第25話 ギルマの神話
<<あらすじ>>
その昔、神々と人間は共に暮らしていたという、
やがて、争い事を好む人間に愛想が尽きた神々は、天上界を作り移り住んだと云う。
だが、女神アストライアはそんな人間を最後まで信じたのだが、遂に、女神は自己を封印してしまう。
その時、ある者達と約束事を交わし、自己を封印させたのだ。これがギルマの神話である。
ザールの闘技場では、勝利したヘルメスの歓喜は聞こえない。
ライテシア王妃が隣国に逃げ込んだからである。
その状況にガルディは…
その昔、神と人間は共に暮らしていたと云う。その生活の中で起こる、あらゆる悲しみも喜びも分け合っていたと云うのだ。
しかし、神々にも色々な神がおり、人間達を誘惑する神もいた。何かと欲望、闘争心を煽る神がいた。
人間とは愚かなもので、この誘惑に負けると次第に己達の心に欲望と闘争心が生まれ、争い事を行う様になったのだ。
神々は共に暮らすのであるならと、何度となく忠告を行うのであったが… 人間達の争い事は収まる事を知らなかった。
やがて神々は、その忠告にも耳を貸さない人間達を徐々に嫌う様になった。そして、ついには愛想をつかし見放してしまう。神々は地上界とは全く別の天上界と云う世界を作り上げると、そこへと移り住むようになったのである。
だが、そう云う状況下でも人間達へ手を差し出す神も居た。人を愛し、何事も正義を貫く愛と正義の女神アストライアである。
女神はこの地上界にたった一人残ったと云う。アストライアの親友である虹の女神イーリスが友を心配し、アストライアの為だけに天上界と地上界を行き来する虹の橋を掛けた。しかし、アストライアは自らこれを落としてしまうのである。
そこまで、人間達を愛した女神を、人間達はいつしか自分たちの守護神と感じる様になり、各地に女神の伝説が広まりだしたのである。
天上界ではそんな彼女を小馬鹿にすると、嘲り笑い愚弄する者達で溢れていたのであった。
ほぼ同時期、人間達を唆した神が天上界から追放され堕天すると魔界を作った。これが闇の帝王だった。
これを機に神々の闇な面を持った者達は次々と堕天すると、行き場を失い地上界を彷徨う者や、魔界に入る者達もいた。
こうして、光(天上界)と闇(魔界)が生まれた、そして、その間で澱む者達が巣窟する場が冥府となった。
さてさて、アストライアの親友イーリスは、アストライアを非常に気にかけていたのだが、何も出来ぬ自分がもどかしかった。
女神アストライアが完全に地上界に孤立してしまうのを恐れると、イーリスは魔族である4部族の長達に、女神アストライアの補佐を願い出る…
こうして、四神が人間界の四方を司る事で女神アストライアを長年補佐して来たのだ。
だが、残念ながら結局は女神アストライアの願いは届かなかった。人間どもの争いは絶えず、それどころか争いは増々激化して行くのみであった。女神は悲しみの余りに、ついに自己を封印し心を閉ざしてしまうのである。この時、女神は四神達と約束事を交わし、そして自身を封印させたと云われている。
以上が、古くから伝わるギルマと言う神話である。この神話が完結する時、それは、女神アストライアが心を開く時とある。しかし、逆に言うとそれは、人間が争いを止める時とも取れるのである。この神話、迷信とするも、貴族までもがそれを聖なる伝説として、かたくなに信じ、伝えられた程である
これがギルマの神話と呼ばれるものだ。ライテシア国王のジードが云っていた神話とはこの事である。
更に…
女神アストライアを封印させた闇の一族の長達は、リザの街ではその後、四神または地神の聖者として語り継がれているのである。
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嵐が去った跡の様に静まり返ったザールの闘技場。街の炎は消え去り、ライテシアの残存兵の姿も何処にも見られない。間違いなくヘルメス軍が圧勝した形となった。しかし、闘技場にいるヘルメス軍には歓喜は伺われない。
「なんだと! もう一度申してみよ!」
静まり返った闘技場に、恐ろしい声がこだました。ガルディである。側にはダリルが地に膝を着き、戦果の報告をしている所であった。
「は、はい」
「ライテシア城は、見事陥ちましてございまする」
「そのような事ではない! ダリルよ、ワシが云うは、その後に申した事ぞ」
「はぁ…それが…」
良い知らせではないらしく、ダリルの言葉は、なかなか先へ進もうとはしなかった。ガルディの顔色を伺いながら、ダリルは慎重に言葉を選んでいるのが見て取れた。
「王女達は、アルキアへ逃げ込みまして… あの…」
「まったく! 約立たず共め!…王女達とは、2人共と言う事か…」
「何故、こうも、うまく事が運ばんのだ…」
「願いの水晶が何者かによって使われたと云うのに…」
自分の思い通りに事が運ばず、ガルディの興奮は高まるばかりである。しかし、ガルディ自身もそれを抑制し、冷静さを持とうとしている様子が伺える。何か1つ気がかりな事があるようで、ガルディは腕を組むと、深く考え込む仕草をする。
だが、ガルディは、そのまま沈黙してしまい、身動き一つしなくなっていた。ダリルが心配しそっと近づく。しかし、反応がない。そして、顔に手を当てようとした時、突然、ガルディが振り返った。驚いたのは、ダリルであったろう。
「…ダリルよっ!」
「はっ? な、なんでございましょう?」
「水晶は昇華した… しかしだ、ワシはまだ支配者だ」
「…と、言う事は、水晶を使った奴は、何を願ったと思う?」
「さぁ、分かりませぬな… ただ、その者は覇者には有らず…と言う事では?」
「覇者に有らず… とな…」
「ならば… それも良しとすべきか…」
やはり、ガルディは戦略家だ。二手三手先を行く作戦を考えるのは当たり前らしい。だからこそ、作戦通り事が運ばぬ時を考慮し、入念に補正作戦でカバーしていると云う周到さがある。
そんなガルディは名案が浮かぶ時と云うのは、結構機嫌が良いのだが、難しい顔をしている時と云うのは、その逆だ。今のガルディは後者であった。
「ダ、リ、ル…」
「は? はぁ? な、なんでございましょう…」
ダリルの顔が引き攣っていた。嫌な時に声を掛けられたもんだと、今度はどんな難題を突きつけられるのかと消沈していた。
「例の件、手筈通り事は運んでいるのであろうな?」
「は、はい、それでしたら、大丈夫でございます」
「まだ、誰にも気付かれては居りませぬ」
「そうか…ダリルよ、奥の手とは、最後まで取って置くものだぞ、フフフハハハ」
ホッとして表情のダリルに、ガルディは豪快な笑い声で笑っていた。その声が闘技場に響きわたっていた。そして、ダリルの不気味な笑みがさらに続く… そして、ガルディの言う、奥の手・例の者とのつながりがあるのは誰なのか…
後書き
新章が始まりました。
第3章突入で盛り上がってまいります、よろしくお願いいたします。
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