第23話 魔闘師
<<あらすじ>>
ヘルメスはなかなか落とせぬライテシア王国にイライラを募らせ、
ついに、願いの水晶に目をつける。
大神官の娘であるフレイアが水晶を持つと分かるや、その水晶を奪うべく大神官の処刑を企て、
そしてその闘技場で大混乱の中、フレイアから水晶を奪おうとするが、失敗する。
そして、フレイアを闘技場から救った女の正体は、あのルイーズ・アルマティアであったのだ。
だが、クムはフレイアにシェルの魔法と引き換えに命を落とす。
メデサとの再会、ルイーズとの出会いもむなしく、フレイアは絶望してしまった。
その頃、2人の姫を隣国へ逃がすための決意をしたジード王、
白の表と裏から姫を逃がす手配をした。
ライテシア城の表からは13騎の騎馬が疾走した。
17人衆の13騎はその後クリミネルの1騎のみとなる。
ちょうどその頃、城の裏手から出た、ネア率いるアナリスの一陣アルキア国境に差し掛かると、闇の魔物達に襲われる。
そこにルーが駆け付けた。
この作品は
・独自のファンタジーの世界観があります。
・また下記の原案のリメイクとなります。
1991/07/19~杖無き賢者 番外編 『伝説』
1996/09/23~旧シャイニングコンタクト
1999/08/06~再編版シャイニングコンタクトHP掲載版
2005/09/06~再々編成版シャイニングコンタクト
を経て、今回の完全リメイクになりました。
第二、第三の砦の様子が大騒ぎとなった頃、ネア率いる第一皇女アナリスの一陣も動き出していた。少人数だが、物々しい武装をする5名の剣士と、固定紐で胸に抱かれた1人の赤ん坊の姿が不釣り合いであった。
「我々は、城の裏手の岸壁を降りる」
「…騎馬と盾は使用出来ぬ故、心して欲しい…」
そう云うと、4人の近衛兵が敬礼をしそして裏手へと急いだ。最後尾のネアも赤ん坊を固定紐で胸に抱いていた。
ライテシア城の裏手は断崖絶壁となっており、落差は800mはある。とてもではないが人の上り下りは無理だ。故に、攻めるとすれば正面からしか不可能と思われる。
そこをロープと杭を使って降りようと云うのだ。普段は馬に乗る騎士にとって、正しく難行苦行に匹敵する事であろう。
城からは2本の命綱を降ろし、2手に分かれてそのロープを降りていた。先頭を切って降りる者は、途中杭を打ち込んで足場を作る作業を行いながら降りていた。まるで岩山を登山している様な物だった。
そして最後をネアがアナリスを固定紐で胸に抱いたまま、降りていた。4人が中腹に差し掛かった頃には、ネアはまだ1/4程を降りたところにいた。アナリスを抱いているため、他の者達よりもバランスを崩しやすいのか、少々モタツキ感がある。
時折、突風が吹き荒れ命綱と共に大きく揺れに見舞われるが、じっと堪えて揺れが収まるのを待ち、収まるとまた降り出すと動き出すというのを繰り返していた。
5人が断崖を降り切った時、城の表側、第二第三の砦の騒ぎが若干収まりかけている様だった。
騎士である彼らは、城を抜ける際に、馬を城へ残してきている。当然、その足取りはぎこちなかった。そして盾も無い彼らは、手持無沙汰もあってか、剣を手にし身構えると辺りを異様に警戒している様子である。
とは言え、無事に敵の制圧圏から逃れられ、そろそろ、隣国の領地へと入る頃となっていた。異国の地に入れば、その国の掟に従わねばならない。そして、くれぐれも、相手に失礼があってはならない。
「これより、アルキア領だ」
「剣を納めよう」
若騎士ながらも、国王から全てを任されたネアが言った。剣を抜くと言う事は、どの国に於いても、敵対意識があると判断される。まだ、追っ手が来ないとは限らない。ネアは、アルキア領に入るにあたり、敢えて剣を納めたのだった。
「ここで、一人合流予定の筈だが…まだ到着していない様だな…」
皆が剣を納めたのを確認したネアは、そう云って周りを見渡すが、それらしい人物の姿は見えない。
しかし、待ち合わせ場所に現れたのは、待ち人ではなかった。目の前を何者かが突然横切った、奇襲だ。ネア達はその者達に完全に取り囲まれており、もう逃げ場はなかったのだ。その者達は、犬の様に四つん這いで移動している。だが時折、2本足で立ち上がるのを見ると、人間の様な姿でもある。そして、涎を流し獲物を睨むような目つきをしている。
「なっ、なんだっ!? これは?」
「闇の輩だ」
「ガルディの闇の噂、やはり真であったか」
ネアがそう呟いていた。その視線は、闇の者どもを睨み、四方から来る殺気に身構えていた。だが、その膠着状態は長くは続かず、次々と、闇の者どもは、兵士へと飛びかかって行った。しかし、その動きの瞬発性は、想像を遥かに超えていた。
次の瞬間、そこは惨劇の場と化した。あまりにも、数が多く、そして、鋭い動きを見せる闇の者に、近衛兵の精鋭達ですら、全く敵わなかったのだ。ネアと、もう1人の兵士を残し、他の者達は闇の者の餌食となってしまったのだ。
闇の者どもは、捕らえた兵士を引きずりまわし、そして、奪い合いながら肉を引きちぎると、ようやく落ち着きを取り戻し、自分の分け前をむさぼっていた。だが、まだ、獲物にありつけない者達が、さらに狙いを定めていた。
「なんと言う事を…こんな所でむざむざと…」
ネアは、絶対絶命のピンチに立たされていた。彼の脳裏に、絶望が横切る。だが、その時…
「延伸氷爪!」
「ウィズ連荘っ!!」
声の主と思われる方角から蒼い光がいくつか放たれた。その光は真っすぐに闇の者共へと到達しその光に包まれたまま倒れた。やがて倒れた闇の者共の身体から蒼い光が消えると、その身体には氷の杭が無数に打ち込められていた。残る闇の者共にも、次々と放たれる蒼い光。そして、を全て倒すのにそう時間は要しなかった。
良く見ると1人の旅姿風の青年が血相を変えて立っていた。その者は肩で息をし、額は汗だくとなり、過酷な闘いの中をくぐり抜けて来たかの様であった。その両手は蒼く光り、魔法陣が書かれた護符を複数枚しっかりと握りしめているのが見えた。
「ふう、間に合った…」
「姫様はご無事で…なにより…」
「ま、魔闘師殿か?…」
ネアがそう尋ねると、青年は右ひざを地に着け一礼をした。その姿は、旅人にしては軽装であった。上下共にクリ-ム色の薄手の服装で、エンジのスカ-フをしている。首に飾る十字架のネックレスが一見、キザな野郎に思わせるだろう。
「拙僧、ルー・レキサス と申します」
「…この辺りは火鼠がかなり湧いており、大掃除のために遅れまして申し訳ありません」
「昨日10年ぶりに修道場から戻ったばかりと聞いたが…」
「は、左様で…」
「しがない有陣有唱発動使いですが」
「某でよければジューダ城までお供いたします」
「それは心強い…」
ルイーズがメデサにルーのことを問うた時、メデサは城を見に行ったと答えたのだが、その理由はこの護衛のためだったのだ。
ルーは2人を先導し道案内に入るが、その道中にて、先ほどの火鼠の駆除された亡骸が足の踏み場もない程にゴロゴロと横たわっていた。ルーの大掃除とは良く云ったもので、その数の多さに驚かされるネア達であった。
その亡骸にはルーが呪文で打ち込んだと思われる氷の杭で串刺しにされたが物や、水分が抜かれミイラの様に干からびた物まであった。その惨状からみると、このルーと云う魔闘師は水系の法術の使い手と思われる。
「これは、もの凄い数だな…」
「これはまだ序の口で、南東は既に魔族の巣窟と化しております」
「ですので、北回りからアルキアへ入ります…」
「承知した…」
ネアが火鼠の亡骸が続く道のりを見渡せる限りを目で追った。永遠に続くその道のりは、ルーが賢明に駆除した痕跡がありありと伝わって来た。
後書き
今週から、投稿回数を週2回(日曜日、水曜日)から週1回(日曜日)に戻りました。
要するに、ストックが尽きました(;^ω^)
また、頑張って書き溜めします。
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