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日本国憲法第零条 少年法  作者: ひじりさわ ゆうゆ
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犯行

 12月15日 午前2時15分 街がイルミネーションの光でいっぱいの頃、静岡県伊豆市の住宅街の片隅で光る部屋が1つ、1月にセンター試験を控える水原大吾はひたすらに勉学に励んでいた。いつものようにイヤホンをして外から聞こえる酔っぱらいの甲高い声を掻き消すように大音量で音楽を再生していた。異変に気づいたのは事がもう終わろうとしていたとき、大吾の首を切り裂いた果物用ナイフは真っ赤に染まった。大吾の悲鳴を聞き駆けつけた新介と久美子の息が止まるまで時間はかからなかった。抵抗できないように心臓を狙われた新介は頸動脈に達するほどの深さまで突き刺さっていた。久美子は別の家庭用包丁で首を切られていた。3人とも即死だった。

 明らかに手慣れた犯行。全てが完璧だった。3人の声を聞き隣の部屋の住人が110番通報をして事件が発覚した。

 そして、容疑者として挙げられたのは少年A 。当時17歳だった。検察は少年Aの無罪を確信していた。しかし、少年Aにはアリバイがない、なんといっても少年A以外に犯行が可能な人が1人もいない。少年Aの逮捕は誰がどうみても冤罪。遺族のいない家族を殺した犯人に誰かが仕立て上げたのだ。

 検察には少年Aを容疑者に仕立て上げなければいけない理由があった。それはずさんな犯行。これほどまでずさんな犯行なのにも関わらず迷宮入りで終わらせる訳にはいかなかった。

 検察の中でただ1人。私は少年Aの無罪を追った。まだ若かった私は冤罪など起こしたくなかったのだ。検察官の威信にかけて。少年Aに初めて会った日の昼。私は18の時のことを思い出していた。


 私はいじめられっ子だった。背が低く、まるメガネ、少し、いや、あいつらよりは確実に頭がよかった。それが虐めの原因だ。今となっては懐かしい話だが当時の私には耐えられなかった。その時の思い出。その時の記憶が鮮明に蘇ってきたのはきっと、少年Aがあの時の自分に見えて仕方なかったからだと思う。やってもいない給食費泥棒を演じた自分に。でも今回とはスケールが違う少年Aのほうがよっぽど辛い。事件ファイルを眺めている私は驚く。少年Aが水原一家の住むアパートに忍び込む姿が鮮明に写し出された防犯カメラを見たからだった。

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