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第26話 冥府の王再び

<<あらすじ>>


ここは冥府、俺はここで罪人たちの審議をしている冥府の王。

このには罪人の亡者達が巣くう世界。


そこへ、新たにやって来た罪人の亡者。


それは、願いの水晶を使い地上からは姿を消したフレイアだった。

やはり、伝説の如く冥府へと堕ちたのか?


そして、冥府の王の審議が始まる…


 ここは真っ暗な光のない闇の世界で、五感のうち聴覚、触覚以外は封印された世界だ。だが、ここから出ることを許されない者達は、痛み、苦しみのみ味わう触覚と、聴覚のみ与えられている。


 そんな世界に好き好んでやって来る者はいない。だが生前に大罪を犯した者は転生を許されず、永久にこの世界を彷徨い続ける。


 俺はこんな世界で毎日罪人たちの審議をしている。軽微な罪の者は、家畜、昆虫に転生を許すが、それに値しない者にとって、ここは流転なき世界、それが冥府だ。


 冥府に来た者は人間、神族、魔族になぞ転生できない。家畜、昆虫とは云え、転生できるだけでもましな方だ。


 ここでの監視は全員俺の部下で魔族だ。だが、その部下達をそそのかす輩がいるようだ。それは、天界から堕天し魔界を作り上げた闇の帝王(ルシファ-)だ。最近、地上界が騒がしいが、闇の帝王(ルシファ-)が復活を目論んでいるらしいと、もっぱらの噂だ。


 そして、俺の前には時折だが火が灯った蝋燭が現れる。いや、ここでは、魂は生前の姿を型取った蝋燭なのだ。蝋燭の火は体を焼き苦痛を与える。燃え尽きる間際が一番苦痛を味わうが、その後完全に再生されるとまた1から苦痛が始まり、終わる事はないのである。


 その大勢の亡者達の喚き、苦しみ、助けを乞う声がこの世界の雑音となって木霊している。


 また、1本の火が灯った蝋燭が現れた。まったく来る日も来る日も同じ事の繰り返しだ。俺はお決まりの文言を気合を入れて喰らわすのだが…

 

 「ここは、流転無き冥府なり!!」


 蝋燭(・・)の側からすれば、突然、恐ろしい男の声が響き渡るのだ、驚くのは無理もない。その、声だけの恐怖で萎縮してしまい、大抵は、助けを懇願する事になってしまう程なのだ。


 今回現れたこの蝋燭(・・)は、かなり小柄なやつだな。これは女の様だな… だが、例え相手が女であろうが、容赦しないのがここのルールだ。


 「これより、汝の審議を始める…」

 「まずは、名前を申せ」


 「誰? そこに誰か居るのですか?」

 

 「ガハハハハッ 誰か居るだと?」

 「他人の家に勝手に上がり込んで、そんな事を云う奴が居ると思うかね?」


 「…そ、そうですね…」

 「わ、わたくしはフレイア・ギワールと申します」

 「…ここは、冥府なのですか?」


 何も感じられない世界で、突然掛けられた声によりフレイアは自分の意識と向かい合うことが出来ていた。もし、それがなければ、自分の魂の存在すら感じることは出来なかっただろう。


 「そうだ、これより生前の審議を行い、汝の転生先を決める」

 「ここには重罪を犯した者がやって来るのだ」

 「そして、お前の罪とは?」


 「罪?…」

 「罪だと云うのであれば罪でしょう」


 フレイアはそう云うと、自分は伝説の通り召されたとの理解を示した。自分が悩み果てた末に使ったのだ、後悔はしていないと大胸を張って云える。そう思っていた。


 「わたくし、多くの人々を救いたいがためにの願いの水晶(クリスタル)を使いました」


 冥府の王の目が真っ赤に光ると、長い沈黙に入った。考え込んでいる様に見えたが、当然フレイアには見えない、声しか聞こえないのだ。


 「お前に一つ話しておくことがある…」 冥府の王は云いずらそうな感じでそう云った。


 「自己の欲望のためでは無いとは云え、願いの水晶(クリスタル)に3つ願えば」

 「冥府落ちが決定される」

 「願いの受諾状況は関係ない…」

 「ここまでで、意義・不服・借問はあるか?」


 願いが叶う叶わない関係なく冥府堕ちが確定と聞いて、フレイアには怒りすら湧いて来た。あれだけの葛藤の末に使う決心をしたのに、願いをどうするかは水晶が決めるとは…。もし、水晶を使っても、多くの民を救う事が出来なかったら、民を救えなかった罪が重く伸し掛かると云うものだ。


 そして、フレイアは多くの民の安全、王家の存続、クムの復活の3つの願いがどうなったのか知らずして罰を受けるのはさすがに嫌だと感じていた。


 「…結局、わたくしの願いは、どうなったのですか?」

 

 「受諾は2つだ」


 その言葉にフレイアはクム意外の願いは聞き入れられたと理解した。メデサが生命の復活は聞き入れられないと云っていたが、やはりそれは聞き入れられなかった様だ。クムの復活が叶わなかったのは非常に残念なのだが、多くの民が救われた事でひとまずは安心した。そして、己はここで転生を許されず、永遠に苦しむ罰を受けるだろうと覚悟も出来ていた。


 「…なんだ?…」

 「お前は、己のための願いを1つもしなかったのか?…」

 「…どう云う事だ…」


 溜息交じりでそう云うと、冥府の王は頭を抱えていた。ここへは罪人がやって来て、生前の審議を行うのであれば、ハッキリとした悪人の方が処罰しやすいと云う事だ。中途半端な者は厄介なのかも知れない。


 「過去に、願いの水晶によって、ここに来た人間を4人知っているが、その者達は皆、傲慢で、貪欲だった」

 「願いは皆、己の名誉と富と不死を願いよった」

 「結局水晶の判断にて願いを叶えず、その様な人間を作り上げた地上界自体を滅ぼしたのだ」


 フレイアは、その言葉を聞いて、ふと、思うのであった。聖書によると、この世は4度滅びていると言われている。そして、その者は魔の力を使ったとされているのだが、水晶が引き起こしていたとは驚きだった。


 その様なことを考えていると、冥府の王は呆れて聞いて来た。


 「待て…」


 そう云うと冥府の王はまるで、激しい頭痛を堪えるかの様に頭を抱え出した。そして苦しそうに蹲ってしまった。


 「…お、お前…」

 「…一体何者だ…」

 「お前の記憶に出てくる女は誰だ…」


 「?」


 フレイアは、何の事を云われているのか全く理解できず、困惑していた。


 「そして、願いの水晶は昇華すると千年姿を現さない…」

 「何故、腕輪となってお前の左腕についているのだ?」

 「…水晶に何をした?…」

 「また、出てきた、何故、お前の記憶にあの女(コイツ)がいるのだ?」


 フレイアの視覚はこの世界では封じられている、感じるのは聴覚と触覚の内の痛覚のみだ。なので、自身では腕に腕輪がついている事は知る事は出来ない。そして、冥府の王はフレイアの記憶を辿った結果、その記憶の中に出てきた人物の事を追求しているのだが、フレイアには何の事だか知ることはは出来ない。


 冥府の王はこの世界では亡者達の心や記憶を読むことが出来る。だが、その時系列まで正しく読み取ることは出来ない。フレイアの記憶の中で見つけたある者の記憶に固執していた。何度も何度もある女性の記憶が出て来る…冥府の王はその女性を知っている筈だった。


 「こ、こいつは…」

 「ル、ル、イー、ズ? ルイーズ・アルマティア…」

 「そうだ、あの女(コイツ)はルイーズ・アルマティアだ…」

 「貴様の中に何故ルイーズの記憶があるのだ…」


 冥府の王が口にしたのは意外な者の名前だった。蝋燭となったフレイアに顔を近づけると、目を細めて睨みつけた。


 「あ、あの、今日会ったばかりで…」


 「何を云っているのだ、古い記憶にも頻繁に出てくるではないか…」


 噂では以前から名を聞いていたものの、フレイアも会ったばかりでその時間も一時(いっとき)あまりだ。実際に大した話も出来ていない状態なので、不思議そうに回答していた。古い記憶と云われてもフレイアには全く思い当たる節はない。


 すると冥府の王は突然苦しみ出したのだ。


 「う”おおおぉぉ…」

 「そ、そうだ…」

 「そうだ… ルイーズだ… ルイーズは何処にいる?…」

 「あれから何日経った!?… 俺はここで何をしているんだ?」

 「俺にはまだやり残した事が…」


 「アルマティアさんは、ザールの闘技場近くに…」


 冥府に戻り、闇の中に潜むことで、消されていた地上界(ガート)の記憶…。それがフレイアの記憶に刺激されて一気に蘇ったのだろう。冥府の王はガートの記憶を完全に取り戻すと、深呼吸を仕出した。


 「おおぅ…」

 「まだ審議中であったな…」

 「フレイア・ギワール、お前は地上界に転生…いや、戻れ… 水晶が元の世界に戻ると云っている…」

 「そして、… ゾーン、ソダ、俺は地上界に用が出来た。 悪いがまた留守を頼む」

 「では、これにて結審する…」

 「フレイア・ギワール、俺について来れるか?…」


 冥府の王がそう云った途端、フレイアの周りが変化した。目の前の景色が、黒から白へとホワイトアウトして行くそして、全身の感覚が一気に戻る。それが一時の激痛になって襲った。

後書き


新章が始まりました。


第3章突入で盛り上がってまいります、よろしくお願いいたします。


皆さま、読んで下さいましてありがとうございます。感謝感謝しかないです。


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