが叛旗を掲げた瞬間だった。その様子をダリルは満面の笑みを浮かべ頷いていた。まんまと、してやったと云う事なのか…
後書き
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