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○○を好きになってしまった話  作者: けいちゃ
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セフレを好きになった話

後悔はしてからじゃ遅いんです。

後悔。この世は後悔であふれている。覆水盆に返らず。後悔先に立たず。

そんなことわざがある通り、一度してしまった後悔は時でも戻せない限り絶対に取り返すことができない。

もちろん時を戻すことができる人間など存在しない。要するに、一度した後悔は絶対に取り返すことはできないのだ。

そして俺、篠原つかさはおそらく人生で最大の後悔をしてしまった。


---


大事な話したいから家に来てほしい


LINEの通知音と共に、スマホにメッセージが映し出される。

送り主は....みゆ。俺のセフレだ。

俺は急いで支度をして、家を出る。彼女の家は二駅先。メッセージから20分ほどでついた。


「うわきた」


嫌そうな顔をして迎えたのがみゆだ。こいつから呼んだくせに。


「当たり前だろ。それでなんだよ大事な用って」


その言葉を聞いたみゆは少し悲しそうな顔をした後、俺の顔に手を伸ばしてくる。


「な、なんだよ」


「ごめん。ちょっと」


そのあとみゆは服を脱ぎ、いつも通り行為に及ぶ。

そう、俺らはこれだけの関係。休日に互いに体を求めるだけの関係。


しばらくするとお互い息を荒げ、二人で一つの小さなベッドに横たわる。

そうして少しの間、見つめ合う。


「私、彼氏できた」


「へ?」


あんまりにも唐突な報告に素っ頓狂な声を出してしまった。


「彼氏。できたの」


頭の中が真っ白になった。


「え。は?」


信じられなかった。何かの冗談かと思った。しかしそれが真実なのもみゆの表情を見ればすぐわかった。


「だから。これで最後」


俺はようやく理解する。この関係が終わることを。


彼女は続ける。昨日告白されたこと。そして明日、返事を出すこと。

俺はとても胸が苦しくなる。今までにないくらい。とても。そして同時に後悔する。気持ちを伝えておけばよかった。ただそれだけだった。彼女に彼氏ができるなんて想像もしてなかった。がさつで、うるさくて、馬鹿で。こんなのは俺くらいしか相手にできないと思っていた。

セフレにした理由もそうだ。彼女にはできない。でもみゆが土下座をしてまで頼んできた。最初は仕方なくセフレにしたのだ。でも今は違う。最近はかわいくなった。顔だけじゃない。性格もだ。

そしてだんだん好きになった。

俺は一線を置くつもりで、一緒に遊びに行くとき、絶対手をつないだり、キスはしなかった。

でも時がたつにつれて手をつなぎたいと思った。キスもしたいと思った。


だけど今更好きなんて言えなかった。恥ずかしいという気持ちもあったし、まだ大丈夫だ。そんな自信もあった。

でもそれは間違っていた。みゆはかわいい。今ならすぐできるのだ。

そんな気持ちとは裏腹に少しだけ安心した自分もいた。みゆは男っ気が全くなく、彼氏をずっとほしいと言っていた。そのみゆに彼氏ができたのだ。


そうして俺が長い間しゃべらないでいるとみゆは口を開く。


「私に彼氏ができて悔しいのか~?」


頭が痛い。俺は今にも泣きだしそうだった。なんで今そんなことを言うのだろう。俺の反応を見て楽しんでいるのだろうか。でもみゆの顔を見る自信がない。俺は顔を隠すように毛布を被る。


「彼氏ができたのってつかさのおかげでもあるんだよね」


そうだ。彼氏なんかできるはずなかった。でも俺と一緒にいるうちにみゆは変わっていった。

遊びに行くたびに口癖が「彼氏ほしい」だった。仕方なく俺は男にモテる方法を教えていった。でもそんなので本当に彼氏ができるとは思っていなかった。今更、自分がやっていたことに後悔を覚える。


「初めての相手がさ。セフレだなんて、笑っちゃうよね。でも告白してきた相手にはまだ誰とも付き合ったことないって言ってるの。ちょっと罪悪感だよね。もう処女じゃないのに。私なんかでいいのかなーって。てか私のこと扱えるの、つかさぐらいだよね」


俺の背中にただひたすら、これからの彼氏の話を続ける。


「明日なんて言えばいいかな。ぜひお願いします!とかでいいのかな。楽しみだなぁ。デートでもさ、パフェとか半分こしたりさ。色々できるよね!」


もう帰りたかった。何も考えたくもなかった。


「でもちょっと束縛系な気がしなくもないんだよね!優しいのは間違いないけど。あ、でもつかさのほうが優しいと思う!あ、でもこれは失礼かな?」


明日彼氏になるという男の話はいつまで続くのだろうか。とても楽しそうに男の話をするみゆに対して、だんだんうんざりしてきた。イライラもしてきた。俺は無視を続ける。何かしゃべると泣いてしまいそうだから。


「でもね」


声色が変わる。


「その男の人といるときね。全部つかさと比べちゃうんだ。あ、つかさならこうしてくれた。もしつかさならこうだったな。とかね」


今にも泣きだしそうな声だ。理由がわからない。なぜそんなに泣きそうなのか。


「あのね。私さ......ちょっと前まで、つかさのこと好きだったんだよ」


我慢できない。今からでも気持ちを伝えたい。好きって言いたい。胸が熱くなった。そうだ。今なら言える。みゆに気持ちを伝えるんだ。

でも、今気持ちを伝えたらどいうなるのだろうか。みゆは男をあきらめてまた俺と一緒にいてくれるのだろうか。それとも都合よく好きって言ってるだけだと思うのだろうか......


俺は一度冷静になる。するとすぐ答えが出てきた......

都合がよすぎる。もう遅いのだ。

俺は遅すぎたのだ。こんなにも一緒にいたのに。最低な奴だ。自分が嫌になる。嫌悪感に押しつぶされそうだった。


「ごめん。シャワー浴びてくる」


みゆは言い終わると裸のままシャワールームに向かう。


もうあの体をもう抱くこともできないし、見ることすら叶わない。そう考えるとまた胸が痛くなる。


みゆは、少し俺に依存してるとことがあった。

悩んだときはすべて俺に聞いて、全部俺の言う通りにしていた。自己主張がとても弱いのだ。

でも俺はなるべくみゆのことを考えて、一番喜びそうな答えを返すようにしていた.......

もうそれは必要ないのだ。みゆは明日からちゃんとした彼氏ができる。俺がしてやれなかったことをその男ならしてやれる。


俺は、服を着て立ち上がり、みゆのスマホを付ける。パスワードは俺の誕生日。そしてLINEを起動して俺の連絡先、そして......「つかさ」と書いてあるアルバムを開き、すべて削除。


そこら辺にあったメモ帳に


「幸せになれよ」


そう書いて、シャワーの音を後に、家を出た。



ここまで読んでいただきありがとうございました。モチベーションアップにつながるので、良ければ評価、感想のほどよろしくお願いいたします。

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