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第12話 願いの水晶

<<あらすじ>>

 襲撃された街の廃墟を歩く一人の若き僧侶

 女神の噂話につられて来た街は既に焼き払われていた。


 絶望の淵に立たされた彼女に少年が声を掛け

 案内された世捨て人の老人の元へ

 

 そこで明かすこの国の危機

 そして若き僧侶はある物を託されていた。




この作品は

・独自のファンタジーの世界観があります。

・また下記の原案のリメイクとなります。


1991/07/19~杖無き賢者 番外編 『伝説』

1996/09/23~旧シャイニングコンタクト

1999/08/06~再編版シャイニングコンタクトHP掲載版

2005/09/06~再々編成版シャイニングコンタクト


を経て、今回の完全リメイクになりました。

      この世に、願いの水晶(クリスタル)あり。

      千年に一度、その姿と成してこの世に現れ、

      三つの願いを叶えると云う。

      その力…水晶に願いし者のみぞ知る。


      三つの願い叶えし時、水晶は再び姿を消し、

      千年の長き沈黙を守る。

      だが、願いし者の無き場合、

      永遠にその日を待つと云う。


 誰が言い出したのか不明だが、いつしかそんな迷信が人々に浸透していた。水晶は人を神道へと導く尊いものとして教会で祭られている。


 城下の街ザールにある水晶は特に願いの水晶(クリスタル)と云われている。当然それを狙う不心得者達が必ずと云っていい程現れるのも事実でである。故に、この国の大神官が代々保管管理しているのであった。


 フレイアの持つ水晶の首飾りこそ、まさにそれであった。


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+


 …わたくしはフレイア・ギワール、僧侶(クレリック)です。


 大神官である父メギディスがヘルメス軍に囚われてしまい、なんとか状況の打開を求めて女神の噂に飛びつきました。そしてやっとの事でデムールの街まで噂を辿って来たのですが…。しかし、的は外れたと云いましょうか、ただの噂との話もあります。


 父の状況は国王夫妻にはまだお伝えしておりません。父ごときの事で国王夫妻にご心労お掛けしたくないためです。とは云え、父はたった一人のわたくしの親族なので心配でなりません。ここまでの経緯をシーウッド様にお話しした次第です。


 「良いか、フレイア殿…」

 「その水晶は肌身離さず所持し、誰にも渡してはならぬぞ、何かを願ってもならぬ…」

 「良いな!」


 シーウッド様は急に怖い顔になると、そう威嚇してきました。これは父のメギディスからも云われておりましたが、そんな大事な物を何故、わたくしなどに託すのかと不満も募ります。わたくしは、自暴自棄になりそうな自分をひたすら落ち着かせようとしていました。


 「だが、このまま手をこまねいている訳にもいかん…」


 下を向いたまま考え込んでしまったシーウッド様。暫く時が経ちやがて顔を上げると、わたくしをを見つめました。


 「水晶の導きがあれば良いのじゃが…」

 「水晶には人を光の世界に導く力がある筈じゃ…」

 「その力で導いて貰ってはどうかのう… さすれば女神も現れようぞ…」


 シーウッド様がわたくしにおっしゃる事は、到底理解出来ぬ事でした。何処かに行けと?おっしゃるのかしら?… そう考えているとわたくしの疑問に気づかれたようです。


 「おお、無論一人で行けとは云わん・・・ほれ、あの子と行くがいい。」

 「必ず助けとなる」


 シーウッド様が洞窟の入り口を指すと、そこに、洞窟までを案内をしてくれたクムが頭だけを出して中を覗き込んでいました。日暮れの沈みかけた太陽の光が洞窟へと差し込む中、クムは照れくさそうにしていました。


 間もなく日が暮れると云うのに、なんだか急場凌ぎの様な段取りでわたくしは戸惑うばかり。ですが、藁にも縋る思いからか、云われるままにその日の内に出立してしまいました。まるで親子のようなわたくしたち2人組み。その後ろ姿を何時までもシーウッド様は見つめてられました。きっと不安だったのでしょう。


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+


 雲1つもない爽快な日中、落ちそうな青空の中、小鳥達が飛び交い囀っている....そのすがすがしさに反し、物々しい騎兵が街を行軍していた。その姿を見るや、人々は逃げ隠れをする始末。それは、地元の人間ですら例外ではなかった。


 群衆の馬脚は決して一定ではなく、非常に重々しい。それは、まるで戦いに負けた兵士の如くであった。


 その群衆が、拠点となる場所へと辿り着いていた。そこは、城程もあろうかと言う、大きな館であった。石の門と、石の塀で囲まれていて、櫓まである。城となんら変わりはない要塞であった。


 兵士達が中へ入ると、外界を遮断するかの如く重い鉄の門が閉ざされた。中では、馬を降りた兵が酒を求めて酒樽へと群がる。軍勢を指揮していた男が荒々しく馬から降り、その流れに逆らい、部屋へと向かった。


 館の中は、まだ昼間だと言うのに薄暗い。部屋、回廊には明かりが点々と点る。その火が影を揺るがせており、不気味であった。男はその中を甲冑を脱ぎながら、力強く歩いていた。


 「ええい! むしゃくしゃするわ!!」


 剣を抜きそれを振りかざす。部屋へたどり着くまでの間、回廊の脇にある物を薙払っては暴れている。部屋へ入っても、気のイラつきを見せ、落ち着かない。椅子に腰掛け、テ-ブルにあるグラス取ろうとするが、その時、誰もいない部屋に気付き、さらに機嫌を悪くした。


 「誰か! 誰かおらぬか!!」


 「ははっ、ガルディ様」


 ここは、ヘルメス軍軍主、ガルディの館である。(あるじ)の尋常ではないその声に、家臣が慌てて姿を現す。そして素早く地に膝を着いた。見た所、側近とまではいかぬが、かなり地位のある風に見える。


 「大神官は、水晶(クリスタル)の在処を吐いたか!」

 「娘は、まだ見つからんのか!」


 家臣が一礼をするかしないかで、ガルディの檄が飛んだ。一端口にしたグラスを、テ-ブルに強く叩き付ける様にして置く。中の酒がテ-ブルへと散った。その檄に家臣は戸惑う。


 「いえっ、それが…ガルディ様」


 「ええいっ!! 何をやっておる!」

 「水晶が国王の手に渡るが先か、我が軍が勝利するが先かのこの時に!」


 「し、しかし、連夜の(イクサ)により、兵の士気は増々薄れておりまして…」


 家臣が思わず両膝を浮かせ、懸命に弁明する。そんな家臣の言葉に、ガルディは獲物を見る様な目で睨み付けていた。今も国王軍とやり合い、撤退してきたばかりだ。国王軍が手強く、思い通りに行かぬ事に加え、部下の頼りない言葉。ガルディは、米噛みに血管を浮かせ、怒りは頂点に達しようとしていた。


 ヘルメス軍が行動するのは、決まって、夜または明け方であった。街、村でも、人々が目覚める前を狙い奇襲を掛けていた。今までは、それで成功していた。だが、連日続く国王軍との戦いは勝手が違いそうは行かなかった。


 家臣の言う通りに兵士の活力は失せる一方であり、辛うじて統率が取れていると言った感じである。だが、これに気付かぬガルディではない。だからこそ、焦っているのだ。再びグラスを口に運ぶと、その眉を釣り上げた。


 「必ず明日までに吐かせよ! 良いな!!」


 「はっ!」


 怒声は抑えていた。だが、逆にその低い声に更なる脅威を感じる。家臣は慌てて何処かへ走り去って行った。ガルディはその姿を冷ややかに見送るが、部屋の中に人の気配を感じると、急に真顔になった。


 「…ダリル…居るのか…」


 「ヒッヒッヒッヒ、随分と、お怒りの御様子で…」


 僅かな気配をも読み取るガルディの前に、不気味な笑いと共に隠れていたダリルが姿を現した。それを確認したガルディは、少し笑みを見せるとダリルへと手招きをする。


 「…お前の顔を見ると、何故か名案が浮かぶ…」

 「…どれ、耳を貸せ!…」


 何故か、ガルディは上機嫌になっていた。ダリルは薄気味悪い笑みを浮かべながら、それに頷いていた。


 「…どうだ…」


 「…それは名案です…面白ろうございます」


 ダリルの反応の良さに、更に機嫌を良くしたガルディは、テーブルのグラスに酒を注いだ。そして、グラスを見つめながら、狂気の笑みを浮かべていた。

<<後書き>>


新章が始まりました。


実質第2章からが本編みたいなものですが、よろしくお願いいたします。


皆さま、読んで下さいましてありがとうございます。感謝感謝しかないです。


「続編が気になる方」「なんかいいじゃん」と感じた方、貴方のその応援がスーパーなエネルギー源となります。


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